ダイエット 失敗

ダイエット中の空腹感は意思の問題ではない!空腹感が起こる原因と対処法

ダイエットをしていると、何かと空腹感に悩まされがちですよね? 
基本的にダイエットでは、食事に対して何らかの制限を設けます。例えば、食事から摂取する総カロリー量を減らしたり、糖質量を制限したりする食事法は、ダイエットでよく提唱されている食事法です。
ただ、このような食事制限を実施していると、必ずといっていいほど一度は空腹感に襲われることになります。そして、多くの人はこうした食欲を抑えきれずにダイエットに失敗します。
そうしたことを避けるためにも、空腹感や食欲が生じるメカニズムを理解した上で、正しい対処法を実践することが大切です。
そこで今回は、「ダイエット中の空腹感は意思の問題ではない!空腹感が起こる原因と対処法」について解説します。

食欲が起こるメカニズム

空腹感とは「お腹が空いた……」「何か食べたい……」といった感覚です。つまり、空腹感があるということは「食欲を感じている」ということになります。そのため、空腹感の原因を知るためには食欲が起こるメカニズムを理解する必要があります。
ただ一言で食欲といっても、食欲には体に必要な「真の食欲」と体にとって不必要な「偽の食欲」の2つがあります。
真の食欲は、体の健康を維持するために欠かせないものです。その一方で偽の食欲は、健康のために不可欠なものではなく「自己満足感」を高めるために起こる食欲だといえます。そのため、健康的な体を維持するためには、真の食欲に従って食事をすることが重要になります。
そこで以下に、真の食欲と偽の食欲が起こるメカニズムについて記します。

体に必要な真の食欲(代謝性食欲)

真の食欲とは、「エネルギーが足りていないから食べてくれ」という体からのサインです。そのため、真の食欲には基本的に従って食べなければいけません。
そして、真の食欲は「エネルギー不足」「胃の空虚」の2つによって引き起こされるのです。
 ・エネルギー不足によって起こる食欲
体に必要な真の食欲は、主に「エネルギー不足」によって引き起こされます。
人が体を動かすためには、細胞が活動するためのエネルギー(カロリー)が必要になります。例えば、糖分や脂肪は細胞が働くためのエネルギー源となります。
そのため、体内のエネルギー源が足りなくなったときには、食事によってエネルギー源となる栄養素を補給するような指令である食欲が作られます。そして、食欲に従って食品から栄養素を取り入れると、エネルギー不足の状態が解消されます。
具体的には、血液中に存在するエネルギー源である糖分が少なくなると、エネルギー不足によって脳に存在する摂食中枢が刺激されて食欲が起こります
また血糖値が低下すると、脂肪を分解してエネルギーが作られるため、血液中に脂肪(脂肪酸)が多く存在するようになります。血液中の脂肪酸が増えることも、摂食中枢を刺激して食欲を起こす原因の一つです。
 ・胃の空虚によって起こる食欲
ただこうした食欲は、エネルギー不足という体にとって危機的な状況にならないと起こりません。
朝や昼、夜に自然とお腹が空くのは、このように危機的な状況になっているためではなく、「胃の中が空っぽになっている」ためです。
胃に入った食べ物は、2~3時間で消化されて腸に送られます。そして、胃内が空っぽになると、胃から「グレリン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。このグレリンが、摂食中枢を刺激して食欲を生み出します。これが、朝食や昼食などの時間になると空腹を感じるメカニズムです。
このように真の食欲は「エネルギー不足」と「胃の空虚感」という2つの状況から生み出されます。

偽の食欲(認知性食欲)

