子供の時に「冷たいものばかり食べるとお腹を壊すよ」と言われたことはないでしょうか。 スーパーやデパートに行くとアイスなど、冷たい食品がたくさんおかれています。
冷たいものを暑い日に食べたくなることはよくあります。しかし、冷たいものを食べすぎることは体に良いことだとはいえません。アイスやジュースなど、冷たいものを食べすぎると体に悪い影響を与えます。
例えば、冷たいものを食べると、体が冷えるのは、直観的にも理解できます。しかし、冷たいものが体に与える影響は、それだけに収まりません。実は冷たいものを食べることは、全身の病気にも関係しています。
そこで今回は、「冷たい食品が体に与える影響」について解説します。
進化の過程から考える腸の機能
体の健康に腸が関係していることは、一般的に認識されています。それでは、なぜ腸は、そこまで体の健康に影響するのでしょうか。その答えは、体の発生過程を紐解いていくと、わかります。
そこで以下に、腸の機能と、腸が体にとって重要な役割を持つ理由について解説します。
腸の機能
腸は、大きく小腸と大腸の2つに分けられます。そして、小腸はさらに「十二指腸」「空腸」「回腸」の3つ、大腸は「結腸」「直腸」の2つに分類されます。これらは消化管の一部であり、役割が違います。
消化管の機能は、食べた物から体に必要なものは取り入れ(吸収)、不必要なものは排泄することです。そして、食べ物の吸収は小腸で行われ、排泄は大腸がその役割を担っています。
食べた物は、最初に口腔や胃で消化されています。しかし、その状態では、小腸で吸収することができません。そのため、小腸でも、さらに小さく分解した後、吸収されます。
そして、小腸で吸収されなかった分は、大腸で水分を吸いとった後に、便として排泄されます。
このように、腸は小腸による栄養素の吸収と、大腸による老廃物の排泄という二つの役割があります。
腸と生物の進化
それでは、この腸はなぜ、消化機能、免疫機能を獲得するようになったのでしょう。それは人類の進化の過程を見ると、理解できます。
今から約40億年前に、地球上に最初の生物が誕生しました。そして、この原始的生物から、植物と動物の二方向に進化していきます。
植物は太陽エネルギーを利用することで、自分で生きることができるようになりました。これは、一般的に知られる「光合成」です。そして、光合成を行うためには、常に、場所を変えるより、ある場所に固着した方が定期的に光に当たることができるため、都合が良いです。そのため、植物は、動かず一定の場所で生命活動を行います。
一方、動物は、植物と違って、太陽エネルギーを使うことができませんでした。そのため、、他の生物のエネルギーを利用することで、生きる方向に進化しました。つまり、他の生物を食べ、そこからエネルギーを奪うということです。
そして、食べた生物は、そのままでは体のエネルギーにすることはできません。体内に取り込んだものは消化して吸収する必要があります。そのために、消化器官が生まれたのです。
つまり、消化は、動物の生命現象の根源をなすものであると言えます。
生き物として生きていくためには、生存に適した性質を持つ必要があります。そして、その性質とは、外界の変化に耐えられる能力とも言えます。気温や海水中のイオン濃度、水圧などの変化が起こっても、影響を受けにくい体である必要があります。
外界の変化として、気温の変化や、海水中のイオンの変化などがあります。そして、動物の世界で起こる他の生物に狙われることも外界の変化と言えます。敵に食われてしまっては、自分の生命を維持することはできません。そのため、生物は生きるために、食べることに特化する必要がありました。
そこで、そのような特性を備えたものとして、動物が最初に持った器官が腸です。
実際、生物の中には、脳や脊椎、心臓がないものはいます。ただ、腸がない動物は存在しません。これは、動物は腸がないと生きていけないということを表しています。
冷たい食品と病気の関係性
生物は、進化の過程において、生きるために体内へエネルギーを取り込む機能を持つ腸を獲得しました。そして、腸が存在するおかげで、生物は食べたものからエネルギーを作り出すことができます。
また、腸には栄養素の吸収以外にも「免疫機能」が備わっています。このことが、冷たい食品と病気の発症に関係しているのです。
そこで以下に、腸の免疫機能と冷たい食品が腸へ与える影響について記します。
腸には免疫機能がある
腸は、食べた物を消化吸収することで、体内に栄養素をとり込む役割があります。これは、具体的には、体外(まだ、吸収されていない口から大腸までの内部を表す)である腸内から、体内(吸収された後の血液内を表す)である血液内にさまざまなものを移動させるということです。
そして、その血液は口から大腸まで全身を巡っています。そのため、腸から吸収されたものは全身に達します。
ただ、なんでもむやみに吸収してしまうと、体にとって害のある物質も取りこんでしまう危険があります。そのため、腸には、腸内に入ってきたものが、「体にとって害があるか」ということを識別する機能が備わっています。
食べ物には、さまざまなウイルスや細菌などが付いています。もし腸に備わっているこの機能が低下してしまったら、それらの異物が体内に吸収されてしまいます。その結果、体は病気にかかってしまいます。
そして、腸から取り入れられたものは血液中に入るため、全身の細胞に届けられます。つまり、腸の機能が悪くなって異物を吸収してしまうと、全身のどこに問題が生じる可能性があります。
このような理由からも、腸の働きは全身の不調に関係しているいえます。
腸を冷やすと免疫機能が低下する
もし、あなたが冷たいものを食べたとしましょう。すると、腸に送られて、腸内の温度を低下させます。
そして、腸の働きは腸内の温度と深く関係しています。具体的には、腸の温度が低下し36度以下になると、腸の免疫機能は著しく低下します。
つまり、先ほど述べた「腸が異物を異物を識別する」という免疫機能に影響を与えます。そのため、冷たいものを食べると、体にとって有害なウイルスや細菌などの異物が、簡単に体内に入ってしまいます。
また、体温の低下は体の新陳代謝にも影響します。新陳代謝とは、体の古い細胞から新しい細胞へ入れ替えることをいいます。体の中に古い細胞が多くなると、消化吸収や免疫といった体内の持つ働きが悪くなってしまいます。
体は、新陳代謝を行うことで全身の各細胞の働きを活発にしています。体の組織は、全て細胞から構成されています。そのため、細胞の働きが悪くなると、体のあらゆる機能に悪影響を与える危険があります。
腸を冷やすと、腸内細菌の働きが弱くなる
既に述べたように、腸の温度が低くなると、腸からさまざまな有害なものが入り込みます。その中には、「腸内細菌」と呼ばれるものも含まれています。
腸内細菌とは、常に腸内に存在している細菌です。「善玉菌」「悪玉菌」「日和見(ひよりみ)菌」の3つの細菌があります。お互いの菌がバランスを取り合うことで、腸内環境を保っています。
腸内細菌は、腸の温度が低下することで血液中に取り込まれます。そして、腸内細菌が全身の細胞に送られると、細胞の活動を阻害する危険があります。例えば、免疫反応に関与する白血球細胞の働きも腸内細菌によって、阻害されてしまいます。すると、細胞の新陳代謝が悪くなり、結果として体の免疫機能が悪くなります。
このような理由からも、冷たいものを食べると、体の免疫機能は低下してしまいます。
今回述べたように、腸が冷えることで、異物を体外に排出する免疫機能の働きが著しく低下します。そのため、腸を冷やすような冷たい食べ物は、体の免疫機能を低下させて、さまざまな病気を引き起こす原因になります。
特に、高齢者や日頃から体が冷えやすいと感じている方は、できるだけ冷たいものは避けるようにすることが大切です。