子宮腺筋症は、女性に特有の疾患の中でもあまり知られていないものです。この病気では、子宮内膜様組織が子宮筋層に侵入し、月経に影響を及ぼします。また、子宮内膜症と類似しており、その鑑別が大切です。
そこで今回は、「子宮腺筋症の原因」と、「子宮腺筋症と子宮内膜症との違い」について述べます。
子宮腺筋症の原因
子宮腺筋症とは、何らかの原因で、子宮内膜様組織が子宮筋の中に浸潤し、それが月経のたびに増殖・剥離を繰り返す病気です。そのため、この疾患では、月経痛の増強や、過多月経、月経期間の延長など、月経と関連した症状が出現します。
月経の過程において、子宮内膜が増強し、肥厚するのは、女性ホルモンの1つである「エストロゲン」の作用によるものです。
エストロゲンと、「プロゲステロン」は、女性ホルモンの代表です。エストロゲンは子宮内膜の中にある血管を増生させます。その血管は、子宮内膜の増殖と肥厚を促します。そのため、子宮腺筋症は「エストロゲン依存性疾患」の1つと言われています。
つまり、子宮腺筋症の原因は、エストロゲンの過剰分泌にあるということです。そのため、30~40歳代の経産婦に多発します。
エストロゲンの分泌に異常が生じると、以下のような症状が出現します。
・精神障害:気分障害、不眠、頭痛
・代謝障害:むくみ、低血糖、骨粗鬆症
・性機能:性欲減退、生理不順、月経前症候群、不妊
・その他:疲労、加齢促進、鼻づまり
また、エストロゲン分泌異常の原因は、ほとんどが生活習慣にあり、睡眠不足や食生活の不摂生などが主な原因となります。以下に考えられる原因を挙げます。
・生活リズム:夜型生活
・食生活の不摂生:肉食、乳製品、カフェイン、肥満
・ストレス
・目の酷使
・環境ホルモン:プラスチック、ダイオキシン、殺虫剤、排気ガス
・肝臓の問題:飲酒、食べ過ぎ、食品添加物
このように、子宮腺筋症の原因は、エストロゲンの過剰分泌にあります。そして、エストロゲンの分泌異常の多くは、生活習慣の不摂生から生じます。
また、子宮腺筋症の診断は、MRIやエコー検査、内診によって行われます。
子宮腺筋症の治療法は、症状の程度や年齢など、その人の状況に応じて変わります。薬物療法と手術療法がありますが、薬物療法は、症状の一時的な軽減を目的とするものがほとんどです。
子宮腺筋症と子宮内膜症との関係
子宮腺筋症だけでなく、子宮内膜症も「エストロゲン依存性疾患」の1つであり、その原因は、エストロゲンの過剰分泌にあります。そのため、この2つは、似たような症状を呈します。
また、どちらも原因が同じであるため、どちらか片方を発病する際に、もう片方を合併することもあります。これらの疾患が併発した場合は、臨床症状はさらに複雑になります。とくに、MRI検査における、子宮筋腫との鑑別が大切です。
子宮腺筋症の症状は、子宮内膜症のものと似ています。間違った対応をしないためには、子宮腺筋症と子宮内膜症との違いも理解しておく必要があります。
以下に、子宮腺筋症と子宮内膜症との違いをまとめます。
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子宮腺筋症 |
子宮内膜症 |
病態 |
子宮内膜様の組織が子宮筋内に直接 侵入し、周囲筋の炎症性腫大をきたす |
子宮内面以外の場所に子宮内膜様の組織が生じ、炎症を きたしたり、月経のたびに増殖と剥離を繰り返したりする |
好発年齢 |
30歳代後半~40歳代 |
20~30歳代 |
月経痛 |
月経を重ねるたびに増強 (子宮内膜症より強い) |
月経を重ねるたびに増強 |
過多月経 |
伴う(子宮肥大のため) |
伴いにくい |
不妊 |
少ない |
多い |
原因は同じですが、病態が生じる部位が、子宮内と子宮外であるため、症状の特徴は異なります。とくに子宮内に問題が起こる子宮腺筋症は、痛みが強く、月経過多が起こりやいのが特徴です。また、子宮内膜症とは違い、不妊への影響は少ないとされています。
今回述べたように、子宮腺筋症の原因は、エストロゲンの過剰分泌にあります。そして、ほとんどのエストロゲンの分泌異常は、生活習慣の不摂生で起こります。そのため、子宮腺筋症に限らず、このような「エストロゲン依存性疾患」の予防と治療には、あなた自身の生活習慣の見直しと修正が必要なのです。