ダイエットをしている人で、何も問題なくダイエットを成功している人は少ないです。多くの人は、痩せなかったり、リバウンドしたりするなど、ダイエットで失敗します。
そして、ダイエットで失敗する原因の一つに「栄養不足」が挙げられます。一般的なダイエット方法では、カロリー制限を推奨されるため、食事から摂取する栄養素が不足しがちです。
一見すると、摂取するカロリーを制限することは理にかなっているように思えます。しかし実際には、カロリー制限では痩せることはできませんし、もし体重が減ったとしても、必ず何かしらの不調が出現することになるのです。
特に、カロリー制限を行って特定の栄養素が不足すると、痩せにくく不健康な体質となってしまう可能性があります。
そうしたことを避けるためにも、ダイエットと栄養不足の関係について正しい知識をもっておくことが大切です。そうすることで、栄養不足を起こすことなく、健康的に痩せることができるようになります。
そこで今回は、「ダイエット中の栄養不足を避けるべき理由」について解説します。
ダイエット中に不足しがちな栄養素とダイエットとの関係性
ダイエット中に食事制限を行うと、ほとんどのケースで栄養不足が起こります。
ただでさえ、現代は高炭水化物食や加工食品などの影響で摂取する栄養素が不足しがちです。その上に食事を制限すると、栄養素が足りなくなるのは当然だといえます。
そして、ダイエット中に特定の栄養素が不足してしまうと、痩せにくくなったり、不調を招いたりすることにつながるのです。
そうならないためにも、ダイエット中に不足しがちな栄養素を知っておくことが大切になります。以下に、ダイエット中に不足しやすい栄養素について記します。
脂質
脂肪は、ダイエット中に最も不足しがちな栄養素だといえます。炭水化物やタンパク質と比べて、1グラム当たりのカロリー量が高い脂質は、カロリーの摂取量を抑えるために控える人が多いためです。
しかし実際には、脂質の摂取量を抑えたからといって痩せることはありません。いってしまえば、ダイエットの王道であるカロリー理論は間違っているのです。
体重の増減をコントロールしているのは、カロリーではなくホルモンです。ホルモンによって脂肪の合成・分解や食欲の増減が調整されることで、体重はコントロールされています。体重の増減に関するホルモンの働きに関しては「減量に影響するホルモン」に詳しく書いています。
また、食事から摂取する脂質が不足すると痩せにくく、不健康な体になるのです。
例えば、脂質はホルモンの重要な構成要素となっています。そのため、体内で脂質が不足するとホルモンバランスが崩れてしまい、痩せにくくなるのです。さらに、ホルモンバランスが悪くなることで、さまざまな不調が出現することになります。
このように、効率的かつ健康的にダイエットを行いたいのであれば、脂質の摂取不足は避けるべきだといえます。
そうはいっても、当然ながら「トランス脂肪酸」や「過酸化脂質」といった質の悪い脂質の摂取は避けるべきです。こうした脂質は、体重の増加や不調を招く原因になります。
そうではなく、バターなどの動物性食品に含まれている良質の「飽和脂肪酸」や、青魚や亜麻仁油、シソ湯などに含まれている「オメガ3系脂肪酸」を積極的に摂るようにしましょう。
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タンパク質
ダイエット中は、タンパク質も不足しがちな栄養素だといえます。カロリー摂取を恐れて、脂質を多く含む動物性食品を避けてしまうことで、タンパク質の摂取量も少なくなってしまうのです。
ただ、タンパク質が不足することも、痩せにくく不健康な体を作ることにつながります。
例えば、タンパク質は筋肉を構成する材料です。また、タンパク質は「酵素」と呼ばれる代謝をサポートする物質の原料になります。そのため、タンパク質が不足すると、筋肉量が減ったり、酵素が不足したりすることで代謝が悪くなり、痩せにくくなります。
さらに、タンパク質は脂質と同じようにホルモン合成に欠かせない成分です。つまり、タンパク質が不足すると、脂質不足と同じようにホルモンバランスが崩れてしまうため、痩せにくく不調が現れやすい身体になります。
このように、タンパク質不足もダイエットの失敗を招く大きな要因となるのです。
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鉄
鉄も、ダイエット中に不足しがちな栄養素の一つだといえます。体内に吸収しやすい鉄は、動物性食品に多く含まれている「ヘム鉄」であるため、カロリー制限で動物性食品を控えている人は鉄が不足しがちです。
