ミネラルは、ダイエット中に意識しなければいけない栄養素です。ダイエット中は、食事制限によって特にミネラルが不足しがちになるためです。
ただ、ミネラルは普段馴染みがない栄養素であるため、ほとんどの人がその役割や不足したときの症状、豊富に含んでいる食品などについて知りません。そのため、多くの人は気付かないうちにミネラル不足となってしまっているのです。
そして、ミネラル不足に陥った結果、ダイエットが上手くいかなくなっている人も少なくありません。
そうした事態を防ぐためにも、特にダイエットをしている人は、ミネラルについて正しい知識を有していることが大切です。ミネラルについて学ぶことで、ダイエットが成功しやすくなるだけでなく、ダイエット中に起こりやすい不調を予防することにもつながります。
そこで今回は、「ダイエット中に意識すべきミネラル」について解説します。
ダイエット中に摂るべきミネラルのまとめ
ミネラル | 役割 | 豊富に含まれている食品 |
---|---|---|
カルシウム | 代謝の維持 | 牛乳、乳製品、干しえび、小魚、ほっけ、モロヘイヤ、小松菜、にぼし、ゴマ、えんどう豆 |
マグネシウム | 代謝の促進 | アーモンド、くるみ、ゴマ、未精製食品(玄米など)、大豆、ほうれん草、ワカメ、ひじき、するめ、いくら、貝類、干しエビ |
カリウム | ・浮腫みの抑制 ・代謝の維持 |
ほうれん草、枝豆、モロヘイヤ、サトイモ、サツマイモ、アボカド、バナナ、野菜類、果物類、海藻類 |
亜鉛 | 血糖調整 | カキ、レバー、ホタテ、ホタルイカ、納豆、イイダコ、高野豆腐、卵黄、たらこ、プロセスチーズ、にぼし、純ココア |
鉄 | 代謝の促進(脂肪燃焼) | ・ヘム鉄 レバー、馬肉、卵黄、いわし、干しえび、しじみ ・非ヘム鉄 豆類(きな粉、油揚げ、生湯葉、納豆など)、パセリ、小松菜、ほうれん草、種実類(炒りゴマ、カシューナッツ)、抹茶、藻類(青海苔、いわのり、焼き海苔) |
セレン(セレニウム) | 代謝の促進 | カレイ、マグロ、サバ、カツオ、ぶり、いわし、うなぎ、カキ、肉類、レバー、卵黄 |
クロム |
・血糖調整 ・代謝の促進 |
アサリ、カキ、サザエ、しじみ、えび、サバ、牛肉、レバー、ほうれん草、昆布、アーモンド、銀杏、ブロッコリー、キャベツ、チーズ、玄米 |
カルシウムとダイエットの関係性
カルシウムは、約99パーセントが骨や歯といった組織に存在しているミネラルです。そのため、一般的に骨の健康を保つために欠かせないことで知られているカルシウムですが、実際には体のさまざまな機能に関わっています。
そして、カルシウムはダイエットを成功させるためにも欠かせない栄養素なのです。
カルシウムは代謝を維持するために欠かせない
カルシウムは、全体の1パーセント程度しか血液中に存在していません。しかし、体内では非常に重要な役割を担っているのです。
例えば、カルシウムが骨量の維持に関与していることは有名です。また、脳内における「神経伝達物質」やホルモンの分泌に関わっているため、カルシウム不足になるとイライラなどの症状が出現することもよく知られています。
さらに、カルシウムには「酵素」を活性化する働きもあるのです。
酵素とは、糖質(炭水化物)や脂質などからエネルギーを作り出す反応(代謝)に欠かせない物質になります。体内でエネルギーが産生されるときには、酵素がサポートすることで、エネルギーを産生する反応がスムーズに起こるのです。
そのため、カルシウム不足によって酵素が上手く働かなくなると、代謝が落ちてしまいます。
また、カルシウムは筋肉や神経の働きにも深く関わっているため、カルシウム不足では運動しても、なかなか筋肉量が増えなくなるのです。そして、筋肉量が少なくなると代謝も低下するため、結果的に代謝が悪くなってしまいます。
このように、カルシウム不足は代謝の低下を招くことで体を痩せにくくするのです。
その他にも、カルシウムには以下のような働きがあります。
・血液凝固促進(血液を固める)
・動脈硬化抑制
・高血圧改善
カルシウム不足によって起こる症状
