ダイエット 栄養

ダイエット目的にビタミンDのサプリメントを摂るときのポイント

一般的に、ビタミンDは骨の健康に関わっている栄養素として認識されています。「くる病」「骨軟化症」といった骨が柔らかくなる病気は、ビタミンDの欠乏症として有名です。
ただ、ビタミンDは骨だけでなく肥満にも関係しています。具体的には、ビタミンDには肥満の原因となる「インスリン抵抗性」を改善する働きがあることが明らかになっています。
こうしたことから、ダイエット中には体内で適切にビタミンDが作られるように食事や生活を意識することが大切です。また、ビタミンDが足りないときは、サプリメントで摂取することも有効です。
どのような方法であっても、体内におけるビタミンD量を維持できるようになれば、ダイエットで成功しやすくなります。
そこで今回は、「ダイエット目的にビタミンDのサプリメントを摂るときのポイント」について解説します。

サプリメントでビタミンDを摂取するときのポイント

・ビタミンDは肥満の原因となるインスリン抵抗性を改善させる働きがある
・外出機会の減少や加齢はビタミンD欠乏の原因となる
・ビタミンDは活性化されて、はじめて機能を発揮する
・ビタミンDの活性化は体内で精密にコントロールされており、活性型ビタミンDの合成量は調整されている
・ビタミンDの過剰が問題になることは少ない
・基本的にはサプリメントではなく日光浴や食事でビタミンDを意識することが大切
・コレステロールやタンパク質不足、肝臓、腎臓の病気はビタミンD不足の原因となる

ビタミンDとは

ビタミンDは、不足すると「くる病」や「骨軟化症」といった骨に関係する病気を招く可能性がある栄養素として知られています。ただ、ビタミンDは骨だけでなく体内のさまざまな場所で重要な役割を担っているのです。
そうしたビタミンDの役割を知っておくと「ビタミンDがどれだけダイエットや健康に関与しているのか?」ということを理解できるようになります。

ビタミンDの構造

ビタミンDは、主に「ビタミンD2」と「ビタミンD3」の2つに分類されます。
植物に含まれるコレステロール(エルゴステロール)から作られるのがビタミンD2であり、動物に存在するコレステロール(7-デヒドロコレステロール)から合成されるのがビタミンD3です。
つまり、一言で食品からビタミンDを摂取するといっても、植物性食品からはビタミンD2、動物性食品からはビタミンD3を摂ることになります。
ビタミンD2とビタミンD3では、ビタミンD3の方が効率的に体内へ吸収されます。そのため、ビタミンD3の方が重要視されています。ただ、ビタミンDの代表的な役割である骨の健康に関しては、ビタミンD2の方が関係していることが明らかになっているのです。
太陽の光を浴びるとビタミンDが作られるのは、皮膚にビタミンD3の原料となる7-デヒドロコレステロールが存在してるためです。7-デヒドロコレステロールに紫外線が加わることで、ビタミンD3が合成されます。
つまり、体内でコレステロール(7-ヒドロコレステロール)が不足すると、皮膚で作られるビタミンD量は少なくなるのです。
ビタミンD2は、植物に存在するエルゴステロールに紫外線が加わることで作られます。
このように、ビタミンDは構造の違いによってビタミンD2とビタミンD3の2つに分けられ、それぞれで違った特徴をもっています。

ビタミンDの役割

骨の健康に役立つとして知られているビタミンDですが、実際には骨だけでなく体内のさまざまな働きに関与しています
例えば、外でよく遊ぶ子どもが風邪を引きにくくくなるのは、太陽の光(紫外線)によって皮膚で作られたビタミンDが、免疫細胞に働きかけて免疫を高めるためです。また、ビタミンDは腸にも作用して、食べ物から血液中へビタミンD自身の取り込みを促しています。
その他にも、ビタミンD3はさまざまな器官で以下のような役割を担っています。


腸、骨、腎臓、副甲状腺 血液中のカルシウム濃度のコントロール、骨密度の維持
すい臓、乳房、前立腺 がん細胞の増殖抑制、インスリン抵抗性の改善
血管、心臓 血圧コントロール、心筋梗塞の予防
免疫細胞 免疫反応のコントロール
皮膚 皮膚の成長と分化
筋肉 収縮と弛緩のコントロール(カルシウム輸送を調整)
神経 神経細胞の損傷を防ぐ(認知機能低下の予防)


