病気に対する考え方

健康や障害予防のためには痛みのメカニズム(機序)を理解すべき

障害予防を行う上で、あなた自身が、痛みの発生するメカニズムを理解しておくことは重要です。メカニズムを知っておくことで、疼痛の予防はもちろんのこと、実際に痛めた場合であっても適切な対処が可能になります。
また、体に起こる痛みの多くは自律神経に原因があります。そして、自律神経の問題の多くは生活習慣の不摂生から生じます。そのため、疼痛をはじめとする体の不調の根本的治癒には、あなた自身が変わる必要があります。
そこで今回は、「病気が起こるプロセス」について解説します。
 病気と自律神経の関係
病気の多くは、自律神経が原因で起こります。自律神経とは、心臓や消化器などの臓器の働きを意識とは関係なく調整する神経です。また、自律神経は興奮時に働く「交感神経」と、リラックス時に活動する「副交感神経」の2つに分けられます。
この2つの神経がお互いに作用しあうことで、体の働きが調整されます。また、自律神経は、生命維持に関わる重要な臓器を支配しています。そのため、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで、それらの機能が障害されます。
ほとんどの病気は、このように自律神経のバランスが崩れることで発症します。
例えば、交感神経が過剰に働くと、体内には「活性酸素」が増えます。活性酸素は、細胞の損傷を引き起こします。そのため、活性酸素が増えた場合、組織にさまざまな障害が起こり、その働きが低下します。
具体的には、膵臓には血糖値のコントロールを行う「インスリン」というホルモンを作る働きがあります。もし交感神経の働きが強くなり、膵臓に活性酸素が多量に発生すると、膵臓細胞の働きが低下し、血糖コントロールが障害されます。その結果、糖尿病になります。
また、交感神経には体を興奮させる作用があります。そのため、交感神経の活動が活発になると、血圧が上昇します。
血圧が上昇すると、通常では副交感神経の働きによって血圧は正常範囲に戻ります。しかし、自律神経のバランスが障害されていると、副交感神経が適切に働かず、血圧は高いままになります。これが、高血圧の原因です。
逆に、副交感神経が過剰に働くことで起こる病気もあります。「うつ状態」は、その典型です。副交感神経は、体をリラックスさせる役割を持っています。そのため、副交感神経の適度な活性化は、体にとって良い影響を与えます。その一方で、作用が極端になると気力が起きない状態になります。
また、このとき交感神経が適度に反応すれば、うつ状態になることはありません。しかし、ほとんどの場合、副交感神経が過剰に働いていると、交感神経は適切に作用しません。これが、うつ状態と自律神経の関係です。
このように、多くの病気は自律神経のバランスが崩れることによって起こります。
 痛みと自律神経の関係
実は、体の痛みの大半も他の病気と同様に、自律神経の問題によって起こります。疼痛の多くは関節から生じますが、それは、関節の適合性が悪いことで引き起こされます。関節は、噛み合わせが合っていることで機能を発揮します。
関節には、周りの筋肉を適切に働かせたり関節の動きを滑らかにしたりする機能があります。また、関節にかかる力を分散する役割も持っています。
そのため、適合性が悪くなると、筋力低下や可動域の制限、痛みが起こります
そして、この関節の適合性低下は、背骨の硬さによって引き起こされます。背骨には、バランスをとる働きと体にかかる衝撃を吸収する作用があります。
背骨が硬くバランス能力が低下していると、体は筋肉を緊張させ、バランスを崩さないようにします。ほとんどの筋肉は、関節周りについています。そのため、筋肉が硬くなると、関節の動きに影響を及ぼし、関節の適合性を低下させます。
また、背骨の硬さは自律神経の問題によって起こります。背骨には、自律神経の司令塔である「神経節」というものがあります。神経節は、自律神経のバランスが崩れると、背骨周りの筋肉を緊張させるような反射を誘発します。
そのため、自律神経のバランスが悪くなると、背骨の動きが制限されるのです。
以上のように、一般的に知られる病気も、ひざなどの体の痛みも、原因は自律神経にあります。このような病気のプロセスを知ることで、その本質を理解することができます。
体に起こる不調の本質は、自律神経にあります。世の中にある優れた治療のほとんどは、この自律神経に働きかけるものであり、それ以外のものは対処的な処置であるということを知っておいてください。
そして、自律神経の働きは生活習慣によって良くも悪くもなります。つまり、何の病気にしても、治癒のカギを握るのはあなた自身だということを理解しておいてください。