「ミトコンドリアが代謝を高めて脂肪を燃焼させる」という話は聞いたことがあるはずです。
ミトコンドリアは、脂肪からエネルギーを作り出す働きをもつ器官になります。つまり、ミトコンドリアが元気であれば、どんどん脂肪が燃焼されるのです。
当然、ミトコンドリアの働きが悪くなると脂肪が燃えにくくなって太りやすくなります。そして、頑張ってダイエットしても痩せない場合、ミトコンドリアがしっかりと働いていない可能性が高いのです。
そうはいっても、「ミトコンドリアが働いていないってどうしたらわかるの?」「ミトコンドリアってどうしたら元気になるの?」と疑問に思うはずです。
そこで今回は、「ミトコンドリアを活性化させる8つのポイント」について解説します。
ミトコンドリアによるダイエット効果を高める8つのポイント
ミトコンドリアダイエット:食事
ミトコンドリアを活性化する栄養素を摂る |
・ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5) ・ビタミンH(ビオチン) ・CoQ10 ・Lカルニチン ・鉄 ・マグネシウム ・カルシウム ・銅 ・亜鉛 ・酪酸菌 |
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ミトコンドリアの活動を妨げる要因を取り除く |
・シアン化物 ・一酸化炭素 ・タバコ ・排気ガス ・紫外線 ・放射線 ・寄生生物(ウイルス、マイコプラズマ、バクテリア、スピロヘータ、マラリアなど) ・病原性細菌 ・フッ素 ・アンチモン |
抗酸化物質を取り入れる |
・ビタミンA、C、E ・ビタミンB群 ・グルタチオン ・Lグルタミン ・オキシカイン ・リコピン ・アスタキサンチン ・イミダゾールジペプチド ・Lシステイン |
ミトコンドリアダイエット:生活習慣
運動する |
・食前の運動 ・食後の運動 ・有酸素運動 |
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睡眠・休息を十分にとる | ・6~7時間の睡眠時間を確保する(理想は8時間) |
ストレスケア | ・ヨガやピラティスなどの運動を実施する |
体を温める | ・冷たい飲食物を避ける |
断食を実施する | ・何も食べない時間を確保する |
ミトコンドリアダイエットでは脂質代謝モードがポイント
人間は、活動するためにエネルギーが必要不可欠です。筋肉や心臓、脳、内臓などが働くためのエネルギーは、食べ物や体に蓄積されている糖分・脂肪から作られます。
具体的にエネルギー源となる栄養素は、主に「炭水化物(糖質)」と「脂質」の2つです。食べ物や体に蓄えられている糖分と脂肪が、体内でさまざまな反応を受けてエネルギーが作られます。このように糖分や脂肪からエネルギーを作り出す過程を「代謝」といいます。
そして代謝には、主なエネルギー源として糖を利用する「糖質代謝」と、脂質を主に使う「脂質代謝」の2つがあります。
ほとんどの人は、食事の状況や時間帯によって糖質代謝と脂質代謝が切り替わり、バランスを取りながらエネルギーを作り出しています。例えば、「食後は糖質代謝が優位である一方で、就寝時は脂質代謝が優勢である」といったように、1日の中でもエネルギー源とする栄養素は変化しているのです。
そして、健康的かつ効率的にダイエットをするためには「いかに1日の中で脂質代謝が優勢である時間を長くするか」ということが重要になります。脂肪は糖質と比較すると体への負担が小さく、なおかつ効率的にエネルギーを作り出すためです。
また、脂質代謝が優位であるときは、いわゆる体の脂肪を燃焼することでエネルギーを作り出しているため、どんどん痩せます。
こうしたことから、健康的に痩せたいのであれば、脂質代謝モードを高める方法について理解しておくことが欠かせません。
血糖値が高いと糖質代謝が優位になる
多くの人は、基本的に1日の大半を糖質代謝で過ごしています。ほとんどの人が、炭水化物(糖質)を過剰に摂取しているためです。
