足裏には3つのアーチ(外側アーチ、内側アーチ、横アーチ)があり、親指の付け根(第1中足骨)、小指の付け根(第5中足骨)、踵の3点で形成され人の体重を支える土台となっています。
この3つのアーチがバランスを崩すと「外反母趾」になりやすくなります、それだけではなく足裏から身体全体、歩き方、姿勢、健康にまで影響を及ぼします。
外反母趾になる要因
外反母趾とは、親指が小指側に15度以上曲がった状態をいいます。特に女性は、ヒールや先の細い靴などを履くので外反母趾になりやすいといわれています。
それだけではなく、女性は男性に比べ筋肉が弱いため重力の影響を受けやすく足裏のバランスを崩しやすいとされています。筋力が弱いと、身体の安定を担う親指の踏み込む力が重力に負けてしまうため親指が浮いてしまい、歩行時に親指の代わりに親指の付け根(第1中足骨)を使って歩くようになります。
そのような歩き方を繰り返すことで、横アーチを形成している「中足靭帯」が緩んでしまいまい、足裏が平らになります。すると親指に力が入りにくくなり、縦アーチ・横アーチが消失しやすくなってしまうのです。
外反母趾による身体の変化
横アーチが崩れ始めると、中足骨は横に広がるように動いてしまいます。この状態を開帳足(かいちょうそく)と言い、外反母趾の進行はまずこの開張足から始まります。開張足になると、母趾が足の外側に回旋し、親指全体が外側に傾き、次第に親指の中骨が曲がり突き出てきて外反母趾になります。
開帳足が進行するに連れ、足が靴に当たるときなどに痛みを伴うようになり、悪化するとちょっとした動作でも痛みを感じるようになります。重症になると、親指の付け根の関節が脱臼して、親指と隣の指が重なってしまうこともあります。
また、外反母趾はただの足の変形にはとどまらず、身体の不調の原因にもなります。例えば、膝・腰・首の変形をはじめとして、首を痛めたことから起こる自律神経失調症・冷え性・うつ病・パニック症・など二次的障害も引き起こす可能性があります。
さらに外反母趾は、歩き方や姿勢にも影響を及ぼします。足の指を浮かせて歩くことが癖になり踵側に重心が乗るようになります。踵重心になると、後ろに倒れないように身体を前に屈める筋肉が働き、背中を丸めるような姿勢になります。いわゆる「猫背」の姿勢になり、骨盤は後傾します。
骨盤が後傾すると、大腿骨は外旋(太ももが外側を向く)しやすくなり、足の外側に体重がかかるようになります。そして、ふくらはぎや太ももに余分な負荷が加わり、脚が太くなる原因にも繋がります。
外反母趾の予防と対策
外反母趾の予防・対策としてテーピング法や専用の靴下などが普及しています。また、日常生活の中でも意識的に取り組むことで、対策・予防につながるものがあります。
・正しい姿勢、正しい重心で歩くこと
普段から足裏を意識し、自分の重心がどこにのっているか、歩くときには、重心が踵から指にきちんと移動して歩けているか、足裏に意識を向けることが大切です。
・足裏をしっかりとストレッチ・マッサージすること
指1本1本がきちんと動くことにより足裏のアライメントが整うようになり外反母趾の予防・改善にもつながります。
・日常生活に運動を取り入れること
現代人は、歩いたり走ったりする機会が少なくなっており、運動が不足しています。また、デスクワークのような運動量が少ない仕事では、踵体重でいる時間が長くなります。すると、常に骨盤が後傾したままになるので、次第に骨盤の動きが悪くなり正しい姿勢がとりにくくなります。
このように、身体を構成する骨や筋肉は、使わない分衰えていきます。外反母趾も普段の身体の使い方によって知らず知らずのうちに少しずつ変形が進んでしまいます。気付いた時には大きく変形してしまい手術が必要になる場合があります。心当たりがある場合や、足の痛みがなかなか治らないというときは、早めに対処・改善する必要があります。