ここまで述べたように、体内におけるカルシウムの働きは多岐にわたります。そのため、カルシウム不足となると、さまざまな不調が出現することになるのです。
例えば、カルシウム不足によって神経伝達物質の放出が上手くいかなくなると「イライラ」などの精神症状が出現します。また、筋肉や神経に悪影響を及ぼした場合には、脱力感や筋力低下といった筋肉の問題が認められることになるのです。
その他にも、カルシウム不足になると倦怠感やだるさといった症状が現れる可能性もあります。
このように、カルシウム不足ではさまざまな不調が出現することになります。特に、「なんか体がだるい」「なんか力が入りにくい」「最近イライラしやすい」という症状が認められる場合には、カルシウム不足を疑うようにしましょう。
ダイエットに欠かせないカルシウムを豊富に含む食品
カルシウム不足によって不調が生じた場合には、カルシウムを補うことが大切です。例えば、牛乳や乳製品には、カルシウムが豊富に含まれています。
また、その他にも以下のような食品にはカルシウムが多く入っています。
・干しえび
・小魚
・モロヘイヤ
・小松菜
ただ、カルシウム不足を解消するためには、カルシウムを豊富に含む食品を摂取するだけでは十分ではありません。それは、カルシウムの摂取が障害されているケースが多いためです。つまり、カルシウムが豊富な食品を食べても、体内に吸収されないということです。
例えば、カルシウムの吸収には、「マグネシウム」「ビタミンD3」が重要になります。また同じように、タンパク質や乳糖もカルシウムの吸収を促進します。つまり、これらの栄養素が不足している場合には、カルシウムが体内へ上手く吸収されないのです。
さらに、コーヒー(カフェイン)やアルコール、過剰な脂肪の摂取などは、カルシウム吸収を阻害することが明らかになっているのです。
当然、このように体内へカルシウムを吸収できないことが問題である人の場合、カルシウムの摂取量を増やしても無駄になります。こうした場合には、まずは体内にカルシウムが吸収されるように、不足している栄養素を補うことと、カルシウムの吸収を阻害している要因を取り除くことが重要です。
以下に、カルシウムの吸収を阻害する因子についてまとめます。
不足するとカルシウム吸収が低下する栄養素 | カルシウム吸収を妨げる要因 | カルシウムの排泄を促す要因 |
---|---|---|
・マグネシウム ・ビタミンD3 ・タンパク質 ・乳糖 |
・フィチン酸(玄米などに含まれている物質) ・シュウ酸(ほうれん草などに含まれている栄養素) ・リン酸の過剰摂取(ソフトドリンクなどに含まれている物質) ・食物繊維繊 ・カフェイン ・アルコール ・ストレス ・過剰なタンパク質、脂質 |
・運動不足 ・コーヒー摂取 |
こうした要因がある場合には、まずはこれらを取り除くことが重要です。
そして、以下にカルシウムと一緒に摂取すべき栄養素が豊富に含まれている食品についてまとめます。
マグネシウム | アーモンド、ごま、未精製食品(玄米など)、大豆、ほうれん草、ワカメ |
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ビタミンD3 | 卵黄、黒カジキ、紅サケ、キクラゲ、干しシイタケ、バター、牛乳 |
タンパク質 | 肉類、魚介類、乳製品、卵、納豆、きなこ |
乳糖 | 牛乳 |
このように、カルシウム不足が疑われる際には、以上に挙げたいくつかの要因を考慮した上で、カルシウムを摂取することが大切です。
マグネシウムとダイエットの関係性
マグネシウムは、カルシウムと協調して働くミネラルです。マグネシウムは、体内においてカルシウムとバランスを保つことで正常に機能が発揮されます。
そして、マグネシウムは玄米や全粒粉などの未精製食品に多く含まれているため、白米や小麦粉などの精製食品、加工食品を摂取する人は不足しがちです。また、アルコールの大量摂取もマグネシウムの排泄を促すため、日常的にアルコールを飲む人もマグネシウム不足には注意する必要があります。
こうしたマグネシウムですが、ダイエットにも深く関わっているのです。
マグネシウムはダイエットに欠かせない多くの代謝に関わる
