あなたは「健康を維持するためには自律神経の働きが大切である」と聞いたことはないでしょうか? おそらく、テレビや雑誌などで聞いたり見たりしたことがあるはずです。
ただ、自律神経が大切と言われても「そもそも自律神経って何?」て思いませんか? 手足を動かしたり、触った感覚を伝えたりする神経であればまだしも、自律神経はイメージができないのではないでしょうか?
そうはいっても、自律神経が健康を維持するために重要であることには間違いありません。自律神経について理解して生活に応用できれば、病院などに頼ることなくあなた自身で健康管理ができるようになります。
そこで今回は、自律神経について基本的なことを解説します。
自律神経とは
自律神経とは、簡単にいうと「心臓や血管、胃腸、肺の活動、汗などを無意識下でコントロールしている神経」です。人間は自律神経が存在するから生きていられます。
例えば、寝ている間にも心拍や呼吸が止まることはありません。これは、自律神経が心臓や肺の運動を調整しているためです。また食事をした後は、意識することなく食べ物が胃や腸で消化・吸収されます。
こうした、体内で起こる現象を無意識下で調整してくれているのが自律神経です。そして、自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つから構成されています。
交感神経とは
交感神経とは、自律神経の中でも体を興奮させる神経です。
例えば、朝には自然と目が覚めて体が起きた状態になります。これは、朝になると交感神経が強く働くために起こる現象です。他にも、運動をすると意識しなくても心拍数が多くなるのも、交感神経の働きによるものです。
つまり、体を動かしたり、怒ったりしたときに、心拍数や呼吸数を多くするなど、体を興奮させて戦闘体勢にする神経が交感神経になります。
交感神経が働くことで起こる反応を以下にまとめます。
・瞳孔散瞳
・涙腺分泌抑制
・唾液分泌抑制
・心拍数亢進
・胃腸運動抑制
・四肢の血管収縮
・立毛筋収縮
・汗腺分泌亢進
副交感神経とは
交感神経とは対照的に、副交感神経は体をリラックスさせる神経です。
例えば、夜には自然と眠くなります。これは、夜になると副交感神経が強く働くために起こる現象です。他にも、お風呂に入ると体がリラックスするのも、副交感神経の働きによるものです。
つまり、ゆっくり休んだり、お風呂に入ったりしたときに、心拍数や呼吸数を少なくするなど、体をリラックスさせて休息状態にする神経が副交感神経になります。
副交感神経が働くことで起こる反応を以下にまとめます。
・瞳孔縮瞳
・涙腺分泌亢進
・唾液分泌亢進
・心拍数抑制
・胃腸運動亢進
・四肢の血管拡張
・立毛筋弛緩
・汗腺分泌抑制
交感神経と副交感神経がバランスをとっている
人間の体は、興奮させる交感神経とリラックスさせる副交感神経がお互いにバランスを取ることで、さまざまな働きをコントロールしています。基本的には、どちらか一方が強く働くときには、もう一方の働きは弱くなります。
通常、交感神経と副交感神経は以下のようにバランスを取っています。
常に交感神経と副交感神経のバランスは揺らいではいるものの、均衡を保っています。
その一方で、交感神経が強く働いているときは、以下のようなイメージになります。
例えば、日中は体を興奮させて活動しなければいけません。そのため、日中は交感神経が強く働いています。ただ、一日中交感神経によって体が興奮していると、疲れてしまいます。
想像してみてください。交感神経がずっと強く働いているということは、1日中全速力で走り続けるのと同じです。それが体にとって負担となることは想像できると思います。
また翌日に全速力で走れるようになるためには、体を休憩させなければいけません。つまり、1日のどこかで副交感神経を働かせることで体を休ませなければいけないのです。
そのため、日中には交感神経、夕方以降には副交感神経が強く働いてバランスをとっています。
そうすることで、活動すべきときには体を興奮させて、休息すべきときには体を休ませることで、翌日に疲れを残さないようにしているのです。
他にも、交感神経が胃腸の活動を悪くする一方で、副交感神経は胃腸の活動を活発にします。血管も同じであり、交感神経が血管を狭くして血流を悪くするのに対して、副交感神経は血管を広げて血流を良くします。