真の食欲を無視して空腹感を我慢していると、エネルギー不足に陥ってさまざまな不調が出現することになります。そうしたことを避けるためにも、真の食欲が起こった場合には、食欲に従って食事を摂取することが大切です。
ただ、食欲の中には体にとって必要のない「偽の食欲」があります。例えば、食事を摂った後すぐにお菓子やケーキなどを食べたくなるのは偽の食欲です。
 ・偽の食欲は脳によって作られる
こうした偽の食欲は主に脳によって作られます。偽の食欲は、目や鼻から食品の色や形、においの情報が脳に伝えられて「おいしそう……」「今食べないと、後からは食べられない……」といった気持ちが生まれて起こります。
当然ながら、胃の中が満タンで食べ物が入るスペースがないときは、偽の食欲が沸くことはありません。ただ、胃内に少しでもスペースがあると、偽の食欲が生まれてそれに従って食べてしまいます。
こうした脳によって作り出す食欲は「認知性食欲」とも呼ばれます。
ダイエットに失敗する人の多くは、このような認知性食欲が問題になります。そのため、認知性食欲を抑えることは、ダイエットを成功させるためのポイントです。
 ・機能性低血糖も偽の食欲を引き起こす
また認知性食欲だけでなく、「血糖値の急激な変動」も偽の食欲を誘発します。
食事によって炭水化物(糖質)が体内に取り込まれると、血液中の糖分量が多くなり血糖値が上昇します。このときに、緩やかに血糖値が変動すれば体にとって大きな問題にはなりません。
ただ、お菓子やジュースなど糖質が過剰に含まれているような食品を食べると、緩やかではなく急激に血糖値が上がります。そうなると、体は慌てて血糖値を落ち着かせようと反応するため、今度は逆に血糖値が急降下します。
こうした急激な血糖値の変動によって起こる低血糖状態は「機能性低血糖」と呼ばれます。
この機能性低血糖でも、偽の食欲が誘発されます。つまり、炭水化物(糖質)が多い食品を食べ過ぎることでも偽の食欲が引き起こされます。
以上のように、空腹感を生み出す食欲には、体にとって必要な「真の食欲」と体にとって不必要な「偽の食欲」の2つが存在することを理解しておくことが大切です。

ダイエット中に強い空腹感が起こる原因

今まで述べたように、食欲には「真の食欲」と「偽の食欲」があります。そして、これら2つの食欲が発生するメカニズムから空腹感を引き起こす原因を考えることができます。
そこで以下に、空腹感が起こる原因について記します。

食事制限によるカロリー(エネルギー)不足

食事によって摂取するカロリーが不足すると、血糖値が低下したり血液中の脂肪酸量が増加したりするため、食欲が起こります。
例えば、ダイエットのために食事量を減らすことは、カロリーの摂取量不足を招く一つの原因です。また、運動量が多くなって活動するために必要なエネルギー量が増えることも、エネルギー不足を引きこします。
このように、過度な食事制限や運動はカロリー不足を招いて空腹感を作り出します。

胃の空虚

胃の中が空っぽになると、グレリンが分泌されて食欲が誘発されます。
通常、胃に入った食べ物は食後2~3時間後には消化されて腸に送られます。そのため、3時間以上何も食べないと、胃の空虚による空腹感が生まれます。
例えば、いわゆる「断食(ファスティング)」によって食事回数を制限することは、胃が空っぽの状態を長時間維持することになるため、空腹感の発生につながります。
このように、胃内の状態によっても空腹感は作られます。

ダイエットで我慢している食べ物への依存性

脳は、食べ物の鮮やかな色や美味しそうな香りを感知すると食欲を生み出します(認知性食欲)。また、糖質(炭水化物)の過剰摂取は血糖値の急激な変動(機能性低血糖)を招き、偽の食欲を作ります。
こうした認知性食欲や機能性低血糖による食欲は、強い依存性を引き起こします
例えば、ショートケーキが美味しいという体験を一度すると、ショートケーキを見たりショートケーキのにおいを嗅いだりすると、認知性食欲が起こります。そして、そのときに実際にショートケーキを食べて「美味しい」と感じると、脳には「ショートケーキが美味しい」という記憶が強く刻まれることになります。
そうなると、次に同じようにショートケーキを見たときには、前回以上に強い食欲が起こります。つまり、認知性食欲に従って食べ物を食べると依存を生み出すことになるのです。
また、機能性低血糖を引き起こす糖質は、脳内に存在する幸せホルモンと呼ばれる「ドーパミン」の分泌を促します。ドーパミンは、ギャンブルや覚せい剤の依存性を作り出す原因として知られているホルモンです。
ドーパミンが分泌されると、幸福感が作り出されます。糖質やギャンブル、覚せい剤はドーパミンによる幸福感を作る主な刺激です。そのため、一度これらの刺激によって幸福を感じると、また幸福感を得ようとして、糖質やギャンブル、覚せい剤を求めるようになります。
その結果、最終的には糖質やギャンブル、覚せい剤がなければ幸せを感じることができないようになり、依存します。
こうした依存による空腹感が、ダイエットを失敗させる原因となります。

空腹感を起こしやすいダイエット方法

空腹感を招く原因を理解すると、空腹感を起こしやすいダイエット方法がわかるようになります。
例えば、体のエネルギー不足を招くような「カロリー制限」や「ハードなトレーニング」を行うダイエット方法は、空腹感を招きます。また、カロリーを抑えるために脂肪の摂取を控えるような食事法は、必然的に炭水化物(糖質)の摂取量が多くなるため、機能性低血糖を招き空腹感を作り出します。
このように、基本的にカロリー不足を招いたり糖質の摂取量が多くなったりするような食事法は、空腹感を起こしやすいダイエット方法です。
以下に、空腹感を招きやすいダイエットの特徴を挙げます。
・カロリー制限(断食などを含む)
・ハードな運動
・極端な脂肪摂取の制限
以上の3つの特徴を持つダイエット方法は、空腹感を招いてダイエットに失敗しやすいものだといえます。