食事やおやつなどで、ご飯やパン、ラーメン、お菓子など糖質が豊富に含まれている食品を食べると、血糖値(血液中の糖分量)が上昇します。食べ物は胃腸で分解された後、腸から血液中へ吸収されるためです。
ただ、血糖値が高い状態は体にとって非常に負担が大きい状況であるといえます。
例えば、血糖値の急激な上昇は、血管を傷つけて「動脈硬化(血管が硬くなる病気)」を引き起こす原因になります。また血液中に過剰な糖分があると、糖が血管や細胞にくっついて血管や細胞の働きを悪くします。こうした現象は「糖化(グリケーション)」といわれます。
こうしたことから、血糖値が上がりすぎたり、高い状態が続いたりすることは、体にとって非常に危険な状態なのです。そのため、血糖値が上昇すると、体は急いで血糖値を下げようとします。つまり、血糖値が高くなっているときは、糖質代謝が優位になって、脳や筋肉、内臓などが働くエネルギーとして糖質が使用されるのです。
このように、血糖値が高い状態にあるときは、糖質が主なエネルギー源として利用されています。
食後2~3時間後は脂質代謝モードに切り替わる
ここまで述べたように、食事で糖質を摂った後は糖質代謝が優位となっています。血糖値が高い状態は体にとって危険であるため、糖分(血液中ではブドウ糖)をエネルギー源として利用することで、血糖値を下げるのです。
ただ、当然ながら食事で摂取した糖分は、エネルギー源として利用されると血液中から無くなります。
例えば、空腹時(何も食べていないとき)の血糖値は80~100です。それが、食事で十分な量の糖質を摂ると、食後1時間で最高値まで上がります。具体的には、ご飯やパンなどを食べると、血糖値は140近くまで上昇するのです。
そして、2~3時間をかけてエネルギー源として糖を利用することで、元の血糖値(80~100)まで落ち着いていきます。
そのため、ご飯やパン、麺類などの主食を含む食事を食べると、食後2~3時間は食べ物から摂った糖分を元にエネルギーを作り出していることになります。
しかし、食後2~3時間が経過すると、食事から摂った血液中の余分なブドウ糖が無くなります。そうなると、次は体に蓄積されている脂肪(中性脂肪)を分解してエネルギーを作り出すようになるのです。つまり、脂質代謝が優位になるということです。
例えば、夕食後から朝食までは、10~12時間食事をしない時間があります。そのため、寝ているときや起床時などは脂質代謝がメインとなっています。
このように、糖質制限をしていない人であっても、食事の2~3時間以降は基本的に脂質代謝が優勢となっているのです。
ミトコンドリアが活発になって脂質代謝を優勢にするためには糖質制限が有効
ここまで述べたように、脂質代謝を促すためには「血糖値を上げすぎない」ということが大前提となります。そして、血糖値を上昇させる主な要因は、食事からの糖分摂取です。タンパク質や脂質は、基本的には血糖値を上げません。
例えば、私であれば空腹時の血糖値は80前半です。鳥皮のから揚げのようにほとんど糖質を含んでいないような食品を摂っても、以下のように血糖値はほとんど変化しません。
・空腹時血糖 |
・鳥皮のから揚げ(満腹まで)摂取1時間後 |
その一方で、糖質が豊富に含まれているパンを食べた後は、以下に記すように急激に血糖値が上昇するのです。
・空腹時血糖 |
・パン3つ(ガーリックトースト、カマンベールチーズパン、レーズンパン)摂取1時間後 |
*空腹時の血糖値はほとんど変化ないため、同じ写真を掲載しています。
このように、基本的には血糖値を上げるのは糖質のみです。そのため、食事から摂取する糖質量を制限することで血糖値の上昇を抑えることができます。つまり、糖質制限をすれば血糖値が上昇しないため、必然的に脂質代謝が優位になるのです。
こうしたことから、脂質代謝を優勢にして効率的に脂肪を燃焼したい場合には、糖質制限が有効だといえます。
ミトコンドリアが脂肪の燃焼を促してダイエット効果を高める