食事からの鉄分摂取が不足すると、いわゆる「貧血」になります。貧血とは、簡単にいうと「十分な酸素が細胞へ届けられない(酸欠)」という状態です。そして、貧血もダイエットを妨げる大きな要因となります。
例えば、細胞が活動をするためには酸素が必要です。細胞は、酸素を使ってエネルギーを作り出すことで、正常に働くことができます。
そのため、貧血によって細胞に酸素が不足すると、代謝が悪くなって痩せにくくなるのです。また、酸欠になると細胞が適切に働かなくなるため、さまざまな不調が出現します。
例えば、脳が酸欠になると集中力の低下や頭痛、吐き気などが起こります。他にも、筋肉に十分な酸素が送られないと、脱力感や倦怠感、筋力低下などが生じることになるのです。
このように、ダイエット中の鉄分不足は代謝の低下や細胞の酸欠を招いて、痩せにくく不健康な体を作ることにつながります。
亜鉛
亜鉛はミネラルの一種であり、ダイエット中に不足しがちな栄養素の一つです。亜鉛が豊富に含まれている食品は動物性食品であるため、ダイエットを目的にカロリー制限をしている人は、必然的に摂取量が少なくなります。
そして、亜鉛は体のさまざまな機能に関与しているため、摂取量が不足すると不調が出現することになるのです。
例えば、亜鉛不足の症状としては、皮膚炎や脱毛、免疫低下などが挙げられます。また、亜鉛は味覚にも深く関わっているため、亜鉛の摂取量が足りないと味覚が悪くなる可能性が高いです。
その他にも、亜鉛が不足すると、子どもの成長と発育、性的成熟などにも悪影響が及ぶことが明らかになっています。
こうしたことから、ダイエット中に亜鉛不足が生じると、さまざまな不調に悩まされて、ダイエットを断念してしまう可能性が高いのです。
このように、亜鉛不足も体調不良を招くことで、ダイエットを止めることにつながります。
ビタミンB群
ビタミンB群も、ダイエット中に不足しがちな栄養素の一つです。特に、動物性食品に豊富に含まれているビタミンB12は、カロリー制限をしている人で摂取量が足りなくなります。
そして、ビタミンB群は体内で起こるほとんどの代謝に関わっているため、摂取量が不足すると代謝が低下してしまうのです。
例えば、ビタミンB1は、糖質の代謝に深く関わっています。また、ビタミンB2は脂質、ビタミンB6はタンパク質の代謝をサポートするのです。さらに、ビタミンB12は、神経や血液の合成に関与しています。
このように、ビタミンB群は体の多くの機能に関与しているため、ビタミンB群が不足すると、さまざまな不調を招くことになるのです。
例えば、糖質の代謝に関わっているビタミンB1が不足すると、肩こりや筋肉痛、集中力の低下などが起こります。また、脂質の代謝に関与するビタミンB2が足りなくなると、脂肪の燃焼が悪くなって痩せにくくなるのです。さらに、ビタミンB12の不足は貧血の発症につながります。
こうしたことからも、ダイエット中にビタミンB群の摂取量が足りなくなると、痩せにくくなるだけでなく、多くの不調を招くことになるのです。
カロリー制限で痩せない理由
ダイエット中には、特定の栄養素不足だけでなく、カロリー不足によってもさまざまな問題が生じます。健康的に痩せたいのであれば、過剰なカロリー制限はすべきではありません。カロリーの制限も、痩せにくくなるだけでなく、多くの不調を招く原因になるためです。
体重増減はカロリーがコントロールしているのではない
そもそも、体重の増減は摂取カロリーと消費カロリーの収支によってコントロールされていません。脂肪の蓄積を調整しているのは、カロリーではなくホルモンです。
具体的には、膵臓で作られる「インスリン」というホルモンが分泌されるほど、体重は増えることになります。そして、インスリンの分泌はカロリーから受ける影響は小さいのです。
カロリー制限は代謝を抑制する
さらに、カロリー制限は代謝を抑制するため、痩せにくくなります。食事から摂取するカロリーが不足すると、生命を維持するために必要なエネルギーが作り出せなくなるため、消費カロリーを抑えるような反応が生じるのです。
例えば、1日に活動するために必要なエネルギー量が1500キロカロリーだったとします。その場合に、食事から摂取するカロリー量が1000キロカロリーだったら、500キロカロリーが不足することになります。
そうなると、体はさまざまな対策によってエネルギー不足を解消しようとするのです。
例えば、体に蓄積されている脂肪を燃焼することでエネルギーを作り出すことは、カロリーの摂取不足を補う反応の一つです。このことだけを考えると、カロリー制限は痩せるために有効な手段のように思えます。
