背骨の重要性

人の体を知るためには脊椎動物の進化を学ぶべき理由

生物の体は、さまざまな進化を遂げて、現在の構造や機能になっています。そのため、体の機能を考える上で、進化の過程を知っておくことは大切です。
人間の体の中で重要な背骨は、他の生物とは異なった形状をしています。そのため、特に背骨の進化については、詳しく知っておく必要があります。背骨の進化の過程を知ることで、背骨本来の働きが見えてくるはずです。
しかし、一般的に知られている「進化論」には、いくつかの間違いがあります。そのため、正しい進化の過程を知ることが大切です。
そこで今回は、進化論について解説します。
 生物の種類によって進化は異なる
一般的に知られる進化論の理論に、「突然変異」というものがあります。突然変異とは、ある集団の中にいる個体が、その集団の大多数の形と異なる形質をもつようになることを言います。
例えば、人間という集団では、大多数が手足は2本ずつですが、「ある人から生まれてきた赤ちゃんには、手足が3本ずつある」というようなことです。突然変異がなぜ起こるかは、さまざまな仮説がありますが、定説はないようです。
そして、この突然変異という現象は、もともと「植物で見つかった突然変異」に由来するものです。その後も、動物では、ショウジョウバエなどでは認められています。
しかし、これらはいずれも「脊椎動物」ではありません。脊椎動物とは、背骨をもった動物のことを指します。脊椎動物は、魚類と両生類、爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳類の5種類から成ります。当前、哺乳類である人間は脊椎動物に含まれます。
生命は、アメーバや細菌などの単細胞生物、カビや藻類、植物などの多細胞生物から高等動物に至るまで、たくさんの種類があります。
一般的に知られている進化論は、これらを全て同系列で考えられたものです。しかし、これには、当然、無理があります。そもそも、骨格があるかでも進化の仕方は違いますし、その骨格系の種類によっても進化の過程は異なります。
そのため、そのような進化論が人の体に当てはまるとは考えにくのです。
私は、理学療法士として、重力の影響についてよく考えます。しかし、例えば、動きが少ない植物などでは、人間と違って、重力に対する進化は起こりにくいはずです。また、体が軽い昆虫などでは、体の大きい哺乳類と比べると、重力から受ける作用力も異なります。
このように生物は、種類によって進化の過程が異なるはずです。そのため、人間の体を考える際は、脊椎動物の進化に絞った理論で、検討する必要があります。
 5つの骨格系
脊椎動物は、「骨格の程度は異なるが、骨性の脊柱をもった脊索動物」と定義することができます。つまり、軟骨か硬骨によって作られる「内骨格」を持つ動物ということができます。骨格をもつ生物は、骨格の主成分によって、以下の5つに分類されます。

植物

セルロース系骨格

ケイ藻

ケイ酸系骨格

貝類・サンゴ類

炭酸カルシウム系骨格

昆虫・甲殻類

キチン系骨格

脊椎動物

水酸化アパタイト系骨格

人が含まれる脊椎動物における骨格の主成分は、「水酸化アパタイト」です。アパタイトとは、リン酸とカルシウムから作られる鉱物です。ただし、原始的な脊椎動物では、内骨格に水酸化アパタイトが存在していません。
 脊椎動物の進化
人の体の構造と機能を考えるときは、水酸化アパタイト系の骨格を持つ、脊椎動物の進化を元に検討することが大切です。脊椎動物の進化は、以下のような順番で進化していきました。

「無顎類 → 軟骨魚類 → 硬骨魚類 → 両生類 → 爬虫類 → 鳥類 → 哺乳類」

哺乳類の定義は、「哺乳のシステム」にあります。哺乳類では、食べ物を食べる方法が、丸飲みするやり方から、歯と顎を使って咀嚼(そしゃく)をするように変化しました。
そのため、哺乳類の特徴は、咀嚼器官にあるということです。
今回述べたように、一般的に知られている進化論は、脊椎動物を元に作られたものではありません。生物にはさまざまな種類があり、それぞれ進化は異なります。そのため、人の体の構造や機能を考える際は、脊椎動物の進化について学ぶ必要があります。
また、脊椎動物の中でも、哺乳類の特徴は、咀嚼器官にあります。つまり、人の体を知る上で、咀嚼器官の進化についての知識は、なくてはならないものだということです。