ダイエット中に起こる空腹感を我慢するメリット

一般的に、空腹感はダイエットの敵として認識されています。しかし、空腹感を我慢することには、さまざまなメリットがあります。ダイエット中の空腹感を乗り切るためにも、空腹感を我慢して得られる利点を理解しておくことは大切です。
そこで以下に、空腹感によって得られるメリットについて記します。

空腹感を我慢している間は脂肪が燃焼しやすくなる

空腹状態のときには、血糖値が低くなっている、もしくは定常であることがほとんどです。
人の体を動かすためのエネルギーは、主に糖分と脂肪から作られます。そして、血糖値が高いときは、血液中に存在している糖分が優先してエネルギー源として利用されます。そのため、血糖値が高いときには、体の脂肪が燃焼されにくい状態だといえます。
その一方で、血液中に糖分が余分にないときには、体に蓄えられている脂肪がエネルギー源として使われることになります。そうなると、体内に蓄積されている脂肪がどんどん燃焼されていきます。
このように、空腹は体の脂肪燃焼を促すことにつながります。

空腹感を我慢している間はホルモン分泌が促される

空腹時には、満腹時よりも「成長ホルモン」の分泌量が多くなります。成長ホルモンとは、体の成長を促すだけでなく傷の修復などを促す働きを持つホルモンです。
例えば、成長ホルモンは、肌の新陳代謝を促したり怪我した組織の治癒を速めたりする作用を持っています。その他にも、成長ホルモンには筋肉を付きやすくするような働きもあります。
空腹には、こうした健康の維持に欠かせない作用を持つ成長ホルモンの分泌を促す効果があります。

空腹感を我慢している間は長寿(サーチュイン)遺伝子が働く

さまざまな研究によって、空腹時には「長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)」が活発に活動することが明らかになっています。長寿遺伝子とは、その名の通り「長生きを促す」ような遺伝子です。簡単にいうと、体に起こる老化反応を抑える働きをもつ遺伝子になります。
そのため、空腹によって長寿遺伝子が活性化されると、長生きしやすくなるだけでなく、老化によって生じる体の不調が起こりにくくなります。
空腹感を我慢することには、こうした健康効果もあります。

空腹感を我慢している間は治癒が促進される

食事を摂ることは、あなたが想像している以上にエネルギーが必要な活動です。
例えば、食べるためには顎を使って食べ物を噛む必要がありますし、胃腸が活動して消化・吸収しなければいけません。当然ながら、こうしたときには顎や内臓の筋肉が働くためにエネルギーを消費します。
こうしたエネルギーは、食べるときだけでなく、骨折した骨が治癒するときや肌の新陳代謝時といった、傷ついた組織を修復(治癒)するときにも消費されます。
そして、食事時に消費されるエネルギーが大きくなるほど、体の治癒に使うことができるエネルギーが少なくなります。逆に、食べるときのエネルギー消費量が減るほど、治癒に利用できるエネルギー量は増えます。
つまり、食べる量を減らして食事時に消費されるエネルギーを少なくすることができれば、健康を維持するため必要な治癒という体の活動が活発になります。
このように、空腹感が生まれるということは「体の治癒反応が促されている状態である」といえます。

空腹感を我慢している間は記憶力が高くなる

食事量を抑えると、血糖値は正常範囲で低い状態を維持することになります。当然ながら、糖質が多い食事を摂ると血糖値は高くなります。
血糖値が上昇すると、体内では血糖値を下げる作用を持つ「インスリン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。インスリンは、すい臓で作られるホルモンであり、血糖値を落ち着かせたり脂肪を蓄積したりする働きを持っています。
そして、こうしたインスリンの分泌量が少なくなると、脳内で記憶に関わる遺伝子(CRTC)を活性化する働きを持つタンパク質が活発に活動するようになります。その結果、記憶力が向上します。
このように、空腹の状態でインスリンの分泌量が少なくなると、記憶力が高まることにもつながります。

空腹感を予防・解消する方法:ダイエット中の空腹感は意思の問題ではない

ここまで、食欲のメカニズムから空腹感が起こる原因や空腹感を生みやすいダイエット方法について述べました。
そこで以下に、ダイエット中の空腹感を予防・解消するための具体的な方法を記します。