ただダイエットをしている人の中には、食後2~3時間経っても、糖質制限をしても脂質代謝が優位にならない人もいます。そうした人たちは、脂質代謝が悪くなっているために血糖値が低い状態であっても、脂肪を燃焼してエネルギーを作り出せなくなっているのです。
このような状態では、食後2~3時間が過ぎて血糖値が低くなってくると、空腹感や脱力感、頭痛といった不調が出現します。低血糖(血液中の糖分量が異常に少なくなっている)状態を避けるために、体が危険信号を発しているのです。そして、再び糖分を摂取すると、血糖値が上昇して不調が消えます。
つまり、エネルギー源を食事からの糖分に依存している状態になっているのです。脂肪を上手くエネルギーとして使えないため、糖質からしかエネルギーを作り出せないのです。
そして、脂質代謝が上手く働かない原因の一つとして「ミトコンドリアの機能障害」が挙げられます。ミトコンドリアとは、細胞の中に存在する「細胞内小器官」です。ミトコンドリアでは、「TCA(クエン酸)回路」や「電子伝達系」と呼ばれる反応回路によって、主に脂肪や酸素を使ってエネルギーが作られます。
いってしまえば、ミトコンドリアは脂肪を燃焼する器官になります。
「ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動などが痩せるために良い」といわれているのは、これらの運動がミトコンドリアでの脂肪燃焼を促すためです。
このように、脂肪の燃焼(脂質代謝)は主にミトコンドリアで行われています。そのため、脂質代謝を優勢にして体に蓄積された脂肪を効率的に減らすためには、ミトコンドリアの働きが不可欠になるのです。
ミトコンドリアの機能が悪くなっていると現れる症状
ミトコンドリアの働きが悪くなっていると、さまざまな不調が出現します。
例えば、「疲れやすい」という症状は、ミトコンドリアの活動性が低下すると生じる代表的な不調です。ミトコンドリアからエネルギーが作り出せないため、疲労しやすくなるのです。
その他にも、免疫細胞でミトコンドリアが上手く働かなくなると、風邪などの病気を発症しやすくなります。また、脳のミトコンドリアに問題が起こると、イライラや抑うつ、気分の不安定などの精神面のトラブルが発生するのです。
このように、ミトコンドリアの働きが悪くなると、全身の不調が現れることになります。
以下に、ミトコンドリアの機能障害で起こりえる症状をまとめます。
・疲労(朝起きれない、夕方以降に強い疲労感がある)
・脱力感(足に力が入りにくいなど)
・免疫低下(風邪などを引きやすい)
・関節痛(腰痛、ひざの痛みなど)
・精神トラブル(イライラ、うつなど)
特に、食後数時間に以上に記した不調が出現する人は、ミトコンドリアの機能障害によって脂質代謝が悪くなっている可能性が高いです。
また、ミトコンドリアの機能低下は、以下のような不調にも関わっています。
・便秘
・不眠
・冷え症
・アレルギー
・PMS(月経前症候群)、不妊
・起立性低血圧
・自己免疫疾患(リウマチなど)
このように、ミトコンドリアの働きが悪くなると、全身の不調につながります。
ミトコンドリアのダイエット効果に関わる栄養素
ここまで述べたように、脂質代謝を促すためには糖質制限をすることが欠かせません。また糖質制限をしていても、ミトコンドリアの働きが悪くなっていると、脂質の代謝は上手く起こりません。脂質の代謝が主にミトコンドリアで行われるためです。
ミトコンドリアの機能が低下する要因の一つに栄養不足があります。ミトコンドリア内で起こる代謝には、さまざまな栄養素が必要であるためです。また化学物質など、ミトコンドリア内における反応を妨げる要素が存在することも、ミトコンドリアの働きを悪くします。
そこで以下に、脂質代謝の活性化に欠かせないミトコンドリアの働きを促す栄養素と阻害する要因について記します。
酵素(タンパク質)
脂質の代謝に限らず、生体内で起こる化学反応には「酵素」が必要不可欠です。酵素とは、体内における反応(代謝)を速める物質になります。酵素がなければ、食べた物を筋肉や血液、エネルギーに変換できないのです。
