痛み・疼痛

痛みを我慢してはいけない理由:疼痛は体への警告信号である

痛みは多くの人を悩ませる症状です。とくに肩こりや腰痛は、ほとんどの日本人が体験したことのある痛みではないでしょうか。
私は体の専門家である理学療法士として、毎日このような症状を訴える人と向き合っています。その中で、私が一番大事だと感じるのは、患者さん自身で痛みが管理できることです。
多くの人は、身体に痛みが生じると病院に行きます。そして病院では、痛み止めが処方されるか、もしくは電気をあてられるくらいの処置が一般的です。
しかし、痛みが出るということは何らかの意味があります。このことを理解しておくと、あなた自身の痛みに対する対応も変わるはずです。そして、ある程度の痛みまでは病院に行かなくても管理する力がつきます。
そこで今回は、痛みが出現する意味について解説します。
 痛みの出現は警告信号
痛みは体にとって絶対必要なものです。人の体は、体自身が壊れないような仕組みになっています。痛みは、そのための警告信号として使われます。
例えば肩に痛みがあり、腕を水平より高く挙げようとすると、痛みで腕を挙げることができないとします。このようなとき、実は肩の関節のなかでは、それ以上腕を挙げてしまうと関節のなかにある組織が壊れてしまうような状態になっているのです。
関節は2つの骨から構成されますが、その骨同士の「かみ合わせ(適合性)が合っていることで、滑らかに動くことができます。
またかみ合わせが悪いと、軟骨などの関節の中にある組織に負担がかかります。
そして先ほどの例で言うと、体は「これ以上腕を挙げると関節のかみ合わせが維持できない状態になってしまう」ということを、痛みという不快な感覚を使って、あなた自身に知らせているのです。
つまり、関節の中の組織が壊れないようにしているということです。
 痛みを我慢すると体は壊れる
これは体のどの部位でも同じです。例えば、ひざを曲げると痛いという人は多いです。そして病院では、「固まるから痛みを我慢して曲げなさい」と言われます。
しかし先ほど述べたように、痛みがあるということは「これ以上曲げると関節が壊れる」という体からの警告信号です。つまり、痛みを我慢して無理に曲げると、さらに関節の中にある組織が損傷するため、痛みが増悪します。
そうなると体は、ひざの周りの筋肉などを硬くし、もっとひざが曲がらないようにします。
このようにして、どんどん「痛み→動きの制限→痛み」というような悪循環に入り込んでしまうのです。
マッサージなどを行って体が痛くなった場合も、同じように考えることができます。マッサージでは硬くなった筋肉をほぐしますが、先ほど述べたように、筋肉が硬くなるということには意味があります。
確かに使い過ぎで硬くなった分は、マッサージで柔らかくしても良いと思います。
しかし、もしその筋肉の硬さが関節を守るための反応であった場合、それを柔らかくしてしまうと関節の中の組織に負担がかかるため、痛みが出現します。
以上のように、痛みは体の警告信号であり、それを無視すると関節は壊れます。痛みが出たときに、まずあなたが注意することは、痛みを我慢しないということです。
多くの痛みは、痛みを我慢して行っていることを止めることで落ち着くはずです。