痛み・疼痛

大腰筋と腰痛の関係性:大腰筋の緊張による腰痛の特徴

腰痛は、日本人の大半が経験する症状の一つです。メディアでもよく取り上げられ、「体幹を鍛えた方が良い」「大股でのウォーキングが良い」などさまざまなことが言われています。
腰痛の原因の多くは、「椎間板」や「椎間関節」といった関節部分にあります。また、一般的によく言われるように、筋肉によって腰痛が引き起こされるのも事実です。そして、その代表的な筋が「大腰筋(だいようきん)」になります。
そこで今回は、「大腰筋に由来する腰の痛みとその解消法」について解説します。

大腰筋による腰痛の特徴

大腰筋は、背骨の両脇につく筋肉であり、腹部の深層に位置しています。こうした大腰筋は、腰痛を引き起こす原因となります。
そこで以下に、大腰筋が原因で起こる腰痛の特徴について記します。

大腰筋とは

大腰筋は、背骨の腰の部分から始まり、股関節の前方をおおうように走行し、股関節の付け根に付着する筋肉になります。一般的には、足を持ち上げる動作に関係する筋として知られています。
また、背骨はS字状に弯曲(わんきょく)しています。首と腰の部分が「前弯(ぜんわん)」といって前方に凸、その2つの間が「後弯(こうわん)」といって後方に凸の構造となっています。
腰椎(腰の骨)の前弯を維持しているのは、大腰筋の働きだと言われています。実は大腰筋の一番大切な役割は、この「腰椎前弯の保持」になります。
つまり、大腰筋の働きが弱いと腰椎の前弯は小さくなります。また、腰椎の前弯がなくなると、大腰筋は力を発揮しづらくなります。
このように、腰椎と大腰筋は相互に関係しています。

大腰筋と腰痛の関係

大腰筋は、腰痛の原因となりやすい筋肉です。その理由は、この筋が硬くなりやすいからです。また、座った姿勢のときには、腰椎の前弯が小さくなります。そのため、イスに座る時間が長いなどの生活習慣をもつ人の場合、腰椎の前弯が減少しています。
すでに述べたように、腰椎の前弯がなくなると、大腰筋は働きにくくなります。筋肉は、力が発揮しづらくなると、過剰に収縮することで力を出そうとします。つまり、筋肉が硬くなりやすくなるということです。
このような理由から、大腰筋は硬直しやすい筋肉となっています。
また、筋肉は硬くなることで痛みを発します。筋が硬直するということは、過剰に働いているということであり、その分のエネルギーが必要になります。そのため、筋肉が硬いままではエネルギー不足になってしまうということです。
細胞はエネルギーが不足すると、エネルギーを送り込むために血流量を増やそうとします。このときに、血流量を増やすために放出される物質によって、同時に痛みが誘発されます。
以上のように、「腰椎の前弯不足→大腰筋が働きにくい→大腰筋が頑張って収縮する→エネルギー不足→腰痛」という流れで、腰の痛みが発生します。そして、腰椎の前弯は、座ることが多い生活で小さくなります。
大腰筋による腰痛の特徴は以下の通りです。
・腰を反ると痛い
・仰向けで寝ると痛い
・立っていると痛い
・歩くと痛い
腰痛と大腰筋には、このような関係があります。実際、病院でも大腰筋による腰の痛みをかかえる方は多く、大腰筋は腰痛の一つのキーワードになります。腰痛持ちで、症状が長引いている方は、大腰筋を疑ってみて下さい。

大腰筋による腰痛の解消法

このように、大腰筋(だいようきん)は、腰痛の原因となりやすい筋肉です。また腰痛は、座ることが多い生活を送っている人や体力が低下している人に起こりやすいものです。このような人の場合、腰椎の前弯(反り)は小さくなります。
そうなると、大腰筋は硬くなります。筋肉が硬くなると、エネルギーが不足します。エネルギーが足りなくなると、痛みを誘発するような物質が分泌されます。そのため、大腰筋による腰痛には「腰椎の前弯」と「大腰筋の柔軟性」の獲得が必須になります。
そこで以下に、腰椎の前弯を促通する方法と大腰筋を柔らかくする運動をお伝えします。

腰椎の前弯を促す運動

腰椎の前弯とは、簡単にいうと「腰の反り」です。そのため、腰を反るような運動を行なえば良いということです。
具体的な方法を以下に示します。
1.足を少し広めに開いて、リラックスした状態で椅子に座る
2.息を吸いながら、おへそを前に突き出すように腰を反ります。このとき、胸の張りすぎに注意して下さい。あくまで骨盤と腰を動かして背骨を伸ばします
3.力を抜いて息を吐きながら①の姿勢に戻る
4.1~3の動作を呼吸に合わせて10回繰り返します。
四つ這いでも同様に行います。
1.四つ這い姿勢になります。
2.息を吐きながら、背中を全体的に丸めるように上に持ち上げます。
3.息を吸いながら、力を抜いて背中を弓なりに反ります。このとき、体を支えている肘ができるだけ曲がらないように気をつけてください。
4.1~3の動作を呼吸に合わせて10回繰り返します。
以上の運動をどちらでもよいので、一日2回行ってください。また、このような運動を行っても、一日中背中を丸めて座っていたら意味がありません。長時間座るときは、15分に一回は体を動かすようにしてください

大腰筋のストレッチ

大腰筋は、腰の骨から股関節の付け根にかけてついている筋肉です。そのため、腰と股関節を動かすことで、筋を伸ばすことができます。しかし、私の経験からしても、腰の動きを使って大腰筋をストレッチすることは難しいです。
一般的に紹介されているストレッチも、大半は股関節を使って行うものです。ここでも股関節を動かすための簡単な運動を紹介します。
1.仰向けで足を伸ばして寝ます。
2.片ひざを両手で抱え、同側の胸に引き付けます。
3.2の状態を維持したまま、抱えた方と逆の足を伸ばしながら床に押し付けます。
4.3の状態を維持したまま、深呼吸をゆっくり繰り返す。
このとき伸張されているのは、曲げている足ではなく、伸ばしている方になります。そのため、③の「足を伸ばしながら床に押し付ける」動作がポイントになります。この動きを行わないと大腰筋はストレッチされません。
また、全てのストレッチに言えることですが、筋肉を伸ばすときは呼吸を吐くようにしてください。体は呼気でリラックスするため筋肉が柔らかくなり、効率的に伸張できます。
以上のように、大腰筋による腰痛を改善するには、腰椎の前弯を促す運動と大腰筋を柔らかくする運動を行うことが大切です。運動は単純ですが、その効果は抜群ですので、腰痛がない方もぜひ行ってみて下さい。