例えば、食事でとった脂肪は、すい臓から分泌される「リパーゼ」と呼ばれる酵素によって分解されます。食事に含まれる脂肪は、リパーゼによって腸から取り込める大きさまで消化されてはじめて体内に吸収されるのです。
また、ミトコンドリア内で起こる脂肪の代謝においても「クエン酸シンターゼ」「アコニット酸ヒドラターゼ」「イソクエン酸デヒドロゲナーゼ (NAD+)」などのさまざまな酵素が必要になります。
そして、こうしたミトコンドリアでの脂質代謝に欠かせない酵素は、タンパク質から作られています。そのため、タンパク質が不足してしまうと、脂肪を燃焼するミトコンドリア内での反応はもちろんのこと、体内における全ての代謝が悪くなってしまうのです。
こうしたことから、脂質代謝を促すために、タンパク質は欠かせない栄養素だといえます。
補酵素(ビタミン)・ミネラル
酵素が働くためには、「補酵素」と呼ばれる物質が必要です。補酵素とは、酵素の働きをサポートする物質になります。
例えば、酵素は「基質」と呼ばれる物質に結合することで化学反応を触媒(速く)します。ただ、酵素と基質の噛み合わせが悪く、上手く結合しない場合があるのです。そうした際に、酵素と基質が噛み合うようにサポートするのが補酵素になります。
こうした補酵素の多くは「ビタミン」として知られています。その他にも、マグネシウムやカルシウム、鉄といったミネラルや「CoQ10(コエンザイムQ10:ユビキノン)」「カルニチン」も補酵素として働きます。そして、ミトコンドリア内で脂肪が代謝されるときには、補酵素が欠かせないのです。
例えば、ミトコンドリア内における反応の一つである電子伝達系では、「ビタミンB3(ナイアシン)」「ビタミンB2」「CoQ10」「鉄」「銅」といった補酵素・補因子が必要になります。
また、TCA(クエン酸)回路では、「ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸など)」「ビタミンH(ビオチン)」「L-カルニチン」「マグネシウム」「鉄」が欠かせません。
その他にも、カルシウムとマグネシウムのバランスは、ミトコンドリアを覆っている膜の透過性に関わります。簡単にいうと、カルシウムとマグネシウムのバランスが崩れると、ミトコンドリア内に不要な物質が流入してしまい、ミトコンドリアの働きを妨げることになるのです。
このようにミトコンドリア内で行われる脂肪の代謝には、ビタミンやミネラルなどのさまざまな物質が必要になります。
最後に、ミトコンドリアの活性化に関わる栄養素についてまとめます。
電子伝達系 | TCA(クエン酸)回路 | ミトコンドリア膜の透過性 | その他 |
---|---|---|---|
・ビタミンB3 (ナイアシン) ・ビタミンB2 ・CoQ10 (ユキビノン) ・鉄 ・亜鉛 ・銅 |
・ビタミンB群全般(特に以下に記すビタミン) ビタミンB1 ビタミンB2 ナイアシン(ビタミンB3) ビタミンB5 (パントテン酸) ・ビタミンH (ビオチン) ・L-カルニチン ・マグネシウム ・鉄 |
・カルシウム ・マグネシウム |
・酪酸菌 ミトコンドリアの新生を促す |
ミトコンドリアによるダイエットと腸内環境
ここまで述べたように、ミトコンドリアが活発に活動するためには、さまざまな栄養素が必要になります。そして、こうした栄養素を体内に取り入れるためには腸内環境が整っていることが大切です。
例えば、腸内の機能が悪くなった状態として「LGS(リーキーガット症候群)」が挙げられます。リーキガット症候群とは、簡単にいうと「腸に穴が空いてしまう病気」です。
腸には、食べた物を胃で消化した後に血液中(体内)へ吸収する役割があります。通常、腸は病原性細菌などの体にとって有害な物質を取り込まないようになっています。腸の壁は細かいザルの目のようになっており、体内に悪影響を与える物質を通さないようになっているのです。