正しい思考・方法でダイエットを実践する

ダイエット中に起こる空腹感に悩まされないようにするためには、まずは空腹感に対して正しい思考を持つことが大切です。
 ・空腹感に対して正しい思考をもつ
既に述べたように、エネルギー不足の状態で起こるような空腹感は、体の健康を維持する上で必要なものです。もしそのときに起こった食欲に沿って食事を摂らなければ、体はエネルギー不足となり、さまざまな不調が生じることになります。つまり、こうした食欲は生理的な現象だといえます。
それに対して、認知性食欲や機能性低血糖から引き起こされる空腹感は、健康を維持するために不必要なものです。こうした空腹感に従って食べ物を食べると、肥満になるだけでなく、その食べ物に対する依存を強めることになります。
こうしたことから、健康的にダイエットを行うためには、生理的な食欲には逆らわずに従い、認知性食欲や低血糖によって生じる非生理的な食欲は抑えることが重要だといえます。
 
 ・正しい方法でダイエットを実践する
そして、特にエネルギー不足と急激な血糖値の変動(機能性低血糖)によって引き起こされる空腹感は、間違ったダイエット方法によって招かれていることが少なくありません。
例えば、ダイエットの定番とされているカロリー制限やハードな運動は、カロリー不足を引き起こします。また、カロリーを意識して脂肪量を制限するような食事法では、必然的に炭水化物(糖質)の摂取量が多くなり、血糖値の変動を招きます。その結果、強い空腹感に悩まされることになります。
その一方で、カロリー制限やハードな運動を行う必要がないダイエットであれば、こうしたエネルギー不足や機能性低血糖による空腹感は起こりません。
そのため、正しい方法でダイエットを行えば、エネルギー不足と機能性低血糖による空腹感を予防することができます。
ダイエット中に空腹感に悩まされないようにするためには、こうした正しい思考と方法を理解しておくことが大切です。

ダイエット中に空腹感を我慢するメリットを考える

空腹感を生み出す食欲には、生理的食欲のように従って対処すべきものと、認知性食欲や機能性低血糖によって生じる食欲(非生理的食欲)のように我慢すべきものがあります。ただ非生理的食欲は、一度起こるとなかなか抑えることができません。
そうした場合には、先ほど述べたような「空腹感を我慢するメリット」を考えるようにしましょう。
例えば「空腹状態を保つことで肌がどんどんキレイになる」「お腹が空いているということは、どんどん脂肪が燃焼されている状態である」というように、空腹であることのメリットを思い浮かべます。そうしたことを継続すると、空腹感が苦痛ではなく快感に思えるようになります。
そのため、空腹感が生じた場合には、空腹によって得られるメリットについて考えるようにしましょう。

我慢せずに間食をして空腹感を抑える

いくら空腹のメリットを考えても、非生理的食欲による空腹感を我慢できない場合もあります。また空腹感は、胃の中が空っぽになることでも起こります。これら2つのケースでは、間食によって胃内に食べ物を入れれば空腹感は収まります。
ただ、このときに注意しなければいけないことは「血糖値の変動を招かないような食品を選んで食べる」ということです。
もし間食で血糖値を上げるような食品を摂ってしまうと、機能性低血糖が生じて再び空腹感に悩まされます。
そして、炭水化物やタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルといった栄養素の中でも、血糖値を変動させる作用があるのは炭水化物(糖質)のみです。タンパク質や脂質は、ほとんど血糖値を上げる働きはありません。
そのため、ダイエット中に空腹感が生じて間食をする場合には、糖質が含まない食品を摂るようにしましょう。さらに、噛むという刺激は脳にある満腹中枢に作用して満腹感を作り出すため、噛み応えがある食べ物を選ぶこともポイントです。
このように、ダイエット中に間食する食品には、タンパク質や脂質、ミネラルが豊富な食品を選ぶことが大切です。
以下に、ダイエット中の間食におすすめの食品例を記します。
・スルメや貝柱、いわしなどの干物
・鶏ささみの燻製
・チーズ
・ナッツ類(糖質が含まれるため食べる量には注意)
逆に、小麦粉や砂糖、米を大量に使ったお菓子や缶詰などは、ダイエット中の間食として用いないようにしましょう。また、フルーツに含まれている「果糖」も肥満を招く原因となるため、フルーツもできるだけ避けるようにすることが大切です。特に、ドライフルーツは果糖量が多いため注意してください。
今回述べたように、ダイエット中に起こる空腹感を克服するためには、空腹感が生まれる原因を理解して、正しい思考と方法で対処することが重要です。
正しい方法でダイエットを行い、空腹感に対して正しい思考を持って対処することができれば、空腹感でダイエットに失敗することは無くなります。