腰痛は、ほとんどの人が経験する症状です。起き上がることすらできないような疼痛の人もいれば、無理に動き過ぎたときだけ痛みが出現するような人もいます。
このように、腰痛は、痛みの程度はさまざまですが、症状の出現の仕方によって、大きく2つのタイプに分けることができます。どちらのタイプかによって、腰痛の対処法が大きく変わります。
また、高齢者の多くは、腰の可動性が制限されているために腰痛が起こりやすくなっています。そのため、自分の腰痛のタイプを正確に把握し、適格に痛くなる要因を理解する必要があります。
そこで今回は、腰痛のタイプと、腰の動きが悪くなる原因について述べます。
腰痛の2つのタイプ
先ほども述べたように、腰痛は、疼痛が悪化する要因によって、大きく2つのタイプ分けることができます。
1つ目は、運動することによって疼痛が悪化するタイプです。このタイプの場合、長時間歩いたり、何かしらの運動を行ったりすると、症状が悪化します。逆に、動きを止めて休憩すると症状が落ち着きます。
「椎間関節」と呼ばれる、腰の関節部が痛む場合、このタイプに当てはまります。
そして2つ目は、安静にすると痛みが悪化し、運度することによって疼痛が軽減するタイプです。これは、「椎間板」と呼ばれる、腰の骨の間にあるクッション材の異常による症状は、このタイプに当てはまります。
また、筋肉による疼痛もこのタイプになります。
この2つのタイプのうち、前者は、腰の動きが比較的、柔軟です。一方、後者のタイプでは、腰の可動性が低下している場合がほとんどです。
椎間板の痛みと腰の可動性
そもそも、椎間板の痛みは、腰の動きが悪くなることで起こります。
基本的に、寝ているとき以外は、椎間板に体重分のストレスがかかっています。そのため、椎間板は、体重によって押しつぶされる形になります。そうなると、椎間板における血液の循環が悪くなり、椎間板が変性します。
椎間板の血液の循環は、腰に運動が起こることで促されます。そのため、腰を動かすことによって、椎間板への血液の流れが良くすると、椎間板の変性は防ぐことができます。
しかし、もともと腰の可動範囲が制限されていると、どんなに体を動かしても、腰の運動量は少なくなります。この理由として、人の体は、ある関節が制限されていると、その部位はあまり使用せず、動きやすい関節を使って動作を行う傾向があるためです。
このような理由で、椎間板性の疼痛は、腰の可動性が制限されることで生じやすくなります。
腰の可動性が制限される原因
腰骨の動きが悪くなる原因としては、「筋肉の弱化」、「体力の低下」、「活動性の低下」の3つが考えられます。
・筋肉の弱化
腰の骨は、通常、「前弯(ぜんわん)」といって前方に凸の構造をしています。前弯は、腰の筋肉によって作られます。腰骨は、骨の形状的には、前弯ではなく後弯している方が安定します。
そのため、腰の筋肉が萎縮すると、筋肉による支えがなくなるため、後弯することで、骨の形態によって腰を安定させようとします。
腰骨は、後弯すると可動性が低下します。
このような理由から、腰の動きが制限される原因の1つとして、腰を支える筋肉の弱化が考えられます。
・体力の低下
運動を行う際は、必ずエネルギーが必要になります。エネルギーを生み出す方法は、糖を使ったものと、脂肪から作り出す方法の2つがあります。このうち、脂肪を原料としてエネルギーを作った方が、体への負担は小さいです。
糖からエネルギーを作る場合は、その産生過程で「乳酸」という物質が作られます。乳酸は、老廃物であり、「自律神経」のバランスを崩します。
自律神経の不調は、背骨の硬さとなって現れます。つまり、乳酸の産生が過剰になると、結果的に、腰の可動性が悪くなるということです。
体力が低下すると、日常生活におけるエネルギー源が、糖に依存することになります。そのため、体力が落ちると、以下のような過程をたどることで、結果的に腰骨の可動性が悪くなります。
「体力の低下 → 糖によるエネルギー産生 → 乳酸過剰 → 自律神経の不調 → 腰の可動性制限」
・活動性の低下
年をとると、さまざまな理由で、活動性が低下する傾向にあります。もちろん、体力も落ちてくるため、若い時より動く量が少なくなるのは当然です。
しかし、あまりに活動性が低下すると、腰の動きは硬くなります。
腰骨は、座った状態では、自然と後弯します。活動性が低くなるということは、必然的に座っていることが多くなります。そうなると結果的に、腰骨は後弯した状態で安定し、可動性が悪くなります。
また、活動量が落ちると、運動量も少なくなるため、体力も低下します。つまり、体力低下による要因も加わります。
今回述べたように、腰の可動性が悪くなる要因は、基本的に運動不足によって起こります。そして、腰の動きの制限は、腰痛につながります。そのため、特に高齢者は、日ごろの運動量を維持することが大切ということです。