このように、交感神経と副交感神経はお互いにバランスをとることで、体の機能を調整しているのです。
交感神経と副交感神経のイメージ
ここまで述べたように、体の働きは自律神経である交感神経と副交感神経によってコントロールされています。自律神経は、どちらが強く働き過ぎても問題です。状況に合わせて交感神経と副交感神経の優劣が切り替わることが大切になります。
例えば、運動を始めると交感神経が働いて心拍数が多くなります。このとき、交感神経が働かなければ、運動するために必要な血液が筋肉へ送られません。
また、食べた後は胃腸が活動することで食べ物を消化・吸収します。既に述べたよう、副交感神経が働かないと胃腸は活発に動きません。そのため、食後に交感神経が働いたままになっていたり、運動して無理やり交感神経を緊張させたりすると、消化・吸収が上手く起こらなくなるのです。
このように、自律神経はどちらかが優位であれば良いというものではありません。普段は揺らぎながら均衡をとっている交感神経と副交感神経の優劣が、タイミングに応じて適切に切り替わることが重要です。
そうはいっても、自律神経のバランスはどちらかに傾いているのが一般的です。そこでここからは、交感神経と副交感神経のどちらか一方にバランスが傾むく原因について解説します。
交感神経が強くなる原因
交感神経が優位であるとは、以下のような状態です。
例えば、もともとの「セカセカしている」「几帳面」「神経質」といった性格の人は、交感神経が優位である可能性が高いです。性格が原因で交感神経が強い人はたくさんいます。
また、慢性的な睡眠不足やストレス、運動のし過ぎなどが原因でも交感神経が優位になります。ストレスで眠れなくなるのは、ストレスによって交感神経が刺激されて体が興奮することが原因です。
交感神経が強い状態では、心拍数や血圧が高くなったり、呼吸が浅くなったりします。さらに、交感神経には手足の血管を縮める働きがあるため、手足が冷えます。
このように、セカセカした性格や、睡眠不足などの生活習慣が原因で交感神経が強くなるのです。
ストレスが多い現代社会では、半数以上の人が交感神経が優位になっていることを知っておいてください。
副交感神経が強くなる原因
一方で、副交感神経が優位であるとは、以下のような状態になります。
例えば、もともと「マイペース」「周りの目が気にならない」「大雑把」といった性格の人は、副交感神経が優位である可能性が高いです。
また過度な運動不足、遅寝遅起といったダラダラした生活も、副交感神経を強める原因となります。
副交感神経が強い状態では、心拍数や血圧が上がりにくくなって、気力が沸きにくくなります。さらに、副交感神経が優位になると脂肪が燃えにくくなるため、太りやすくなるのです。
このように、マイペースな性格や、運動不足などの生活習慣が原因で副交感神経が強くなります。
自律神経のバランスが崩れて起こる病気
最後に、交感神経と副交感神経の活動が過剰になることで起こりやすい病気の例をまとめます。
交感神経の活動過剰 |
副交感神経の活動過剰 |
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・肩こり ・五十肩 ・関節リウマチ ・耳鳴り ・関節痛、痺れ ・高血圧 ・頭痛 ・痔 ・脳梗塞 ・線維性筋痛症 ・静脈瘤 ・心筋梗塞 ・月経困難症 ・歯周病 ・狭心症 ・脱毛 ・子宮筋腫 ・子宮内膜症 ・冷え症 ・がん ・シミ、シワ、くすみ、ニキビ ・動脈硬化 ・胃潰瘍、十二指腸潰瘍 ・潰瘍性大腸炎、クローン病 ・白内障、緑内障 ・糖尿病 ・痛風 ・甲状腺機能障害 ・胃炎、肝炎 ・不眠、イライラ |
・アレルギー性疾患、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症 ・下痢 ・骨粗しょう症 ・かゆみ、しもやけ ・頭痛 ・虫垂炎、蜂窩織炎 ・うつ、気力減退 ・食欲亢進 ・肥満 |
今回述べたように、自律神経は交感神経と副交感神経の2つから作られており、これら2つがバランスをとることで、体の機能をコントロールしています。ただ、性格や生活習慣が原因で、どちらかが過剰に働いてしまうと、さまざまなトラブルの原因となるのです。特に現代社会では、ストレスなどで半数以上の人は交感神経が強くなっています。
こうした交感神経と副交感神経の基本的なことについて理解しておけば、あなたの性格や状態に合わせた生活をできるようになります。