このように、ビタミンDは全身の細胞でさまざまな働きをしています。

ビタミンDの摂取基準量

ビタミンDの摂取基準量は、厚生労働大臣が定める「食事摂取基準」によって決められています。以下に、ビタミンDにおける第6次改定日本人の栄養所要量を記します。


年齢(歳) 所要量μg 許容上限摂取μg
1~2 2.0 20
3~5 2.5 30
6~7 3.0 40
8~9 3.5 40
10~11 4.5 60
12~14 5.5 80
15~17 6.0 90
18~29 5.5 100
30~49 5.5 100
50~69 5.5 100
70歳以上 5.5 100
妊婦 7.0  
授乳婦 8.0  


*1μg=0.001mg

ビタミンDとダイエットの関係性

ここまで述べたように、ビタミンDは全身の細胞に作用して、さまざまな役割を担っています。そして、ビタミンDはダイエットにも深く関係しているのです。
ビタミンDとダイエットの関係性を知って実践することで、効率的かつ健康的に痩せることができるようになります。

ビタミンDはインスリン抵抗性を改善する

ビタミンDがもつ機能の一つとして「インスリン抵抗性」に対する役割が知られています。インスリンとは、すい臓で作られるホルモンであり、血糖値(血液中の糖分量)を下げる作用をもっている物質です。
通常、食事で糖質を含む食べ物を摂ると、食品中の糖分が血液中に入るため血糖値が上昇します。
ただ、体にとって血糖値が高いこと(高血糖)は好ましい状態ではありません。例えば、高血糖状態では血管が傷つけられて動脈硬化(動脈が硬くなる病気)が起こりやすくなります。つまり、血糖値が高いままであると、脳梗塞や心筋梗塞といった血管に関係する病気が発症しやすくなるのです。
そうしたことを避けるために、食事によって血糖値が高くなると、即座にインスリンが分泌されて血糖値が抑えられます。
しかし、いくらインスリンが分泌されても、インスリンが上手く働かなければ血糖値は下がりません。このようにインスリンが効きにくくなっている状態を「インスリン抵抗性」といいます。インスリン抵抗性になると、体内でインスリンが作られても血糖値が高いままになるのです。
ビタミンDには、インスリン抵抗性を改善する役割があることが明らかになっています。
具体的には、トルコ・イスタンブール・バスケント大学病院のフルヤ・パリルダ医師によって行われた研究では、31~66歳までの糖尿病予備軍の患者66人に対してビタミンDによる治療を行ったところ、半年で、HbA1cと空腹時インスリン値、インスリン抵抗性指数(HOMA-RA)が軒並み下がったことが報告されています。
*HbA1cは、血糖状態を表す数値であり、糖尿病の診断基準に用いられているものです。
その他にも、マサチューセッチュ・メディカル・スクールの小児科医であるベンジャミン・ウドカ・ノウス医師、アムステルダム EMGO 保険医療研究所のポール・リップス医師、イラン カーシャーン大学医学部の調査チームが関わったそれぞれの研究で、ビタミンDのインスリン抵抗性改善効果が報告されているのです。
このように、ビタミンDにはインスリン抵抗性を改善する働きがあります。

インスリン抵抗性とダイエットの関係

インスリン抵抗性の状態になると、体内でインスリンが大量にあふれることになります。インスリンが効かないため、どんどんインスリンが作られるようになるのです。
既に述べたように、インスリン抵抗性があると血糖値が上がったままの状態になります。そうなると、体はどうにかして血糖値を下げようとして、インスリンをたくさん作ります。その結果、「高血糖 → インスリン分泌 → インスリン抵抗性 → 高血糖 → インスリン分泌……」という悪循環に陥ってしまうのです。
健康であれば、以下のように食事によって血糖値が上がっても、すぐにインスリンが分泌されて作用することで血糖値は下がります。

