「お風呂への入り方を工夫するだけで痩せる」ということを聞いたことがあるでしょうか?
ダイエットを成功させるためには、食事が最も重要です。ただそうした中でも、食生活以外の生活習慣も意識することは、ダイエットの効果を高めることにつながります。
そして、生活習慣の中でも「お風呂の入り方」は痩せるために重要です。お風呂は、入り方次第で自律神経やホルモンのバランスを整えて痩せやすい体質を作りやすくします。
しかしそうはいっても、ちまたで流行っている「お風呂ダイエット」のように「食事や運動を全く意識せずにお風呂に入るだけで痩せる」ということはありません。ダイエットにおいて、お風呂はあくまで食事のサポートと考えることが大切です。
そこで今回は、「痩せるお風呂の入り方」について解説します。
お風呂に入ることで得られる痩せ効果とは?
お風呂に入る際にシャワーではなく浴槽につかるのは、ダイエットの効果を高めることになります。そして、お風呂に入ることで得られるダイエット効果としては、主に「リラックス効果」「代謝促進効果」「睡眠促進効果」という3つが挙げられます。
リラックス効果で自律神経が整って痩せる
一般的にイメージされているように、お風呂に入ることにはリラックス効果があります。お風呂の入り方を工夫すれば「自律神経」を整えることができるのです。
お風呂に入ることには、自律神経の中でも副交感神経を活性化させて体をリラックスさせる効果があります。
現代人は、ストレスや睡眠不足などで交感神経の働きが活発になって、自律神経のバランスが崩れている人がほとんどです。そのため、お風呂に入って副交感神経の働きを活発にすることができれば、自律神経のバランスが整うことになります。
そして、自律神経は体重の増減をコントロールする「ホルモン」のバランスを調整しています。つまり、自律神経のバランスが整うと、体重増減に関わるホルモンのバランスも適切になるため太りにくくなるのです。
このように、お風呂に入ることでリラックスすれば、自律神経が整い結果的に痩せやすい体質を作ることにつながります。
代謝促進効果で痩せやすくなる
入浴することには、体を温めて血流を良くして体の代謝を高める効果があります。お風呂に入ると、体がポカポカして発汗するのは代謝が良くなるために起こる現象です。
入浴して体が温まると、血管が広がるため血流が良くなります。その結果、代謝が良くなり、痩せやすくなるのです。
もちろん、一回の入浴で代謝が一時的に良くなったからといって「消費カロリーが増して痩せる」ということはありません。ただ、毎日入浴して体を温めるようにしておけば、自然と代謝が高くなり、結果的に痩せやすい体質を作ることができるのです。
このように、入浴することには代謝を良くして痩せやすい体質を作る効果があります。
睡眠促進効果によって痩せる
お風呂に入ることには、良質な睡眠を促す効果があります。それは、人の眠気に「深部体温(脳や内臓などの中心部における体温)の低下」が関係しているためです。
人の体には「深部体温が下がると眠気が生じる」という仕組みが備わっています。実際に「お風呂に入った後に眠気が強くなる」という体験をしたことがある人は多いはずです。これは、入浴によって一時的に深部体温が高くなるため、お風呂から上がった後に深部体温が一気に下がることで起こる現象です。
こうしたメカニズムによって、入浴して体が温まるとスムーズに眠れるようになります。
そして、良質な睡眠を取ることには肥満を防ぐ効果があります。具体的には、睡眠時間が短くなると「食欲が増す」「代謝が悪くなる」「自律神経のバランスが崩れる」といったように、ダイエットにとって好ましくない状態になります。
ちなみに、睡眠不足によるダイエットへの影響は「お風呂ダイエットだけでは痩せることはできません。もちろん、正しい入浴方法を実践することはダイエット効果を高めることにはつながります。しかし、お風呂はあくまでサポートであって、お風呂に入るだけで痩せることはありません。
そこで以下に、お風呂ダイエットだけでは痩せない理由について記します。
お風呂ダイエットのメカニズム
お風呂ダイエットで痩せるメカニズムは、主に「入浴方法を工夫することで消費カロリーが増えるため」と説明されています。つまり、カロリーを消費することで、その分だけ痩せやすくなるというメカニズムです。
具体的には、お風呂ダイエットの方法を実践すると「20分の入浴で300~400キロカロリーも消費できる」といわれています。300~400キロカロリーというと、ウォーキングであれば1時間、ジョギングだと30分実施して、やっと消費できるカロリー量です。
お風呂の入り方を工夫するだけで、これだけのカロリー量を消費できるのであれば、かなりのダイエット効果がありそうな印象を受けます。
お風呂ダイエットにおける「高温反復入浴」
