人間は哺乳類の一種です。そのため、哺乳類について学び、体の健康に活かすことは有益です。そこで、哺乳類における、赤ちゃんの自然な生育過程を知ることは大事です。
そのような学びから、適切な人間の赤ちゃんの育て方は、まだ人間に至っていない、「人間以前の段階」に鍵があることが分かります。
このことを理解しておかないと、誤った育児を行ってしまいます。そして、それが結果的に、病気にかかりやすい体を作ってしまうのです。そのため、体の健康を考えるためには、赤ちゃんの頃からの育て方が大切ということです。
そこで今回は、生まれる前の段階である、胎児の成長について解説します。
胎児の成長は進化の過程
胎児は、約10カ月の期間を経て誕生することは誰もが知っている通りです。精子と卵子が出会い、受精卵になることで妊娠します。そして、その受精卵が次々と分裂を繰り返すことで、胎児に成長します。
胎児の体は、初めは稚魚のような形をしています。それが、「十月十日」の妊娠期間で、少しずつ人間の姿に変化していきます。
そしてその変化の様式は、人間の祖先が原始生命として生を受けてから現在の哺乳類に進化する過程と同じようになっています。つまり、胎児は約10カ月で、五億年の進化の過程をたどっているといえます。
こうした現象は、「個体発生は形態発生を繰り返す」という言葉で表されます。
生物の進化は、「原始魚類 → 古代魚類 → 両生類 → 爬虫類 → 哺乳類」という過程で、現在の哺乳類まで至ります。胎児は、受精後約30日で魚類になり、その後、両生類になり手足が生まれ、爬虫類、哺乳類と変化します。
悪阻(つわり)とは
妊娠中、多くの妊婦さんが「悪阻(つわり)」を経験します。これも、胎児の成長と大きく関係します。
悪阻は、妊娠初期に起こります。この時期は、生物の進化の過程でいうと、約四億年前と同じ時になります。四億年前は、地球上で気候と地形の大変動があった時期です。生物は海が浅くなることで、海中から陸上に取り残され、陸の上での生活を余儀なくされます。このときは、大きな環境変化と生物の生活様式が変わった出来事があります。
そのような変化に対応するために、その時代の生物である古代魚は、呼吸様式がエラ呼吸から肺呼吸へ進化させました。その結果、生物は陸上で生活できるようになりました。
肺呼吸は、古代魚が「のたうち回る」ことによって、血圧が上昇したために獲得できました。魚が水中から出されたときを想像するとわかりやすいと思いますが、ものすごい苦しみを経て、この時期を乗り越えるのです。
また、生物は上陸することで、重力の影響を受けるようにもなりました。
そしてこの時期が、胎児でいうと、妊娠初期の三十二日から三十八日の六日間にあたります。つまり、悪阻が起き始めるタイミングです。
胎児も、古代魚と同様に、ものすごい苦しみを経験しているのです。実際、胎児にも息が絶え絶えの状態を体験し、一歩間違うと死んだり、奇形が起こりやすい時期とも言えます。
そのような壮絶な胎児の体験を、母親は悪阻という形で共有していると考えられます。
また実際、この時期には、胎児の身体機能にも大きな変化が起こっています。具体的には、「免疫システム」や「造血システム」、「自律神経系」、「体壁筋肉系」が著明に変わります。
胎児もこの過酷な時期を乗り越えることで、一歩一歩人間へ近付いているのです。
ちなみに、悪阻は、母胎における血液の酸素不足で強まります。そのため、腹式呼吸を行い、腸内を冷やさないようにすると、母胎への酸素供給が増えるため、悪阻の症状は軽減します。
今回述べたように、胎児は、生物の進化と同じような過程を経て、誕生します。そのことから、悪阻という現象も、なぜ起こるのかを理解できます。そして、胎児の体の変化を知っていると、誕生時の体の状態もわかるようになるため、適切な育て方を実行することができます。
「個体発生は形態発生を繰り返す」ということを、しっかり頭に入れておいてください