女性の病気

エストロゲンの種類と特徴を知り、生理周期、排卵との関係を学ぶ

女性ホルモンの1つとして、「エストロゲン」があります。エストロゲンと、もう1つの女性ホルモンである「プロゲステロン」とが相互に働くことで、とくに女性の性機能に大きく関係します。これらはともに、コレステロールを原料として作られるものです。
そして、エストロゲンとプロゲステロンは、子宮や腟に対して、お互いに拮抗する形で作用し、乳腺に対しては、お互いに協調して働くという特徴があります。
また、エストロゲンには種類があり、年齢によってその役割が異なります。
そこで今回は、エストロゲンの種類と分泌調整について解説します。
 エストロゲンの種類
女性ホルモンであるエストロゲンには、「エストロン(E1)」、「エストラジオール(E2)」、「エストリオール(E3)」の3つがあります。時期によって、主に分泌されるものが異なります。
E2と呼ばれるエストラジオールは、閉経前の主要なエストロゲンです。エストロゲンの中で最も活性が強く、通常、検査で測定される血中エストロゲンの主成分です。性成熟期においては、エストラジオールが、全体の約60パーセントを占めており、残りがエストロンになります。エストラジオールは、主に卵巣で作られます。
E1と呼ばれるエストロンは、閉経後の主要なエストロゲンです。主に脂肪組織で作られますが、一部は卵巣でも合成されます。
そして、E3と呼ばれるエストリオールは、妊娠時に産生、分泌されます。
これらは、作用は類似していますが、その作用力が異なります。最も生理活性力が強いのがエストラジオールであり、その後にエストロン、エストリオールと続きます
エストロゲンの主な作用は、以下の通りです。

乳房

・乳管の発育

・乳汁分泌抑制

子宮

・子宮内膜の肥厚、増殖

・頚管粘液の分泌増加、粘稠性低下

・子宮筋の発育、肥大

・腟粘膜の角化、肥厚

肝臓

・善玉コレステロール上昇

・悪玉コレステロール低下

血管・血液

・血管拡張

・抗動脈硬化

・凝固能亢進

・骨量の維持

・コラーゲンの合成促進

皮膚

・皮脂腺の分泌抑制

・コラーゲンの合成促進

 エストロゲンの分泌調節
エストロゲンは、分泌調整のメカニズムにも特徴があります。
多くのホルモン分泌の調整は、「ネガティブフィードバック」によって行われます。これは、あるホルモンの濃度が変化すると、体がその変化を感知し、ホルモン分泌を調整している脳などの他の器官の働きを抑制することで、ホルモン濃度を調整するというものです。
例えば、エストロゲンの血中濃度が高くなったとします。その情報は、脳のエストロゲン分泌を調整する「視床下部」と呼ばれる場所の活動を抑制します。そうすると、視床下部からの指令が少なくなり、結果的に、エストロゲンの分泌が低下するということです。
エストロゲンの放出は、濃度が一定範囲であれば、ネガティブフィードバックによって調整されます。しかし、血中濃度が一定以上になると、「ポジティブフィードバック」が起こり、さらに分泌が増大します
ポジティブフィードバックは、ネガティブフィードバックとは違い、ホルモン分泌を調整する器官の働きを促進します。エストロゲンでは、その濃度が一定量異常になると、視床下部や下垂体にポジティブフィードバックが行われ、さらに放出が促されます。
このことを「LH(黄体形成ホルモン)サージ」といい、排卵を誘発する反応です。このLHサージが刺激となり、プロゲステロンの分泌が促され、黄体期に入ります。
今回述べたように、エストロゲンには種類があり、時期によってその分泌は異なります。また、種類によって生理活性の強さが違い、それぞれの時期に適したホルモン変化が起こっていると考えられます。
さらに、エストロゲンの分泌調整は、ネガティブフィードバックとポジティブフィードバックの両方で行われています。このことで、一定範囲の濃度を保つと同時に、排卵という妊娠・出産にとって必要な体の反応が引き起こされています。
このことからも、体には自然治癒力が働いており、全てが複雑なシステムで調整されていることが分かります。