背骨の重要性

赤ちゃんと成人の違いを知り体の構造を深く学ぶ:言葉の獲得

胎児は、生物の進化と同じ過程を経て誕生します。これは、「個体発生は系統発生を繰り返す」という言葉で表されます。
そして、多くの人は、「赤ちゃんは完全な人間として生まれてくる」と考えています。
しかし、実際はそうではありません。赤ちゃんは、完全な人間としての体の機能を持っておらず、成人と同じような生活を送ることはできません。実際に、人間と同じような特徴を持ち始めるのは、生後1年を過ぎた辺りからです。そして、2歳半くらいまでにやっと人間の性質を持った子供になります。
そのため、その時期の育て方には注意が必要です。また、育て方を間違えると、その後の体の健康にも影響してきます。
そこで今回は、生後1年までの赤ちゃんの特徴について解説します。
 赤ちゃんの体の特徴
生後1年までの赤ちゃんと大人の一番の違いは、赤ちゃんは、「呼吸をしながらおっぱい飲むことができる」ということです。
これは、人間以前の哺乳類にできて、人間にできないことと同様です。
赤ちゃんは、乳首や哺乳瓶に吸いついて、数分間、息継ぎもせずに、お乳を飲み続けます。これは、大人にはできないことです。
なぜなら、大人は、食べ物や飲み物を飲み込む時に、息を止める必要があるからです。
人の体には、食道と気管があります。口から胃へつながっているのが食道で、鼻から肺に続いているのが気管です。つまり、食道は食べ物を通すものであり、気管は空気が通過するところです。
成人の場合、この食道と気管が喉(のど)の部分でつながっています。そのため、食べ物を食べた際は、息を止めることで気管を閉め、食べ物が気管に入らないようにします。
一方、赤ちゃんの場合は、食道と気管がきちんと分かれています。そのため、食道と気管が、それぞれの働きを同時に行うことができます。このような理由で、赤ちゃんは、乳を飲みながら呼吸をすることができるのです。
赤ちゃんの身体は、外見上は人間のように見えます。しかし、身体内部は、サルのような、人間以外の哺乳類のグループと同じということです。
これが、赤ちゃんが人間とは言えない理由です。
 言葉の獲得による変化
このような身体構造は、言葉の獲得に合わせて変化します。
言葉は、成長した人間のみが使えるものです。人間は、言葉の獲得のために、他の哺乳類とは異なる喉の構造に変化したということです。
声は、肺にある空気を、鼻ではなく口へ向かって吐き出すことで発することができます。つまり、人が言葉を発するためには、空気の通り道である気道と、口へと続く食道が、つながっている必要があります。その交差点部分が喉になります。
もし、食道と気管がつながっていないと、言葉を発することはできません。動物などが唸るのは、一時的に、無理やり気管と食道をつなげ、喉から口に空気を送り出すことで可能となります。
この作業は、喉を強く緊張させ、その状態で運動させることで達成されます。そのため、とても努力が必要であります。あくまで特別な、非常時にのみ行うものです。これは、赤ちゃんでも同様です。赤ちゃんが泣くときも、全身に力を込めるほど大変な作業を行っているのです。
今回述べたように、赤ちゃんは、食道と気管がつながっていないという点で、成人の体の構造とは異なっています。このことは、赤ちゃんが言葉を発せないという理由にもなります。
さらに、このように身体の構造が変化したため、人間が口で呼吸をできるようになりました。そして、人は口で酸素を取り込めるようになったため、多くの病気を招く要因をまねきました。そのため、今回述べたような、人間の体の変化について知っておくことはとても大切です。