マグネシウムは、糖質と脂質、タンパク質をエネルギーに変換する反応(代謝)をサポートする役割をもっています。マグネシウムは、カルシウムと同じように代謝をスムーズに行うために必要な酵素の働きをサポートすることで、代謝を促進しているのです。
つまり、マグネシウムが不足すると、代謝が悪くなって痩せにくくなります。
例えば、「脂肪」や「乳酸」を元にしてエネルギーを作り出すシステムとして「TCAサイクル(クエン酸回路)」が存在します。TCAサイクルは、細胞内にある「ミトコンドリア」という器官の働きによって、エネルギーを産生するシステムです。
マグネシウムは、TCAサイクルによるエネルギー産生を円滑にする働きがあります。そのため、マグネシウム不足はTCAサイクルにおける「脂肪 → エネルギー」という反応を悪くするため、脂肪が燃焼しにくくなるのです。
このように、マグネシウムは脂肪を燃焼するための代謝をサポートする働きに関与することで、ダイエットに関わっています。
マグネシウム不足によって起こる症状
体内におけるマグネシウムが不足すると、さまざま不調が出現します。マグネシウムは、カルシウムやカリウムなどと共同して働いているため、マグネシウムに不足になると、これらの栄養素の過不足によって生じる症状も現れるためです。
ただ、その中でもマグネシウム不足によって起こる不調を知っておくことは大切になります。
例えば、マグネシウム不足になると、最初は食欲不振や吐き気、下痢、イライラなどの精神症状が出現します。またその他にも、マグネシウムが不足すると、以下のような症状が出現します。
・こむら返り
・目がぴくぴくする
・不整脈
・キレやすい
・不眠
・高血圧
以上のような症状が認められる場合には、マグネシウムが不足している可能性を疑うようにしましょう。
ちなみに、マグネシウムはアルコール摂取や利尿剤、コーヒー、紅茶、牛乳などの過剰摂取、ストレスで不足しやすくなるため、こうした習慣がある人は注意が必要です。
ダイエットに欠かせないマグネシウムを豊富に含む食品
ダイエット中にマグネシウム不足を疑ったときには、マグネシウムを豊富に含む食品を摂取することが大切です。例えば、アーモンドやゴマなどは、マグネシウムが豊富な食品です。その他にも、マグネシウムが多く入っている食品には、以下のようなものが挙げられます。
・未精製食品(玄米など)
・大豆
・ほうれん草
・ワカメ
ただ既に述べたように、マグネシウムは他のミネラルと共同して働いています。そのため、マグネシウムを摂取する際には、その他のミネラルも考慮しなければいけないのです。
例えば、マグネシウムはカルシウムとバランスを取っていますが、体内でカルシウムが増えすぎると、マグネシウムの吸収は阻害されます。これが、牛乳の過剰摂取がマグネシウム不足を招く原因です。
また逆に、マグネシウムもカルシウムの吸収に関与しています。そして、カルシウムの吸収には、マグネシウムだけでなく「ビタミンD」も深く関わっているのです。そのため、マグネシウムを摂取する際には、カルシウムとビタミンDとのバランスを意識して摂ることが重要になります。
ちなみに、ビタミンDを豊富に含む食品としては、以下のような食品が挙げられます。
ビタミンDを豊富に含む食品 | 卵黄、黒カジキ、紅サケ、キクラゲ、干しシイタケ、バター、牛乳 |
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マグネシウム不足を疑った際には、マグネシウムを豊富に含む食品と一緒に、ビタミンDが多く入っている食品も意識して摂取することが大切です。
カリウムとダイエットの関係性
カリウムは、ナトリウムと協力して細胞の活動や血圧などを調整する機能をもつ栄養素です。野菜や果物に豊富に含まれていることで有名なカリウムですが、さまざまな面でダイエットと関係しています。
カリウムはダイエット中の浮腫みや代謝に深く関わる
例えば、カリウムはナトリウムとバランスを取ることで、細胞内に水分が溜まらないように調整しています。具体的には、ナトリウムが過剰に存在してカリウムが不足していると、細胞内に細胞内に水分が蓄積されます。つまり、カリウム不足は体の浮腫みを作るのです。
