痛み・疼痛

肩関節周囲炎・五十肩で肩の痛みの原因となる筋肉:上腕二頭筋

肩の痛みは、整形外科を受診する人の中でも多い症状です。患者さんが訴える肩の苦しみには、主に2つあります。1つは「肩が動かない」であり、もう1つは「肩が痛い」というものです。
以上のような症状のほとんどは、「五十肩」と診断されます。五十肩という名前は、病態が明らかではない場合に使用されます。つまり、五十肩になる原因はわかっていないということです。
しかし、痛みや動きの制限を治療する場合には、その症状の原因を明確にする必要があります。原因がはっきりしていないと、治療はできないからです。
また、肩関節における疼痛には、上腕二頭筋が関わっていることが多いです。そこで今回は、肩関節の痛みの原因となりやすい「上腕二頭筋」について解説します。
 上腕二頭筋とは
上腕二頭筋は、上腕の「力こぶ」として知られる筋肉であり、主に肘を曲げるときに働きます。肘の動きに関与する筋肉ですが、実は肩関節にも深く関係しています。
上腕二頭筋は、肩関節の上方に始まり、肩関節の前方をおおうような形で走行します。その後、そのまま上腕の前方を肘に向かって走り、肘関節の前面に付着します。このような解剖学的特徴から、上腕二頭筋には肩関節を安定させる作用があります。
肩関節は、上腕骨と肩甲骨をつないでいます。肩関節に関係するものとして、「肩が外れる」という言葉があります。これは、上腕骨頭(上腕骨のうち半球状の部分)の位置の変位が大きい状態を指します。
また、肩関節を構成する上腕骨は、もともと前方に脱臼しやすくなっています。そのため、肩関節の前方には、関節が外れないようにするための組織があります。
そのうちの1つが、上腕二頭筋になります。そのため、上腕骨頭が前方にズレると、上腕二頭筋に上腕骨頭が寄りかかるような形になります
つまり、肩関節の安定性低下や肩関節周りの筋肉バランスの問題で、上腕骨頭の変位が生じると、上腕二頭筋に負担がかかるということです。
 上腕二頭筋に由来した肩の痛みの特徴
上腕二頭筋は、肩関節の安定性に関与しています。そのため、安定性が低下してしまうと、過剰な負担が強いられます。先ほど述べたように、上腕二頭筋は肩関節の前方を走行しているため、肩の前方に痛みを感じます
また、ダンベルを用いた肘や肩の運動など、上腕二頭筋の収縮を強制させるような動作は疼痛を誘発します。さらに、腕を体の後ろに伸ばすような動きも、上腕骨頭の前方変位を強くするため、痛みが出ます。
上腕二頭筋は、他にも前腕を捻じる動きに関与します。とくに、肘を曲げた状態で手のひらを上に向けるような動作での痛みは、上腕二頭筋由来の疼痛に特有の症状です。
以下に上腕二頭筋の痛みの特徴をまとめます。
・肘や肩に力が入る動作で痛みが出る
・鍵を開けるときなど、前腕を捻じる動きで痛みが出る
・後ろに手を伸ばす動作で痛みが出る
このような症状がある場合は、上腕二頭筋による痛みの可能性が高いです。
以上のように、上腕二頭筋は、肩と肘をまたぐ筋肉であるため、肘の動きでも肩の痛みを誘発します。一般的には「力こぶ」として知られる上腕二頭筋ですが、実は肩関節の痛みの原因となっていることが多いのです。