人の特徴の1つとして、「話す」ということが挙げられます。このような口を使ったコミュニケーションは、他の動物ではあまり認められません。
人は、ほんとんどのコミュニケーションを言葉で行います。そのため、話すことが無い日は、よっぽどのことがない限りありません。また、人は1歳を過ぎた頃から話し始め、そこから何十年と毎日口を使って言葉を発し続けます。
実は、そのことが体の免疫機能に影響していることを知っているでしょうか。人は、話す機能を獲得した代償として、体の免疫機能の低下が起こりました。そして、そのことが多くの病気に関係しています。
そこで今回は、「口呼吸が体へ与える影響と口呼吸となっている人の特徴・症状」について解説します。
口呼吸と免疫の関係性
口呼吸を行うことは、体の免疫機能を低下させることにつながります。そのため、口呼吸はさまざまな病気の原因となる可能性があるのです。
そこで以下に、口呼吸と免疫機能の関係性について記します。
本来の呼吸器官は鼻
哺乳類において、本来呼吸器官として働くべき器官は、鼻です。これは、鼻に「空気に含まれる細菌やウイルスを除去し、適度に加湿・加温する機能」があるためです。このことによって、空気中の酸素が体に吸収されやすくなります。
そのため、本来の呼吸器官は、口ではなく、鼻ということです。
鼻は「呼吸器の入り口」であり、口は「食べ物の入り口」です。通常では、体の構造も、このような役割を果たすような作りになっています。
しかし人は、「話す」という機能を獲得したため、口でも呼吸ができるようになりました。そして、多くの人が、鼻で呼吸するのではなく、口で呼吸をすることが、無意識のうちに常習化してしまっているのです。
また、鼻が詰まっている人は、特に口呼吸の傾向にあります。起床時に、口の中が渇いているような人は、注意が必要です。
口呼吸と免疫機能の関係性
本来の呼吸器官は、鼻です。また、多くの慢性的な病気の原因は、口呼吸にあると言われています。
鼻と違って、口には細菌やウイルスを除去する機能(免疫機能)はありません。また、空気を加湿・加温する働きもないため、喉にある「扁桃腺」が冷えます。
通常、扁桃腺には、口から入った異物が体内に侵入しないように防衛する働き(免疫機能)があります。しかし、冷たい空気によって冷やされると、その機能が低下します。そうなると、扁桃腺に入ってきた、細菌やウイルスは全身にばらまかれます。
このことで、さまざまな組織や器官の細胞が侵されます。そして、結果的に全身にいろいろな不調が現れます。
また、腸にも扁桃腺と同じような機能があります。冷たいものを食べて、腸を冷やすことが良くないのは、今述べたようなことと同じことが、腸でも起こるためです。人の問題は、口呼吸だけでなく、冷たいものを摂取していることにもあります。
そして、体にどのような問題が現れるかは、どこの組織や器官が障害されるかによって異なります。血管が障害されると動脈硬化を引き起こしますし、肝臓であれば肝炎になるかもしれません。
以下に、内臓における代表的な例を挙げます。
組織・器官 |
病気 |
目 |
・網膜症 ・ぶどう膜炎 ・シェーグレン症候群 ・緑内障、白内障 |
内耳 |
・耳鳴、難聴 ・メニエール病 |
鼻、のど |
・鼻炎 ・扁桃炎 |
口腔 |
・口内炎 |
肺 |
・肺炎 ・肺気腫 ・気管支炎 |
血管 |
・動脈硬化症 ・レイノー病 |
肝臓 |
・肝炎 |
消化管 |
・クローン病 ・胃腸炎 ・胃潰瘍 ・十二指腸潰瘍 |
大腸 |
・潰瘍性大腸炎 |
また、他にも、膵臓が侵されると「糖尿病」、腎臓が障害されると「腎炎」など、その影響は全身に及びます。
口呼吸の人における特徴
本来、人は鼻で呼吸をすることが適切です。鼻には、外から入る細菌やウイルスなどの外敵や、冷たい乾燥した空気から体を守る役割があります。しかし、多くの人は口で呼吸を行います。これには、「話す」という行為が関係しています。
そして、慢性病の多くに口呼吸が関係していると言われています。
そこで以下に、口呼吸の人における特徴について解説します。
口呼吸の特徴
口呼吸が習慣化してしまうと、さまざまな症状が出現します。病気の発症までは進行していなくても、多くの自覚症状があるはずです。
以下にその例を挙げます。
体の不調 |
現象 |
・寝ても疲れがとれない ・風邪をひきやすい ・口臭、歯周病 ・肌荒れ、シミ、しわ ・便秘、下痢 ・むくみ ・アレルギー ・生理痛 ・肩こり、頭痛、腰痛 ・冷え性 ・花粉症 ・起床時の、のどの痛み ・低体温 |
・出っ歯、歯並びが悪い ・起床時の、口腔内の乾燥 ・片側噛み ・腑抜け顔 ・姿勢の崩れ ・いびき、歯ぎしり |
もしこの中で、1つでも当てはまる症状があれば、口呼吸が常習化している可能性があります。
呼吸は、起きているときは意識して行えるため、鼻で呼吸することができます。しかし、問題は寝ているときであり、無意識に口呼吸になってしまいます。そのため、いかに就寝中に鼻呼吸を行えるかは、重要なポイントになります。
例えば、鼻が詰まっていたりすると、就寝中は自然と口呼吸になります。このような場合は、体温と同じくらいの生理食塩水で鼻の中を洗うと、鼻詰まりは解消されます。
また、呼吸は自律神経によってコントロールされています。自律神経が安定していると、呼吸のリズムも安定し、鼻でのゆっくりした呼吸が行えます。しかし、自律神経のバランスが崩れると、呼吸が荒くなり、口呼吸を行うようになります。
自律神経を乱すのは、睡眠不足やストレス、過度な運動です。このような要因が考えられる場合は、生活習慣を見直す必要があります。
実は、口呼吸になる原因のほとんどが、この自律神経にあるのです。
今回述べたように、人の本来の呼吸は鼻呼吸です。しかし、人は「話す」という機能を獲得した代償に、口呼吸を行うようになりました。その体への影響は多大なものであり、全身の細胞や組織に及びます。そのため、便秘や肌荒れ、体の痛み、生理痛などさまざまな症状に関係しています。
そして、口呼吸の習慣化は、生活習慣の不摂生から起こる自律神経の不調によって引き起こされます。つまり、口呼吸を改善するには、生活習慣の見直しが必須ということです。