カリウムと浮腫みの関係性に関しては「女性に多い「下半身太り」を招く16の原因について徹底解説」に詳しく書いています。
実際に、カリウムの摂取不足は下半身太りを作る原因の一つです。
また、カリウムは細胞内で酵素の働きをサポートすることで、代謝を調整しています。そのため、カリウムが不足すると、代謝が悪くなってしまい痩せにくくなるのです。
このように、カリウムは浮腫みや代謝に関わるため、ダイエット中に不足しないように注意しなければいけません。
カリウム不足によって起こる症状
ここまで述べたように、カリウムは細胞の水分バランスやエネルギー産生(代謝)に深く関わっています。そのため、カリウムが不足すると、浮腫みやエネルギー不足などの症状が起こるのです。
例えば、下半身の浮腫みは、カリウム不足で生じる代表的な問題だといえます。そして、カリウム不足で代謝が低下すると、疲労感や筋力低下などの不調も起こります。
さらに、カリウムとナトリウムは、細胞内外の水分バランスを調整することで血圧もコントロールしています。具体的には、カリウムが不足すると血圧が高くなりやすいのです。
このように、カリウムの不足は、疲れやすさや力の入りにくさなど、エネルギー不足によって起こる不調を招きます。
また、カリウムは汗や尿によって体外へ排泄されるため、発汗が激しい夏や、運動の後などに不足しがちです。そのため、発汗後に倦怠感や筋力低下を感じた場合には、カリウム不足を疑うようにしましょう。
その他にも、カリウム不足になると、以下のような症状が出現する可能性があります。
・喉の渇き
・便秘
・不整脈
ダイエットに欠かせないカリウムを豊富に含む食品
カリウム不足が疑われるときには、カリウムを豊富に含む食品を摂取するようにしましょう。例えば、ほうれん草や枝豆、モロヘイヤなどはカリウムが多く入っている食品になります。
その他にも、以下の食品にはカリウムが豊富に含まれています。
・サトイモ
・サツマイモ
・アボカド
・バナナ
・野菜類
・果物類
・海藻類
カリウム不足の症状が出現した際には、以上に記した食品を摂取するように心がけることが大切です。
ただ、カリウムは熱に弱く水に溶けやすい性質があります。そのため、カリウムを効率的に摂取するためには、生で食べたり、茹でた後の汁も一緒に飲んだりすることがポイントです。
亜鉛とダイエットの関係性
亜鉛は、皮膚や骨、筋肉、肝臓など、体のさまざまな部位に存在するミネラルです。そして、亜鉛は体内に吸収されにくい上に、体にため込むことができないため、日ごろから意識して摂取しなければいけない栄養素になります。
そして、亜鉛は代謝の多くに関わるため欠乏すると痩せにくくなるのです。特に、代謝の中でも血糖調整に深く関わっています。
亜鉛はダイエットに大切な血糖調整に欠かせない
亜鉛は、血糖値を下げる働きをもつ「インスリン」の合成や分泌、「インスリン抵抗性」に関与しています。具体的には、亜鉛が不足するとインスリンが作られにくくなるため、血糖値が高くなるのです。また、亜鉛不足はインスリン抵抗を招くことでも血糖値を高めます。
インスリン抵抗性とは「インスリンの効きにくさ」を表す言葉です。
インスリン抵抗性が高くなると、インスリンによる血糖低下作用が働かず血糖値が高くなります。そうなると、体はどうにかして血糖値を下げようとして、さらにインスリンを分泌します。その結果、体内でインスリンがあふれることになるのです(高インスリン状態)。
一般的に知られているように、インスリンには肥満を促す作用があります。そのため、亜鉛不足でインスリン抵抗性が高くなると、太りやすくなるのです。
またその他にも、亜鉛は200種類以上の酵素の構成成分として働きます。そして、脂質やタンパク質、アルコールの代謝など、酵素が関係する多くの代謝に関わっています。
このように、亜鉛は体重コントロールに深く関わる血糖調整やエネルギーを産生する代謝に欠かせない栄養素です。こうしたことからも、ダイエット中は亜鉛不足に注意しなければいけません。
亜鉛不足によって起こる症状
ここまで述べたように、亜鉛は体のさまざまな代謝に関わります。そのため、亜鉛が不足すると多彩な不調が出現するのです。
