姿勢を正すことは、いつの時代でも体にとって良いこととして認識されています。そのため「背筋を伸ばしなさい」、「胸を張りなさい」という言葉は、よく使われる言われるものです。
しかし、本当に背中を伸ばすことや、胸を張ることは体にとって良いことなのでしょうか。
確かに背中が伸びていると、姿勢が良く見えて、格好も良いです。特に女性は、背中が曲がっていると見た目も悪く見えます。ただ、むやみに形だけのキレイさを求めると、かえって健康に弊害を及ぼす可能性があります。
そこで今回は、姿勢について解説します。
背骨はS字状に弯曲している
通常、背骨はS字状に弯曲しています。首と腰の部分は、前方に凸の形状をしており、「前弯(ぜんわん)」しているといいます。一方、胸の部分は後方に凸の形をしており、そのような形態を「後弯(こうわん)」と言います。
このようなS字状の形をしており、背骨を支えるための筋肉やそれぞれの関節に柔軟性があることで、さまざまな役割を果たします。
例えば、体に衝撃が加わると、背骨のS字状構造がバネのように働くことで、その力を吸収します。背骨が外力を柔軟に受け取ることで、ひざ関節や肩関節などの末端の関節にかかる負担を小さくします。
また、背骨は体の中心にあります。そのため、四肢の運動には、わずかですが、必ず背骨の動きが伴います。もし、背骨の動きが制限されていると、四肢の関節は必要以上に動く必要が出てきます。
そのため、背骨はS字状に弯曲しており、柔軟であることが大切だということです。
背中を伸ばすと背骨が硬くなり、弯曲が小さくなる
一般的に言われるように、「胸を張り背中を伸ばす」と、背骨は、正常では後弯している胸の骨の部分が、真っ直ぐなります。
さらに、背中を伸ばすということは、背骨の周りの筋肉に力をいれるということです。そのため、背骨は、結果的に筋肉を硬くしてしまい、柔軟性が無くなります。
このような姿勢は、一見すると、見た目は良いですが、体の機能としては問題があります。
先ほど述べたように、背骨はS字状に弯曲しており、柔軟性があることで、さまざまな機能を発揮します。
背骨が硬く、真っ直ぐな状態であると、四肢の関節にかかる負担が大きくなります。その結果として、「ひざ」や「肩」、「手」、「四肢末端」などの関節の痛みや可動域制限につながります。
つまり、意識して胸を張ることで、背中を伸ばすことは、体を痛めるきっかけになるということです。
骨盤と腰から伸ばす
そうは言っても、背中が丸くなっていることは問題です。そのような場合、胸の高さではなく、腰と骨盤から姿勢が崩れていることがほとんどです。
先ほど述べたように、通常では、腰は前弯しています。また、腰骨の下にある骨盤は、「前傾」という状態にあります。前傾と反対は後傾といいますが、力を抜いて座っている時は、骨盤は後傾しています。つまり、後方に倒れているイメージです。
つまり、前傾とは、骨盤が起きている状態のことを言います。そして、骨盤が前傾していると、腰骨は自然と前弯します。
胸を張って背中を伸ばすと、通常では後弯している部位を、無理やり前弯方向に動かすことになります。これは、体にとっては不自然な動きです。しかし、骨盤と腰骨から前傾と、前弯を促すことで、姿勢を良くすることは、体にとって自然な動きになります。
そのため、姿勢を正す時は、胸を張るのではなく、骨盤を起こすことを意識することが大切です。
特に、デスクワークなどで、1日中座っている人は、骨盤が後傾しやすい傾向にあります。そのため、日ごろから意識して、骨盤と腰骨を伸ばすような運動を行っておくことが重要です。
今回述べたように、背中を伸ばして姿勢を正すことは、悪いことではありません。しかし、伸ばす部位を間違うと、体を痛めるきっかけになります。
姿勢を正すときは、骨盤から意識して背中を伸ばすようにして下さい。