その他体に関すること

日常生活では欠かせない股関節の働き

股関節は、私たちの「歩く」「座る」「立つ」という動作の中で力を発揮しています。歩くときに足を前に振り出すための力を出したり、体幹部分を支ることで立つ姿勢を可能にしたりしています。
股関節を構成する骨盤や、周辺の骨格について理解し、日常的な動作をより楽に行うためのヒントを得ることができます。
 
 股関節の位置と見極め方
股関節の正しい位置を知っていますでしょうか。人によって足の付根を指す人もいれば、漠然とした場所しか知らない人もいるでしょう。
股関節の位置を正しく知ることで、歩いたり立ち上がったりする動作が容易になります。
まず、股関節の位置に手を当ててみてください。すると、「大転子」と呼ばれる大腿骨の一部を触れることがあります。大転子とは、太ももの付け根の最も外側に出ている部位を指します。実は、この場所は正確な股関節の位置ではありません。
では、股関節の正しい位置はどこでしょうか。
股関節は、大腿骨の大腿骨頭(骨の先端)と骨盤にある寛骨臼(臼状になった骨の受け皿)で構成された関節です。この大腿骨頭は、内側に向いています。そのため、股関節は身体の外側ではなく、内側にあります
股関節の位置を自分で確認する方法があります。最初に大腿骨の大転子の位置を確認し手を当てます。大転子は、足を上げ下げした時に、外側に出っ張る部分です。
大転子の位置から、手をおへその位置に向かって内側上方に動かしていき、鼠径部(足を曲げた時に折り目になる部分)と交わる辺りに股関節があります。
 日常生活での姿勢や歩行
日常生活で股関節が深く関係するのは、姿勢や歩行です。私たちにとって楽な姿勢や楽な歩き方は、股関節にとっては必ずしも良いものとは限りません。むしろ、股関節にとって悪い影響を及ぼしていることもあります。
例えば、中殿筋という骨盤と大腿骨をつなぐ筋肉があります。中殿筋の働きが十分でないと、歩行や立ち姿勢で骨盤がぐらぐらと傾き、安定しません。
立っている姿勢では、体重の3割から4割の重さが片側の股関節にかかります。更に歩行時において片側の股関節には体重の3倍ほどの負荷がかかります。このとき、前述の中殿筋などの筋肉が十分に働いていないと、その大きな力が骨盤や他の身体の部位にかかってくるのです。
こうなると、股関節には大きな負荷がかかり、長年に渡っこのような誤った使い方をしていると、将来的に「変形性関節症」となるような障害を招くこともあります。
 股関節を構成する筋肉
股関節周辺の筋肉で代表的なものが「ハムストリングス」と「大腿四頭筋」です。ハムストリングスは、太ももの裏側についている筋肉であり、「大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋」という筋肉の総称です。
ハムストリングスは股関節を構成している坐骨と、膝関節を結ぶように付いています。
ハムストリングスは股関節を伸展(足が伸びる)し、膝関節は屈曲(膝が曲がる)させる働きがあります。
ハムストリングスを鍛える筋力トレーニングを行う際は、股関節が伸展し、膝関節が屈曲する方向に負荷をかけて筋力トレーニングを行います。
反対にハムストリングスのストレッチは、股関節を屈曲し、膝関節を伸展するメニューを行います。これは、前屈のような動作が該当します。
ハムストリングスとは対照的に、大腿四頭筋は太ももの前面についている筋肉です。「大腿直筋・外側広筋・中間広筋・内側広筋」の4つの筋肉で構成されています。この中の多くの筋肉が大腿骨と膝蓋骨(膝のお皿になっている骨)を結ぶようについています。
大腿四頭筋はハムストリングスと表裏の関係にあります。そのため、大腿四頭筋が収縮しているときは、ハムストリングスは緩んでいます。このとき、股関節が屈曲して膝関節は伸展します。
ハムストリングスと大腿四頭筋にはこのような関係があるので、筋力トレーニングやストレッチをする際は、お互いバランスよく行うことが大切です。
 股関節の深部にある筋肉
先述の筋肉は、足を曲げたり伸ばしたりするときに使われる比較的大きな筋肉です。その他にも股関節にも、細かい筋肉があります。それが「深層外旋六筋」です。これらの筋肉は骨や関節に近い部分にあるので、外側からみてわかる筋肉ではありません。
しかし、この深層外旋六筋は股関節を固定し、姿勢を支持する役割を果たしています。特に股関節は、「外旋(あぐらの動き)によって安定性が高まる」と言われています。その外旋の動きを作るのがれらの外旋六筋なのです。
また、深層外旋六筋の一つである「梨状筋」の近くには坐骨神経が通っています。この梨状筋の動きが悪くなることで、坐骨神経痛を引き起こす原因となることもあります。
このように、股関節の周りには多くの筋肉がついています。そして、それぞれの共同作業によって色々な動作が成り立っています。股関節に関わる筋肉や関節が、どのような役割を果たしているのかを理解することが、日常的な動作をより楽に行うために役立ちます。