施術やトレーニングの効果を上げるために必要なことはなんでしょうか。知識・理論を学ぶことはその一つですが、「施術者自身の身体の状態を整えること」が何より大切です。
では、「自分自身の身体が整った状態」とはどのような状態でしょうか。その内容を述べたうえで、あなた自身の身体が整うことのメリットについて説明していきます。
自分の身体が緊張していない状態とは
「施術者自身の身体が整った状態」とは「自分の身体が緊張していない状態」のことを指します。
施術を行っているあいだ、相手の身体は刻一刻と変化しています。その変化を感じとるためには、自分の身体が刺激に対して適切に反応できる状態を作る必要があります。そのためには、施術者の身体が緊張していないことが大切です。なぜなら、身体が緊張してしまうと、刺激を感じ取りにくくなってしまうからです。
例えば、ベッドに横たわってリラックスしている自分を思い浮かべて下さい。目をつぶって深呼吸をしていくと、服と身体がこすれる感覚や呼吸をしたときの胸の広がりを感じられると思います。
一方で、全力で力を出しているとき(例えば重い荷物を持ち上げているとき)には、先ほどのような皮膚感覚や身体の動き方について感知しにくくなります。
では、この自分の身体の緊張がない状態が実現できると、どのようなメリットがあるのでしょうか。そのメリットは3つあります。
・微妙な力加減が可能になる
力が入っている状態は、力加減を細かく行うのに適していません。試しに全身をギュッと固めるように、お腹や肩に思い切り力を入れてみて下さい。そのまま、目の前にあるものを取り、おでこの前まで持ってきて下さい。ギクシャクしたロボットのような動きになってしまうと思います。このように、無駄な力が入っている状態では繊細な動きができなくなります。
相手の身体の変化に合わせて微妙な動かし方を実現するには、うまく脱力していることが欠かせません。その瞬間ごとに相手を動かす適切な方向や強さを選択できるのは、自分の身体の緊張が取れているからこそできるものなのです。
・姿勢が良くなる
自分の身体の緊張が取れていくと、姿勢にも良い影響を及ぼします。姿勢の良し悪しは、相手に与える印象に影響します。
「胸が張れていて、軸がスッと天井に伸びているような堂々とした姿勢のトレーナー」と「猫背気味で顔が地面を向きどこか暗い印象のトレーナー」では、どちらに教わりたいか、その答えはすぐに出ると思います。もしあなたがより良い印象を与えたいという場合は、自分の姿勢についても気にかけてみましょう。
なお、姿勢の悪さは特定の筋肉の緊張が原因の一つです。例えば、胸の筋肉である大胸筋・小胸筋の緊張は肩を前に引き出し、猫背の姿勢になります。このような筋肉の緊張を取っていくことで、自らの姿勢を良くすることができます。
また、前述の大胸筋・小胸筋に加え、呼吸を助ける肋間筋、頚椎(首)周りの筋肉、大腰筋を始めとする骨盤周りの筋肉の固さなど、姿勢の悪さの原因となる要因は全身にあります。これらの不具合に対して、自らの姿勢を改善していくことは、そのままお客様へのサービス向上につながります。
自分の身体を通して、それらを一つ一つを解消してくことで、より説得力のある案内ができるようになります。
・デモンストレーション能力が高まる
デモンストレーションは、自らが見本となり、動きや使い方について説明することです。正しい動き方やより効率的な身体の使い方を例示するときに有効です。
見本となる動きを相手に見せる際に、見本の人間の身体が十分に動いてないと、相手はどう感じるでしょうか。悪い動き方はそのまま相手に反映されます。最悪の場合、その動きが原因となって傷害を招くこともあります。そのためにはまず、自分の身体を脱力させ、筋肉の余計な緊張がない状態を作り出すことが必要です。
その状態ができて初めて、筋肉や関節を最大限に使うことができ、制限のない本来の動きが可能となります。
ここまで、自分の身体の緊張がないことのメリットについてみてきました。施術者の身体の状態が、実際の施術やトレーニングの効果に影響することを認識し、自分の身体を整えてみてはいかがでしょうか。