「変形性膝関節症」に代表されるように、関節の変形は、多くの人が悩まされるものです。病院で変形と言われた場合、大半は「加齢」、「筋力低下」などがその原因として指摘されます。そして、筋力トレーニングを行うように指導されます。
また、加齢による「ヒアルロン酸の低下」も、よく言われる変形の原因です。そのような場合は、ヒアルロン酸注射が処方されます。
しかし、本当に加齢や筋力低下だけが原因で変形が生じるのでしょうか。もし加齢で変形が起こるのであれば、同じ年齢になればみんなが両側の関節が変形するのでしょうか。実際にそのようなことはまずありません。
変形が始まる年齢は人によって異なりますし、左右差もあります。
そもそも、変形を引き起こす本当の原因とは何でしょうか。今回は、その変形が起こる原因について解説します。
関節は噛み合わせ(適合性)が大切
関節は、2つ以上の骨から形成されるものです。その主な機能は、体の動きを作ったり、作り出した力を中枢や末梢に伝えたりすることです。そのため、関節に問題が生じると「関節の動きが悪くなる」「力が発揮しづらくなる」などの症状が出ます。
これらの機能は、関節の適合性が維持されることで達成されます。適合性とは簡単に言うと、噛み合わせのことです。そのため、関節は適合性が悪くなることを最も避けます。
ほとんどの関節は骨形態的に安定しています。それに加えて、四方から筋肉が付着しており、そのバランスがとれていることで関節の適合性が維持されます。そのため、関節適合性の低下は、主に「関節周りの筋肉のバランスが悪くなること」で起こります。
関節の変形は適合性を上げるための適応反応
先ほども述べたように、関節は適合性が悪くなることを一番嫌います。そのため、筋肉のバランスが悪くなり適合性が低下すると、どうにかして適合性を維持しようとします。
その関節の適合性を維持しようとした結果が、関節の変形です。
例えば、四角柱の積み木をイメージして下さい。2つの積み木を縦に重ねるとき、この重なる部分を関節とします。このとき、2つの重なる面がぴったり重なっていれば、それは安定します。しかし、これがずれていると安定性は低下します。
また、上の積み木が右側平行にズレたとします。そうなると、右にズレた分の積み木の面は、下の積み木と接していないことになります。これでは、適合性が低下する上に安定性も低くなります。このようなときに、下の積み木と接していない部分に、新しい添え木を付けて接触するようにすると、その適合性は高くなります。
関節でもこのようなことが起こっています。実際は、関節のずれた部分に噛み合わせがよくなるように新しい骨が作られます。これが関節の変形です。
つまり、変形には関節の適合性を維持するという意味があり、もし、変形が起こらないと、関節は本来の機能を発揮できないということです。実際にそのような状態では、可動域の制限や筋力の低下が起こります。
以上のことから、変形が起こっている場合は、「変形していないと関節の適合性を維持できない」と考える必要があります。そして、今後の変形を予防するためにも、関節の適合性を悪くしている原因を考える必要があります。
関節の変形は、「関節の機能を発揮するために適応した結果」です。そのような事実を知った上で、手術などの治療法を検討することが大切です。