例えば、亜鉛不足でタンパク質代謝が悪くなったときには、爪のひび割れや髪のぱさつきなどが現れます。さらに、亜鉛は味覚や嗅覚を正常に保つために欠かせない役割を担っているため、亜鉛が不足すると、味覚・嗅覚障害が生じるのです。
その他にも、亜鉛不足になると、以下のような症状が出現する可能性があります。
・性欲減退
・早期成熟
・月経不順
・血圧上昇
・創傷治癒遷延(傷の治りが遅くなる)
・精神症状(イライラ、うつなど)
・口内炎
・難聴
以上のような症状が認められた場合には、亜鉛不足を疑うことが大切です。
ダイエットに欠かせない亜鉛を豊富に含む食品
亜鉛不足が疑われた場合には、亜鉛を豊富に含む食品を摂取することが重要になります。基本的に亜鉛は不足しがちな栄養素であるため、亜鉛を多く含む食品は普段からできる限り意識して食べることが大切です。
例えば、カキやレバー、ホタテなどには亜鉛が豊富に含まれています。その他にも、以下のような食品には亜鉛が多く入っています。
・レバー(牛・豚)
・ホタルイカ
・納豆
・イイダコ
・高野豆腐
以上に挙げた食品は、亜鉛不足の症状が認められていない状態であっても、意識して摂取するようにしましょう。
鉄とダイエットの関係性
鉄は、不足することで貧血を招く栄養素として知られています。特に、女性には鉄不足による貧血に悩まされている人が多いです。
そして鉄は、代謝に深くかかわっているため、ダイエットには欠かせない栄養素だといえます。
鉄は脂肪燃焼に必要な酸素供給に欠かせない
体は、主に糖質と脂質の2つの栄養素を元にエネルギーを作り出します(代謝)。このうち、糖質からのエネルギー産生には酸素が必要ありませんが、脂質からエネルギーを作り出すときには酸素が不可欠です。つまり、代謝が行われる細胞に酸素が不足してしまうと、脂肪が燃焼されにくくなります。
酸素は、呼吸によって体内に取り込まれた後は、血液中の赤血球内にある「ヘモグロビン」によって全身の細胞に運ばれます。そしてヘモグロビンが酸素を運ぶときに、鉄が欠かせないのです。
そのため、鉄不足になると、ヘモグロビンによって酸素が十分に全身の細胞に届られなくなります。これが、貧血と呼ばれる状態です。
貧血になると、細胞に酸素が送られないようになるため、酸素不足で脂肪が燃焼されにくくなります。つまり、鉄分が体内で不足していると、痩せにくくなるのです。特にダイエット中は食事制限などによって鉄分が不足しやすくなっています。
このように、鉄は脂肪代謝に欠かせない酸素の運搬に深く関わっており、なおかつダイエット中には不足しがちな栄養素です。そのため、ダイエット中には鉄不足に注意しなければいけません。
鉄不足によって起こる症状
鉄不足になると「鉄欠乏性貧血」を発症する可能性があります。鉄欠乏性貧血の症状は、主に酸素不足によって引き起こされるのです。
例えば、鉄不足によって脳に十分量の酸素が送られないと、集中力の低下や情緒不安定、うつなどの症状が生じます。また、筋肉が酸素不足になると、筋力低下や脱力感などの不調が引き起こされるのです。
その他にも、鉄不足で貧血となった場合には、以下のような症状が生じる可能性があります。
・頭痛
・吐き気
・めまい
・倦怠感
・冷え症
・代謝低下
以上のような症状が認められる場合には、鉄欠乏を疑うようにしましょう。特に、女性で生理によって出血があるような年齢の人は注意が必要です。
ダイエットに欠かせない鉄を豊富に含む食品
鉄不足が疑われた場合には、鉄分を多く含む食品を摂取することが大切です。ただ、鉄分には動物性食品に多く含まれている「ヘム鉄」と、植物性食品にたくさん入っている「非ヘム鉄」の2つが存在します。
そして、体内への吸収効率が高いのは「ヘム鉄」です。そのため、鉄不足のときには、非ヘム鉄よりもヘム鉄を積極的に摂取することが重要になります。鉄に関しては、「ダイエット中の貧血を予防する効果的な対策」に詳しく述べています。
例えば、レバーや馬肉、卵黄などにはヘム鉄が豊富に含まれています。その一方で、パセリや小松菜、ほうれん草といった野菜類に入っているのは非ヘム鉄です。
