人間が地球上で生活する上で、重力の影響を避けることはできません。重力があるため、体の重さを感じますし、そのことによって関節を痛めたりします。しかし、人の体にとって、重力は欠かせないものでもあります。重力による力をうまく利用すれば、体をスムーズに動かすこともできます。
無重力環境では、体がフワフワ浮いてしまい、思ったように動くことができません。また、骨や筋肉に適度な負担がかからないため、骨はスカスカになり、筋肉は萎縮します。
しかし、人間は二足歩行を獲得したことによって、必要以上に重力の影響を受けるようになりました。そのことが多くの病気を引き起こすきっかけにもなっています。
そこで今回は、重力の体への影響を説明した後、子供が睡眠をとることの重要性を述べます。
重力の体への影響を理解する
重力は、体を動かすためには必要不可欠なものです。しかし、冒頭でも述べたように、人間は二足歩行を獲得したために、重力の影響を強く受けるようになりました。
猫や犬などの動物は四足歩行を行います。四足歩行では、体重を四点で支えるため、安定しています。また、それだけでなく、頭の位置が地面から近い位置にあるため、体のブレも大きく起こらないため、バランスが崩れることが少なくなります。
さらに、頭の位置が高くなると、「位置エネルギー」も大きくなります。
物体がある位置にあるときに、その物体自身が持つエネルギーを位置エネルギーと言います。位置エネルギーの大きさは、その物体の「位置」と「重さ」で決まります。また、物体の重さは重力によって作られます。
そのため、二足歩行である人間の体には、地球上の重力の影響が大きくかかるということです。
そして、人間の体で、重力の影響を一番受けるところは「関節」です。重力によって生まれた体重は、ひざや腰、足といった各関節部の負担となります。
特に子供は、骨格を支える筋肉が発達していないため、そのような影響を強く受けます。
関節では、体の免疫に関わる「白血球」という細胞が作られています。免疫とは、体内に異物が侵入した際に起こる防衛反応です。そのため、免疫機能が低下していると、さまざまな病気にかかりやすくなります。
そのため、重力の影響で関節が破壊されると、白血球の産生が悪くなり、結果的に免疫機能が低下してしまいます。関節の問題としては、変形性関節症などが知られています。しかし、関節によって起こる弊害は、このような側面もあるのです。
このような理由から、人間が生きていく上で重力は必要ですが、過剰な重力は体の害になってしまいます。
睡眠によって重力を取り除く
過剰な重力を取り除くための一番の方法として、横になることが挙げられます。先ほど述べたように、人間は、二足歩行になったため、重力の影響を必要以上に受けることになりました。そのため、臥位(がい)になることで、重力の作用を小さくすることができます。
人間は、夜に寝ているとき以外は、ほとんど体を起こした状態であり、重力の影響を強く受けています。そのため、関節への負担は大きくなり、結果的に免疫機能が低下します。
しかし、このような関節への影響は、夜にしっかり眠ることで回復します。睡眠は、関節への重力の影響を取り除くだけでなく、日中に負担がかかり、生じてしまった関節の変化(障害)を回復させる働きもあります。
体の組織が修復するためには、新陳代謝が適切に起こっている必要があります。そして、組織が回復するための新陳代謝は、心臓や脳、筋肉が休んでいるときに活発になります。
体を横にすることで、筋肉は弛緩し、血圧も低下します。また、ぐっすり眠ることで、脳も休まるため、新陳代謝が活発になります。その結果、夜寝ている間に、日中に傷ついた関節の修復が行われるということです。
さらに、脳は休んでいるときに、発達が盛んになります。そして、子供は、大人に比べて脳の成長が著しいです。そのため、子供は大人以上に睡眠時間が必要になります。
このように、体の回復や脳の発達には、最低8時間の睡眠時間が必要と言われています。子供に至っては10時間以上確保することが推奨されています。
しかし、成人は通常の生活をしていると、8時間の睡眠を確保することは難しい場合が多いです。そのような場合は、休憩中などに、少しでも横になることで、重力の影響を取り除く時間を作ることが大切です。
今回述べたように、重力は関節への負担を大きくします。そして、関節は免疫機能を担っているため、過剰なストレスは、結果的に免疫機能の低下につながります。
病気の多くは、免疫機能が弱くなることで生じます。健康な体を維持していくためには、日頃から十分な睡眠をとることで、関節の障害が起こらないように回復させておくことが大切です。睡眠には、このような体への影響もあることを知っておいてください。
また、特に子供は、筋肉の発達が十分でないことと、脳の成長が著しいため、睡眠不足の影響を大きく受けます。そのため、小さいころから早く寝る習慣をつけ、睡眠時間を確保しておくことが大切です。