腸は、お腹の大部分を占める臓器です。食べ物が消化され、吸収・排泄する場所として知られています。また腸は、「第二の脳」と言われるくらい精密な働きをします。そして、その役割の1つに免疫機能があります。
免疫という言葉は、よく聞くかと思いますが、具体的にはイメージしにくいものです。どこがどのような働きをすることで、体の免疫機能を維持しているのでしょうか。
腸は最大の免疫器官と言われています。腸の表面積は、広げるとテニスコート2面分もあるとされています。特に、穀物を食事の中心とした日本人には、他の国の人と比べて腸が長いという特徴があります。
そこで今回は、腸の免疫機能について解説します。
酵素の働き
腸には、食べ物から栄養素を吸収する役割があります。しかし、腸は食べた物をそのままとり込むことはできません。ある程度の大きさに分解されることで、その栄養素をとり込むことができるようになります。
このとき、食べ物を分解するために、口や胃内から分泌されるものを、「消化酵素」といいます。酵素とは、体の中で起こる反応をスムーズにするためのものです。
体内に存在する酵素には、消化酵素と「代謝酵素」の2つがあります。代謝酵素とは、細胞の活動をスムーズにするために必要な酵素です。体は、全て細胞によって構成されています。そのため、代謝酵素が不足すると、全身の細胞の働きが低下し、さまざまな不調が生じます。
基本的に、体にある酵素は、一定量で決まっており、増えることはありません。そのため、消化酵素を過剰に使いすぎると、代謝のために利用できる酵素量が減ります。
つまり、消化に負担がかかるものを食べ過ぎると、無駄に消化酵素を使ってしまいます。それにより、全身の細胞の働きが悪くなります。また、よく噛むことは、食べ物の分解を助けます。これによって、消化酵素の無駄使いを減らすことができます。
このように、「酵素」は体内で重要な働きをします。そのため、酵素は体にとって大事なものです。
腸の免疫機能
腸の基本的な役割は、食べ物を吸収することです。食べた物は、口の中や胃の酵素によって消化され、腸からとり込みやすい形に分解されます。そして、腸に達した食べ物の中で、体に入っても大丈夫な物は、腸から血液中に移動します。
腸は、食べ物を吸収するとき、それが体にとって安全なものかどうかを識別しています。食べ物には、常に細菌などが付着しています。その異物が血液中に入ると病気になります。
そのため、腸は、腸内に入ってきたものが、安全で体にとって有益な微生物なのか、体に害を及ぼす細菌やウイルスなのかを見極めます。そして、安全なものは受け入れ、悪いものは排除するという作業を行っています。これが、腸の免疫機能です。
さらに、血液にとり込まれたものは、もう一度肝臓で検査され、体にとって毒性がないかを調べられます。そこで、体に問題がないと判断されると、全身の血液中に送り出されます。
このように、体は、腸と肝臓の2カ所で、食べた物が安全なものかを監視しています。
腸には、このような重要な役割があります。そのためか、体の免疫システムの約7割が腸に集中していると言われています。さらに、腸には、脳の次に神経細胞が多く存在します。そのため、腸はこのような精巧な働きができるのです。
今回述べたように、腸は、口から入ってきた食べ物が、体にとって安全なものかどうかを識別する機能があります。そして、体にとって問題のないものは血液中に吸収し、害となるものは排泄します。
腸には、このような生命維持に不可欠な役割があります。そのため、腸内環境を整えておくことは大事です。