ダイエット 基本

減量(ダイエット)に影響するホルモン

ダイエットを行う上で、体に脂肪が蓄積するメカニズムを理解しておくことは大切です。多くの人は「食べ過ぎ」「カロリーの過剰摂取」を、肥満の原因と考えています。
しかし実際には、体が脂肪を溜め込む原因は食べすぎでもカロリーの過剰摂取でもありません。体へ蓄積する脂肪量を決めるのは、ホルモンです。そのため、ダイエットを成功させる上でホルモンに関する知識を持っていることは必須になります。
そこで今回は、ダイエットとホルモンの関係性について解説します。

ダイエットが成功しない理由

ダイエットを行う人たちのほとんどは、「カロリー制限」を行います。これは、摂取カロリーと消費カロリーの差によって、脂肪の蓄積量が決まるという考えを元に定着した行動です。
例えば、1日で食事から2500キロカロリーを摂取して、基礎代謝と運動によって2000キロカロリーを消費したとします。そのため、その差である500キロカロリーが消費しきれなかったカロリーとなります。そして多くの人は、余剰分の500キロカロリーが脂肪として蓄積されると考えます。
しかし、人の体はこのように単純にはできていません。体内における脂肪蓄積のメカニズムは、「摂取カロリーと消費カロリーの引き算」では成り立っていません
そのため、いくらカロリー制限を行っても痩せませんし、もし減量したとしてもカロリー制限を止めた途端にリバウンドを起こします。そして、極端なカロリー制限は、体のエネルギー不足を引き起こすため、さまざまな不調が出現します。
人は、体の細胞が活動することによって生命を維持しています。そして、細胞が正常に働くためにはエネルギーが必要です。そのようなエネルギーは、主に摂取した食べ物から作られます。
もし、極端なカロリー制限によって食事量を減らしすぎると、体内で必要なエネルギー量が産生されなくなるため細胞が正常に機能しなくなります
その結果、冷えや倦怠感、脱力感といったような体の不調が起こります。つまり、カロリー制限によってダイエットを行うと、健康のために行ったダイエットが体を壊すきっかけになってしまいます。そして、ダイエットを諦めることになります。
このように、多くの人が行うカロリー制限によるダイエットは、そもそも理論が間違っているため痩せませんし、体の不調を招くことになるため避けるべき方法だといえます。

ダイエットを成功させる鍵はホルモンコントロール

健康的にダイエットを行うために必要なことは、カロリー制限ではありません。カロリー制限は、理論自体が間違っていますし、エネルギー不足による体の不調を引き起こします。
ダイエットに必要なことは、カロリー制限ではなくホルモンコントロールです。体への脂肪蓄積を調整しているのは、カロリーではなくホルモンです。ダイエットを行う上では、まずはホルモンと脂肪蓄積の関係性を理解しておくことが必須になります。
そして、ダイエットを行う上で重要なホルモンは「インスリン」と「レプチン」という2つのホルモンです。
基本的に中性脂肪の貯蔵は、インスリンとレプチンによってコントロールされています。そのため、いかにこの2つのホルモン分泌をコントロールするかがダイエットを成功させるポイントになります。
インスリンは、血液中の糖質量が増えて血糖値が上昇した際に、膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンです。インスリンは、上がりすぎた血糖値を低下させる作用があります。また、インスリンは血糖の調整だけでなく、脂肪細胞に脂肪を蓄えさせる働きもします
そのため、インスリンが過剰に分泌されると、体にはどんどん脂肪が蓄積されることになります。
そして体が健康であれば、脂肪細胞にある程度の中性脂肪が蓄積されると、レプチンが分泌されることで、これ以上脂肪を蓄積させないようにブレーキをかけます。
レプチンには、満腹感を引き起こすだけでなく、脂肪細胞に蓄積した中性脂肪によるエネルギー消費を増大させる作用があります。このように、脂肪細胞に中性脂肪が一定上貯蔵されると、レプチンによって食欲の抑制と脂肪の燃焼が促されます。
そのため、インスリンとレプチンが正常に機能している限りは肥満になることはありません。
つまり、ダイエットにはインスリンとレプチンという2つのホルモンコントロールが必要不可欠といえます。そして、インスリンとレプチンを正常に機能させるためには、睡眠や食事、運動という生活習慣を整えることが大切になります。