以下に、ヘム鉄と非ヘム鉄を多く含む食品についてまとめます。
ヘム鉄 | レバー、馬肉、卵黄、いわし、干しえび、しじみ |
---|---|
非ヘム鉄 | 豆類(きな粉、油揚げ、生湯葉、納豆など)、パセリ、小松菜、ほうれん草、種実類(炒りゴマ、カシューナッツ)、抹茶、藻類(青海苔、いわのり、焼き海苔) |
鉄分不足が疑われるときには、以上に挙げた食品を積極的に摂取するようにしましょう。
また、鉄分は玄米や麦芽に多く入っている「フィチン酸」、乳製品に豊富に含まれている「カルシウム」などによって吸収が妨げられます。そのため、鉄分を摂取する際には、こうした食品を避けることも大切です。
以下に、鉄分の吸収を妨げる成分についてまとめます。
・フィチン酸(玄米や麦芽)
・カルシウム
・リン酸塩(乳化剤、安定剤、防腐剤、加工食品、ハム、ソーセージ、インスタント食品、スナック菓子、清涼飲料水)
その他のミネラルとダイエットの関係性
その他にも、通常の生活をしていれば不足しないであろうミネラルの中にも、ダイエットに関係している栄養素がいくつか存在します。
例えば、「セレン(セレニウム)」は、代謝を高める「甲状腺ホルモン」の合成に欠かせない栄養素です。そのため、セレンが不足すると、代謝が低下することになります。
また「クロム」は、糖質と脂質の代謝に関わっている栄養素です。具体的には、インスリンの働きに関与しており、血糖調整の役割を担っています。
このように、通常であれば不足しない栄養素であるセレンやクロムも、場合によっては不足することもあります。そうした場合には、これらの栄養素を意識して摂取することも大切です。以下に、セレンとクロムが不足したときの症状と、これらの栄養素を豊富に含む食品について記します。
ミネラル | 不足したときの症状 | 豊富に含む食品 |
---|---|---|
セレン |
・動脈硬化 ・心疾患 ・免疫低下(風邪を引きやすくなる) |
カレイ、マグロ、サバ、カツオ、カキ、レバー |
クロム |
・血糖値上昇 ・動脈硬化 ・コレステロール値上昇 |
アサリ、カキ、サバ、レバー、ほうれん草 |
ミネラルの吸収を高めてダイエット効果を高める方法
ここまで述べたように、ミネラル不足はダイエットに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、ミネラル不足が疑われた場合には、ミネラルを補給することが大切です。
ただ、ミネラルは「体内に吸収されにくい」という特徴があります。そうしたことから、ミネラルを体内へ効率的に取り込むためには、いくつか工夫しなければいけないことがあるのです。
特に「よく噛む」「腸内環境を整える」ということは、ミネラルの吸収を高めるために重要になります。
ミネラルの吸収を高めるためには「よく噛む」
よく噛むことは、胃内における胃酸の分泌を促します。胃酸は、ミネラルを腸内で吸収できる形に変換する役割をもっているのです。こうした胃酸によるミネラルの変化は「イオン化」と呼ばれます。
腸でミネラルを吸収するためには、イオン化が欠かせません。そのため、よく噛んで胃酸を多く分泌させることで、ミネラルが体内に取り込まれやすくなるのです。
このように、よく噛むことはミネラルの吸収を高めるために重要です。、
ミネラルの吸収を高めるためには「腸内環境を整える」
さらに、腸内環境を整えることも、ミネラルを効率的に取り込むためには欠かせない要素だといえます。腸内環境が悪いと、ミネラルだけでなく全ての栄養素が吸収されにくくなるのです。
腸内環境や腸内環境の整え方については「腸内環境を整えると痩せ体質になる理由」に詳しく書いています。
このように、腸内環境を整えることも、ミネラルの吸収を高めるためには重要です。
今回述べたように、ミネラルはダイエットを成功させるために欠かせない栄養素だといえます。ミネラルは、タンパク質や脂質、炭水化物、ビタミンなどの栄養素と比べると、意識されにくい傾向にあります。そのため、知らないうちに不足してしまっている人が多いのです。
そうしたことを避けるためにも、以上に挙げたミネラルについては、しっかりと理解しておくようにしましょう。