その一方でリーキーガット症候群になると、腸壁のザルの目が荒くなってしまいます。そうなると、体にとって有害な物質が腸から血液中に吸収されてしまうのです。その結果、腸内をはじめ、全身に炎症が生じることになります。
腸に炎症が起こると、ビタミンやミネラルの吸収が悪くなります。炎症が、ビタミンやミネラルを血液中に取り込むために必要なタンパク質の働きを障害するためです。
つまり、リーキーガット症候群になると、ミトコンドリアの活動に必要である栄養素の吸収が悪くなってしまうのです。
また、リーキーガット症候群の状態にまで至っていなくても、腸内細菌のバランスが崩れていると、ミトコンドリアの新生を促す「酪酸菌」が産生されにくくなります。
このように、腸内環境が悪くなると、ミトコンドリアの活動が悪くなってしまうのです。
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・体の不調を引き起こすリーキーガット:慢性炎症と病気の関係性
・リーキーガットと栄養素の関係:食事でリーキーガットを予防する
ミトコンドリアによるダイエット効果を妨げる要因
既に述べたように、ミトコンドリア内における脂質の代謝は、酵素や補酵素によって円滑に行われます。ただ、こうした酵素反応を妨げる物質が体内に存在すると、ミトコンドリアの活動は悪くなるのです。
例えば、水銀やヒ素といった「重金属」と呼ばれる物質は、TCAサイクルにおける酵素反応を阻害します。また、活性酸素や電磁波はミトコンドリアのDNAを傷つけて、ミトコンドリアの働きを悪くします。ミトコンドリアのDNAは、特に活性酸素に対して弱いことで知られています。
その他にも、以下に記す要因はミトコンドリアの活動を妨げる可能性があります。
・シアン化物
・一酸化炭素
・タバコ
・排気ガス
・紫外線
・放射線
・寄生生物(ウイルス、マイコプラズマ、バクテリア、スピロヘータ、マラリアなど)
・病原性細菌
・フッ素
・アンチモン
このように、重金属や活性酸素、電磁波などが原因でミトコンドリアの機能が低下している場合もあります。
抗酸化(活性酸素)対策
既に述べたように、ミトコンドリア内では酸素を使って脂肪からエネルギーを作り出します。そのため、脂肪を効率的に燃焼するためには、ミトコンドリア内でエネルギー産生が活発に行われることが大切です。
ミトコンドリアでエネルギーを作るときには酸素が不可欠になります。ただ、酸素を利用してエネルギーを作る過程では、「活性酸素」が大量に発生します。活性酸素とは、細胞の老化現象である「酸化」を促す物質です。
酸化とは、細胞に酸素が結合する反応であり、簡単にいうと細胞がサビる現象をいいます。鉄がサビるのは、鉄に酸素がくっついて酸化した結果生じるのです。
既に述べたように、活性酸素はミトコンドリアのDNAを傷つけやすく、ミトコンドリアの働きを悪くする原因となります。
そして、ミトコンドリアでのエネルギー産生は必然的に活性酸素の発生を増やします。
また活性酸素は、ストレスや紫外線、タバコ、食品添加物の摂取、過剰な運動、睡眠不足などでも発生します。そのため、こうした活性酸素を多く発生させる要因がある人は、体内での酸化反応を予防することが大切です。
体内での酸化を抑えるためには、活性酸素を発生させる要因を避けることが第一になります。また、「抗酸化作用」をもつ栄養素を摂取することも、体内での酸化を防ぐためには有効です。
以下に抗酸化作用をもつ物質をまとめます。
抗酸化物質 |
---|
・ビタミンA、C、E ・ビタミンB群 ・グルタチオン ・Lグルタミン ・オキシカイン ・リコピン ・アスタキサンチン ・イミダゾールジペプチド ・Lシステイン |
ストレスや睡眠不足、タバコなどで体内で活性酸素が大量に発生している可能性が疑われる人は、以上に記した抗酸化物質を積極的に摂取するようにしましょう。
ミトコンドリアを活性化する運動法