ダイエットに影響するその他のホルモン

ダイエットを行う上で、インスリンとレプチンの分泌をコントロールすることは必須です。
ただ、インスリンとレプチンの分泌におけるコントロールが良好でも、肥満になる人がいます。そのような場合は、インスリンとレプチンではなく、コルチゾール(糖質コルチコイド)やチロキシン(甲状腺ホルモン)に問題がある可能性があります。
そこで以下に、ダイエットに影響するコルチゾールとチロキシンについて解説します。

コルチゾール(糖質コルチコイド)

コルチゾールとは、副腎(ふくじん)と呼ばれる腎臓の上にある器官によって合成、分泌されるホルモンです。
コルチゾール(糖質コルチコイド)は、もともと精神的なストレスや過剰な運動によって分泌が促されます。そして、コルチゾールはそのようなストレスに対して体を適応させたり、免疫機能をコントロールしたりする役割を担っています
またコルチゾールには、以上のような働きとだけではなく、血糖値を上昇させる機能があります。そのため、コルチゾールの分泌が多くなると血液中のインスリン量も増えます。
一方で、コルチゾールは血糖値を上昇させることでインスリンの分泌は促しますが、インスリンによる「血糖値低下作用」は抑制します。つまり、コルチゾールの分泌量が増えると、血液中にはインスリンが大量にあるにも関わらず、血糖値は高いままとなります。
ただ、このような状況でも、インスリンの脂肪蓄積作用は通常通り機能しているため。余剰の糖分が脂肪(特に内臓脂肪)に変換されやすくなります。
つまり、コルチゾールは体に脂肪を蓄積させるホルモンだといえます。
コルチゾールはクッシング症候群と呼ばれる病気や、過度なストレスによって過剰に分泌されます。そのため「病気を発症する」もしくは「精神的なストレスが強くなる」とコルチゾールが分泌されるため太りやすくなります。
一方でコルチゾールの分泌が低下すると、脂肪細胞での中性脂肪分解が促進されるため、体は痩せていきます。ただこのときの体重減少は、さまざまな不調やうつ状態を伴うため、健康的な痩せ方とはいえません。
このように、病気やストレスによっても、コルチゾールの影響で肥満になりやすくなる可能性があります。

チロキシン(甲状腺ホルモン)

チロキシンとは、甲状腺と呼ばれる喉の部分にある器官で合成、分泌されるホルモンです。
チロキシンは、基本的に代謝を向上させる作用をもっており、それと同時に血糖値を上昇させる役割もあります。チロキシンの分泌が過剰になると代謝が亢進するため、急激な体重減少、血圧上昇、発汗などが出現します
チロキシンの過剰分泌は、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)という病気を引き起こします。バセドウ病は、上記の症状に加えて強い疲労感や眼球突出などが出現します。
逆にチロキシンの分泌が低下すると、代謝が悪くなるため体重はどんどん増えます。そのような状態は、甲状腺機能低下症(橋本病)と呼ばれ、うつや全身倦怠感、脈拍数の低下などの症状を伴います。
このように、チロキシンの影響によっても、肥満になる可能性はあります。
今回述べたように、インスリンやレプチンだけではなく、コルチゾールとチロキシンというホルモンの影響によっても脂肪の蓄積はコントロールされています。ただ、コルチゾールとチロキシンによる肥満や体重減少は、どちらも体の健康状態が崩れた状態です。
そして、副腎や甲状腺に障害が起こって太ったり痩せたりした場合は、ダイエットどころの問題ではなくなります。
急激な体重変化に加えて、以上のような症状を伴っている場合は、副腎や甲状腺の病気を疑うことも大切です。副腎や甲状腺によって生じた肥満は、根本的な病気の解消でしか解決できないため注意してください。