筋肉が働き、骨を動かすことで私達の身体は運動したり姿勢を保たったりできます。その骨と骨の間にある組織が関節です。普段関節について深く考えることは少ないでしょう。
しかし、関節の構造や、役割を理解することは、プロのアスリートが自身のパフォーマンス向上させるためにはもちろんのこと、健康に気を付けてウォーキングやジョギングをされている方にも、より深い知識を得るのに役に立ちます。
関節の構造
私達が身体を自在に動かすには、筋肉が働き、骨が動き、関節が骨の動きをサポートする必要があります。
関節はいくつもの組織の集合体です。例えば関節軟骨や滑液は、骨同士が衝突することを防ぎ、滑らかに動くために作用しています。それらを含めた関節全体を包んでいるのが関節包で、その外側には靭帯があります。
靭帯は骨と骨を結びつけて離れないようにしています。靭帯は薄く硬い丈夫な衝撃吸収材のようなもので、筋肉のように自由に伸び縮みする伸縮性は持ちません。
関節の役割
次に、関節の働きについて解説します。関節の担う役割は、大きく以下の2つです。
・動きの支点となり、力を伝える
・力が伝わる角度と方向をコントロールする
関節の役割を理解するための例として、肘を曲げる動作を考えてみましょう。
動きの支点となり、力を伝える
肘を曲げるときには、上腕骨(肩から肘までの骨)に付いている上腕二頭筋(力こぶを作る筋肉)が収縮します。上腕二頭筋は肘から先の前腕に付いています。もし関節がないとしたら、前腕はそのまま上腕二頭筋が収縮した方向にずれてしまいます。
前腕が関節によって上腕骨と結びついているからこそ、肘を曲げるという動作が発生します。またその動きは関節が支点になっています。
そして支点となる関節のかみ合わせが悪かったり、滑りが悪かったりするとどうでしょうか。油が切れてタイヤの滑りが悪い自転車のように、いくらペダルを漕いでも進まなくなってしまいます。つまり、関節の機能が低下しているとうまく力を伝えられないことがわかります。
機能が低下している関節が力のロスを無くせば、100%の力を伝えることができます。ただ、関節の力のロスが大きくなると、余分な力を筋肉で生む必要がでてきます。?
例えば100の力を出す際に、Aという大きな筋肉とBという小さな筋肉を使うとします。AとBの間には関節があります。?関節で20の力のロスがあれば、Aで120の力を出すか、Bで20の力を加えて出す必要がでてきます。
この余分なエネルギーを出すことを繰り返し行うことで、特定の箇所に疲労がたまり
やすくなります。その結果、使われすぎた筋肉を傷めてしまうことにつながるのです。次は、骨が動く角度と方向を決定する要因についてみていきます。
力が伝わる角度と方向をコントロールする
動作が起こる角度と方向は、関節がコントロールしています。それは骨と骨の構造が、動く方向と角度を規定しているからです。骨と骨の間の構造のことを関節面といい、それぞれの関節で違った構造をしています。
例えば、肩や股関節は「球関節」、足関節(足首)は「鞍関節」、指は「蝶番関節」といったように関節面の形によって名前がついています。その形によって、円の運動・スライドする運動・曲げ伸ばす運動と、動ける範囲が決まってきます。
先ほどの肘を曲げる例に戻ります。肘の関節面(上腕骨と尺骨の関節)は「蝶番関節」となっています。ドアなどに使われる蝶番の名の通り、固定部分を軸として一方が動く(肘だと曲げ伸ばし)ことができる関節です。
他の関節をみてみましょう。肩関節は「球関節」といい受け皿になる部分と、それにあう丸い形の骨の組み合わせによって構成されています。その構造から肩関節は人の身体の中でも可動範囲が大きい関節です。さまざまな筋肉・腱・組織が連動して動く箇所でもあるため、関節にまつわる傷害が多い場所でもあります。
このように、関節は力を伝達する役割とともに、その伝達の方向も決めています。筋肉で生み出された力を有効的に使うには、関節の機能を無視することができません。?「パワーを付けたい」「スピードを上げたい」という方は、筋力だけではなく、関節の状態と正しい動かし方についても一度目を向けてみてください。