ここまで述べたように、脂質代謝を活発にするためには、ミトコンドリアの活動を促す栄養素を摂取することが大切です。脂肪の燃焼を良くするためには、糖質制限や栄養補給といった食事が最も重要ですが、運動によっても脂質代謝を活性化することもできます。
特に、食前と食後の有酸素運動は脂肪の燃焼を促すために有効です。
食前の運動
食前に運動することは、脂質代謝を活性化することにつながります。食前は前回の食事で摂取した糖分が体内に残っていない(血糖値が下がっている)ので、強制的に脂肪を燃焼することでエネルギーを作り出す必要があるためです。
運動をするためには、当然ながらエネルギーが必要になります。食事から時間が経っている食前は、余分な血糖がないため、体内でエネルギー源となるのが脂肪しか残っていません。そのため、食前に運動を実施することで脂質代謝が促されることになるのです。
そして、空腹の状態で運動を行うと、ミトコンドリアの数が増えることになります。脂肪からエネルギーを作らなければいけない状況にあるため、ミトコンドリアが増殖することで対応するのです。
このような理由から、食前の運動は脂質代謝を促すことになります。
食後の運動
食前だけでなく、食後の運動も脂肪の燃焼を促進させます。運動が食後の血糖値上昇を抑えるためです。
既に述べたように、食事によって血糖値が上昇すると、食後2~3時間はブドウ糖(血糖)からエネルギーが作られます。つまり、食後数時間は強制的に糖質代謝になっているのです。
食後に運動をすると、運動に必要なエネルギーを作るために血糖を消費します。そのため、血糖値の上昇が抑えられたり、高くなった血糖値をスムーズに下げたりすることにつながります。その結果、食後に短時間で脂質代謝に移行するのです。
このように、食後に運動することも脂質代謝を促すために有効な方法だといえます。
無酸素運動ではなく有酸素運動を実施することが大切
ここまで述べたように、食前や食後の運動は脂肪の燃焼を促すために効果的です。ただ、運動は無酸素運動ではなく有酸素運動を実施するようにしましょう。ミトコンドリアが働くためには酸素が必要である上に、食後にハードな運動を行うと消化・吸収が妨げられるためです。
ミトコンドリアが脂肪からエネルギーを作り出すためには、酸素が必要不可欠になります。そのため、無酸素運動であるハードな筋トレやキツイ運動を行うと、脂肪ではなくブドウ糖がエネルギー源として利用されます。つまり、ミトコンドリアを活性化して脂質代謝を促すためには、有酸素運動であることが必須ということです。
また食後にハードな運動を行うと、運動によって胃腸の働きが抑えられて、食事からとった栄養素が吸収されなくなります。
食後すぐに運動を実施してお腹が痛くなる現象は、誰でも経験があることだと思います。これは、運動によって胃腸の活動が悪くなった結果として起こる現象です。
こうしたことから、脂肪の燃焼を促す目的で運動する場合には、有酸素運動を実施するようにしましょう。
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・ダイエットで成功するための効果的な筋トレ方法
ミトコンドリアを活性化する生活習慣
さらに、脂質代謝を活性化するためには、生活習慣を整えることも重要になります。不規則な生活は、ミトコンドリアの働きを妨げることにつながるためです。
そこで以下に、脂質代謝を促す生活習慣について記します。
良質かつ十分な睡眠(休息)
既に述べたように、睡眠不足や過剰な運動は、ミトコンドリアの働きを妨げる活性酸素を大量に作る原因になります。そのため、ミトコンドリアによる脂肪燃焼を促すためには、良質かつ十分な睡眠をとったり、体を休めたりすることが重要です。
ミトコンドリアの働きを良くするために、少なくても6~7時間の睡眠は確保するようにしましょう。理想は8時間の睡眠ですが、難しい場合は6~7時間の睡眠に加えて、横になる時間を作ると良いです。
このように、脂質代謝を促すために体を十分に休める時間を確保しましょう。
<関連記事>