それに対してインスリン抵抗性があると、以下のように血糖値が下がらないだけでなく、高インスリン状態となるのです。

インスリンには、血糖値を落ち着かせるだけでなく、体に脂肪を溜め込ませる働きがあります。つまり、インスリン抵抗性によって高インスリン状態になると、どんどん太りやすくなってしまうのです
このように、インスリン抵抗性は体が太りやすくなる原因となります。そのため、インスリン抵抗性を改善する作用をもつビタミンDは、ダイエットをする上で重要な栄養素だといえます。

ビタミンDの供給経路

ここまで述べたように、ビタミンDはダイエット中に意識して摂取すべき栄養素になります。
ただ、体内におけるビタミンD量を増やすためには、ビタミンDを豊富に含む食品やサプリメントを摂るけでは不十分です。ビタミンDの主な供給源は、食べ物ではなく、日光(紫外線)であるためです。

日光(紫外線)を浴びて肌から作る

既に述べたように、人間の皮膚にはビタミンDの原料となるコレステロール(7-デヒドロコレステロール)が存在しています。7-デヒドロコレステロールは、紫外線に当たるとビタミンD3に変わります。
ビタミンDの主な供給源は、食べ物ではなく、紫外線による皮膚での産生です。つまり、日光に十分に当たるような生活をしていれば、ビタミンDを食べ物から意識して摂取する必要はないといえます。
実際に、ビタミンDの欠乏状態(くる病、骨軟化症)に関係しているのは、食事での摂取量よりも紫外線の照射量であることが明らかになっています。
例えば、イギリスにおける経度の異なる地域では、日照射が少ない北の地域に住む人の方がビタミンD欠乏状態となりやすいとされています。また、外に出る機会が少ない老人も、ビタミンDが不足しがちになります
栄養というと、食べ物から摂ることがメインであると考えがちです。しかし、ビタミンDは皮膚での合成が主な供給源であることを知っておく必要があります。
ただ、「加齢に伴って肌でのビタミンD合成量は減る」ということも把握しておくようにしましょう。

食べ物から摂る

ビタミンDの供給源は紫外線による肌での合成ですが、食事から摂取することも大切です。特に、紫外線の照射量が少ない国に住む人々や外出機会の減った老人などは、食事から十分なビタミンDを摂る必要があります
中でも、吸収効率が良い動物性食品に含まれているビタミンD3は、意識して摂取するようにしましょう。
例えば、ビタミンD3を多く含む食品としては、卵やチーズ、魚(ニシンなどの脂分が多い魚)、レバー、ヨーグルト、生クリームなどが挙げられます。また、ビタミンD2は、キクラゲやしいたけなどのきのこ類に含まれています。
外に出る機会があまりなく、紫外線を浴びる量が少ない人は、ビタミンDを豊富に含む食品を積極的に摂取するようにしましょう。

ビタミンDの活性化

ここまで述べたように、皮膚で合成されたり、食事から摂取したりすることで体内のビタミンD量は増えます。ただ、ビタミンDは体内で活性化されなければ機能を発揮することはできないのです
具体的には、皮膚で作られたり食事から摂取したりしたビタミンDは、まず肝臓に送られます。そして、肝臓で一部だけ活性化された後、腎臓でさらに活性化されます。
このように、ビタミンDは肝臓と腎臓で2度活性化されて、はじめて機能を果たすことなるのです。
(*皮膚でもビタミンDの活性化が行われていることが明らかになっている)
また、ビタミンDは肝臓と腎臓で活性化されるため、肝臓もしくは腎臓に問題があると、上手く活性化されません。
活性化されたビタミンDは血液中に入った後、タンパク質に結合して全身の細胞に送られます。そのため、血液中に十分量のタンパク質がない場合には、活性型のビタミンDが作られても全身の細胞に届けられなくなるのです
細胞に届けられたビタミンDは、細胞内に存在する遺伝子(DNA)に直接働きかけます。そして、免疫細胞を活性化して免疫を高めたり、皮膚に作用して皮膚の生まれ変わりを促したりするのです。