しかし、カロリーの摂取不足を補う反応としては、脂肪の燃焼だけでなく代謝の低下も起こるのです。体にとって脂肪は重要なエネルギー源であるため、カロリーの摂取不足によって脂肪が過剰に燃焼されることを防ごうとします。
そのため、摂取するカロリーが少なくなった分だけ代謝によって消費するカロリーを減らすことで、カロリー不足を補うような反応が起こるのです。
カロリー制限は不調を招く
そして、カロリーの摂取量が不足すると、エネルギーが足りなくなるため、酸欠と同じようにさまざまな不調が出現します。
例えば、筋肉にエネルギー不足が生じると、筋力低下や脱力、倦怠感が起こります。また、脳のエネルギーが足りていないと、イライラしたり、ボーっとした状態になったりするのです。
このように、カロリー不足は代謝を抑制して痩せにくくするだけでなく、さまざまな不調を招くことになります。そのため、健康的にダイエットをしたいのであれば、カロリー制限は避けるべきだといえます。
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栄養不足を解消する方法
ここまで述べたように、ダイエット中に特定の栄養素が不足すると、痩せにくくなるだけでなく、さまざまな不調が出現することにつながります。そのため、ダイエット中には栄養不足が起こらないように注意することが大切です。
そこで以下に、ダイエット中の栄養不足を防ぐ方法について記します。
カロリー制限を止める
ダイエット中に特定の栄養素が不足する理由の多くは、食事からのカロリー摂取量を意識するためです。つまり「カロリー制限に伴って体に必要な栄養素も不足してしまう」といえます。
そのため、カロリー制限を止めることが、ダイエット中の栄養不足を防ぐことにつながります。
既に述べたように、カロリー制限は痩せにくくなるだけでなく、不調の出現につながるダイエット方法です。つまり、健康的に痩せるためには、カロリー制限は行うべきではありません。
このように、まずはカロリー制限に対して正しい認識をもってカロリー制限を止めることが、ダイエット中の栄養不足を防ぐために大切です。
不足しがちな栄養素を補う
ダイエットでカロリー制限を止めても、特定の栄養素が不足して痩せにくくなったり、不調が出現したりする人も少なくありません。そうした人たちは、普段の食事に問題があるのです。
そのため、ダイエットをしても痩せにくかったり、不調が現れたりする人は、栄養不足を疑うようにしましょう。
そうした人たちは、不足している栄養素を補うことで、自然と健康的に痩せることができるようになります。以下に、栄養不足で起こりやすい不調と、摂取すべき食品についてまとめます。
栄養素 | 栄養不足で生じる症状 | 摂取すべき食品 |
---|---|---|
脂質 |
・倦怠感、体力低下、脱力感 ・乾燥肌 ・イライラ、集中力の低下 ・低体温 |
バター、アボカド、種子類(アーモンドなど)、オリーブオイル、青魚(サバ、サンマ、いわしなど) |
タンパク質 |
・倦怠感、体力低下 ・髪質の低下(髪のパサつきなど) ・爪の不調(伸びが遅い、割れやすい、変形している) ・イライラ、集中力の低下 |
魚介類、肉類、卵、大豆 |
鉄 |
・集中力低下 ・頭痛、吐き気、めまい ・筋力低下、脱力感、倦怠感 ・息切れ、同期、頻脈 ・眼瞼結膜(まぶたの裏側)、唇、爪、顔面の蒼白 |
レバー、貝類、ほうれん草、海苔、きなこ、ひじき、小松菜 |
亜鉛 |
・味覚障害 ・皮膚の乾燥 ・脱毛 ・性欲低下 ・貧血 ・イライラ、集中力の低下 ・耳鳴り、聴力障害 |
カキ、煮干し、豚レバー、卵黄、大豆製品、チーズ |
ビタミンB群 |
・脱力、倦怠感、体力低下 (ビタミンB1,2) ・イライラ、集中力低下 (ビタミンB1、12) ・食欲不振 (ビタミンB1,12) ・ふらつき、めまい (ビタミンB6,12) ・口内炎、肌荒れ (ビタミンB2、6) ・毛髪トラブル (ビタミンB2) ・手足の痺れ (ビタミンB1、6,12) ・貧血 (ビタミンB6,12) ・けいれん (ビタミンB6,12) |
・ビタミンB1 豚肉、たらこ、ウナギ、玄米、全粒粉、大豆 ・ビタミンB2 レバー(牛、豚、鳥)、ウナギ、納豆、卵、モロヘイヤ ・ビタミンB6 レバー(牛、豚)、鳥ササミ、マグロ、かつお、バナナ ・ビタミンB12 レバー(牛、豚、鳥)、サンマ、シジミ、アサリ、カキ、ハマグリ |
ダイエット中に以上のような症状がある場合には、特定の栄養素不足を疑うようにしましょう。
今回述べたように、ダイエット中に栄養不足が生じると、痩せにくくなるだけでなく、さまざまな不調が出現することにつながります。こうしたことから、健康的かつ効率的にダイエットを成功させるためには、栄養不足を防ぐことが大切です。