・睡眠不足は太る原因となる?睡眠とダイエットの関係性
・睡眠によるダイエット効果を高める栄養素のまとめ
ストレスケア
ストレスケアも、睡眠や休息と同じように活性酸素の発生を抑えて脂質代謝を促すことにつながります。ストレスが活性酸素を作り出す原因になるためです。
例えば、ヨガやピラティス、エアロビクスなどの運動にはストレスを軽減させる効果があります。また、読書や庭いじり、陶芸などの趣味があれば、趣味に没頭することも心身をリラックスさせます。
このように、ストレスケアを行うことも、脂質代謝を活性化させるためには大切です。
体を温める
体を温めて体温を上げることも、脂肪の燃焼を促す効果があります。体温が低い状態だと、ミトコンドリアの働きが悪くなるためです。
具体的には、体温が36.5以下になるとミトコンドリアの活動が低下します。ミトコンドリアは温度依存的な性質があり、低体温では適切に働かなくなるのです。そのため、アイスや冷たい飲み物などを飲むなど、体を冷やすような習慣は脂肪の燃焼を低下させることになります。
こうしたことから、体温を高く維持することは、脂質代謝を促すために大切だといえます。
断食(ファスティング)
断食(ファスティング)を行うことも、脂質代謝を促すために有効です。断食によって食事から糖分を摂らなくなると、強制的に脂肪がエネルギー源として利用されるためです。
既に述べたように、血液中に余分な糖分が存在している(血糖値が高い)ときは、脂肪ではなくブドウ糖がエネルギー源として使われます。その一方で血糖が少ないときには、脂肪がエネルギー源として利用されます。
断食によって糖分の摂取を断つと、血液中に余分な糖分がなくなるため、脂肪を燃焼してエネルギーを作らざるを得なくなるのです。
このような理由から、断食は脂質代謝を促すために有効な手段だといえます。
小胞体ストレスとミトコンドリアダイエット
また断食には、「小胞体ストレス」を防ぐことで、ミトコンドリアを活性化する効果もあります。
小胞体とはミトコンドリアと同じように細胞内に存在しており、体内でタンパク質を作り出す役割をもつ器官です。小胞体ストレスとは、小胞体でタンパク質が適切に作られなくなった結果、不良のタンパク質が小胞体内に蓄積される現象をいいます。つまり、小胞体ストレスとは「小胞体内にゴミ(不良タンパク質)が溜まった状態」です。
こうした小胞体は、ミトコンドリアと相互に働いています。そのため、小胞体の活動が悪くなるとミトコンドリアへ影響を与えますし、ミトコンドリアに問題が生じると小胞体にも悪影響が及びます。
こうしたことから、小胞体ストレスが生じると、ミトコンドリアの活動が悪くなるのです。
そして、断食には小胞体ストレスを軽減させる効果があることが明らかになっています。断食によって、小胞体内で円滑にタンパク質が作られるようになるのです。
このように断食を行うことは、小胞体ストレスを防いでミトコンドリアの活性化につながります。
小胞体ストレスを軽減させる方法を以下にまとめます。
・断食
・日光浴(HSP:ヒートショックプロテイン)
・タンパク質制限
・抗酸化対策
・オメガ3系脂肪酸の摂取(青魚など)
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今回述べたように、健康的に痩せるためには脂質代謝を活性化することが重要です。そして、脂質代謝を高めるポイントとなるのがミトコンドリアになります。
ミトコンドリアが活発に活動すると、脂肪がエネルギー源として利用されるため、どんどん体重が減ります。また、ミトコンドリアが適切に働いていれば、エネルギー不足に陥りにくくなるため、疲れにくくなるのです。
こうしたことから、健康的に痩せるためにも、ミトコンドリアの働きを高めるような生活を心がけるようにしましょう。
特に、「糖質制限をしても痩せない」「脂肪を食べると太る」「食後数時間経つと強い空腹感が起こる」という悩みをもつ人は、脂質代謝が低下している可能性を疑うようにしてください。