*ビタミンDのように、遺伝子に直接作用する物質を「核受容体スーパーファミリー」といいます。核受容体スーパーファミリーについては「ダイエット目的にビタミンAのサプリメントを取るときのポイント」に詳しく書いています。
このように、活性化されたビタミンDは遺伝子に作用するため、過剰に増えすぎると問題が生じます。そうした事態を避けるため、体内では活性型ビタミンDが増えすぎないように、ビタミンDの活性化が精密にコントロールされているのです。
そのため、基本的に食事などで天然のビタミンDを摂取しても、活性型ビタミンが過剰に作られることはありません。その一方で、既に活性化されているビタミンDをサプリメントなどで摂取するときには注意が必要です。
ちなみに、ビタミンDが細胞の遺伝子に対して適切に働くためには、ビタミンAが必要になります。

ビタミンDの欠乏、過剰摂取

体内におけるビタミンD量が過不足状態になると、さまざまな問題が出現します。
既に述べたように、ビタミンDの活性化は精密にコントロールされているため、ビタミンDの量が過剰になることは少ないです。ただ、サプリメントなどでビタミンDを摂取している人は注意する必要があります。

ビタミンD過剰

サプリメントなどでビタミンDを過剰に摂取すると、嘔吐やめまいといった症状が出現します。これは、ビタミンDによってカルシウムの吸収が促された結果、血液中のカルシウムが増えすぎた(高カルシウム血症となっている)ことが原因です。
ビタミンDには腸からのカルシウム吸収を促す役割があります。そのため、ビタミンDを過剰に摂取すると、高カルシウム血症となってしまうのです。
さらに、高カルシウム血症の状態が長くなると、腎臓などで石ができる可能性もあります
ただ、こうした高カルシウム血症は、1日のビタミンD摂取量が成人で500~1000μgを超えなければ起こりません。どれだけ意識して食事でビタミンDが豊富な食品を食べても、長時間日光に当たっていても、これだけのビタミンDを体内で作るのは不可能です。
こうしたことから、基本的にビタミンDの過剰摂取を心配する必要はありません。

ビタミンD欠乏

一般的に知られているように、ビタミンDが欠乏するとくる病や骨軟化症といった骨がもろくなる病気になります。これは、ビタミンDが血液中のカルシウム量を調整しているためです。ビタミンDが適切に働くことで、骨が硬く丈夫な状態になります。
例えば、ビタミンDは腎臓に働きかけて、カルシウムを血液中に取り込むことを促しています。つまり、尿からカルシウムが排泄されることを防いで、血液中にカルシウムを戻しているのです。
また、ビタミンDは骨自身に働きかけて骨の硬さが保たれるように、骨細胞の活動を調整しています。
このように、ビタミンDが欠乏すると主に骨の異常が生じるのです。
具体的なビタミンD欠乏の症状としては、骨が何もしていないときに痛んだり、押したとき強い痛みを発したりします。さらに、骨の変形や筋力低下、歯の変形、貧血、呼吸器官感染症なども、ビタミンDが欠乏すると起こる可能性がある症状です。
このように、ビタミンDが欠乏すると、骨に異常が出現しやすいことを知っておくようにしましょう。

ビタミンDを豊富に含む食品

最後に、ビタミンDを豊富に含む食品についてまとめます。


ビタミンD2(植物性食品) ビタミンD3(動物性食品)
キクラゲ
干ししいたけ
あんきも
しらす干し
ニシン
すじこ
いくら
かわはぎ
サケ
うなぎ
かずのこ
さんま
あゆ
太刀魚
コイ
カレイ
サバ
煮干し


今回述べたように、ビタミンDは脂肪蓄積に関わるインスリン抵抗性の改善に関わるため、ダイエットを成功させるために欠かせない栄養素だといえます。
ただ、ビタミンDは紫外線や食事から摂取して、体内で活性化されることが大切です。サプリメントなどで活性型のビタミンDを摂るときには、活性型ビタミンDの過剰に注意しなければいけません。
また、皮膚でビタミンDを合成するためにはコレステロール、活性化されたビタミンDを全身の細胞に送るためにはタンパク質が必要です。さらに、体内で活性化するためには肝臓と腎臓が適切に働くことが欠かせません。
そのため、ビタミンDの恩恵を受けるためには、コレステロールやタンパク質不足、肝臓・腎臓の病気を予防することも重要です。