お風呂で消費カロリーを高める方法として「高温反復入浴」が挙げられます。高温反復入浴とは、簡単に言うと「高温のお湯に短時間浸かるのを繰り返す」という入浴方法です。
高温反復入浴法でカロリー消費が高まるメカニズムは「水圧と温度の2つによって体に負担がかかる」というものです。高温反復浴をすることで消費されるカロリーは、1回の入浴で300~400kcal程度になります。
基本的な高温反復入浴は、以下の順に従って行います。
1.かけ湯
お湯が熱いため、最初はかけ湯をして体をお湯に慣らします。かけ湯といってもお湯が熱いため、ざぶんと一気にかけないように注意しましょう。
2.入浴→休憩5分
2~3分間入浴する。その後、浴槽から出て約5分休憩する。このタイミングで、体か髪のどちらかを洗います。
3.入浴→休憩5分
2度目の入浴になります。2~3分入浴したら、また浴槽から出て5分休憩します。ここで、洗っていない部分を洗うようにしましょう。
4. ゆっくり入浴
2回目の入浴後に5分経った後は、5分間程度入浴する。
以上が高温反復入浴法の基本的な流れになります。ただ、短時間とはいえ高温であるため、体調が優れないときは行わないように注意してください。
こうした高温反復入浴を実施することで、消費カロリーを高められて、ダイエット効果を得られるのです。
そもそもカロリーを消費しても痩せない
しかし、基本的に体重の増減をコントロールしているのはカロリーではありません。そのため、お風呂の入り方を工夫してカロリーをいくら消費しても痩せないのです。
確かに、お風呂への入り方を工夫すれば、カロリーの消費量を増やすことはできます。
ただ、体重の増減は摂取カロリーと消費カロリーの計算では決まりません。多く消費して足りなくなった分のカロリーは、ホルモンによって調整されるためです。
具体的には、カロリーが足りないと、食欲が増して不足しているカロリーを補おうとします。また、代謝が下がることで、無駄にカロリーを消費しないように節約するのです。
つまり、いくらお風呂に入ってカロリーを消費しても、結局ホルモンによって調整されるため痩せません。
このように、脂肪蓄積のメカニズムについて考えると、そもそもお風呂に入ってカロリーを多く消費しても痩せることはないのです。
お風呂に入るだけでは痩せない
既に述べたように、お風呂ダイエットは「お風呂の入り方を工夫することで消費カロリーを高める」という理論によって痩せるダイエットです。しかし、そもそも消費カロリーは体重の増減にほとんど影響しないため、お風呂に入るだけで痩せることはありません。
ただ、入浴にはダイエットの効果を高める作用があります。そのため、正しい食事法と組み合わせることで、ダイエットをサポートすることにはなるのです。
このように、お風呂ダイエットにはダイエットの効果を高める作用は期待できますが、それだけで痩せる可能性は低いといえます。
痩せるお風呂の入り方
ここまで述べたように、お風呂に入るだけでは痩せることはできませんが、お風呂の入り方を工夫することでダイエット効果を高めることは可能です。
そこで以下に、お風呂によるダイエット効果を高めるポイントについて記します。
お風呂の温度は38~42℃にする
お風呂に入ることでダイエット効果を高めるために一番重要なのは、お湯の温度になります。
お風呂によるダイエット効果は、リラックスして自律神経を整えることで最大限発揮されます。そして、お風呂が自律神経に与える影響はお湯の温度によって大きく異なるのです。
具合的には、38~40℃のお湯は「不感温度」といわれ副交感神経の活動を高めます。その一方で、42℃以上は交感神経の活動を活発にします。
副交感神経を活性化させる温度は若干温めですが、自律神経を整えてダイエット効果を高めるのであればこれくらいの温度にすべきです。特に、42℃以上のお風呂に入ると睡眠に大きく影響する可能性が高いため注意が必要です。
このように、お風呂で自律神経を整えてダイエット効果を高めるためには、38~40℃のお湯に入ることが大切になります。
半身浴ではなく全身浴にする
また、入浴方法として半身浴を勧める人は少なくありません。しかし、自律神経のバランスを整えるためには、全身浴をすることが大切です。それは、首から背中にかけた部位に自律神経のポイントがあるためです。
自律神経は、背骨の近くを通って内臓や手足などの末端に伸びていき、それぞれの組織を支配します。そして、背骨の中でも首から背中にかけた位置に「自律神経節」と呼ばれる自律神経の司令塔があるのです。こうした自律神経節をお湯で温めると、非常に高いリラックス効果が得られます。
このことは、研究などで報告されているわけではありませんが、私が患者さんに対応してきた経験から間違いないと感じていることです。
例えば、肩が凝っているときなどに肩甲骨の間辺りを温めると、肩こりが軽くなるケースが多くあります。これは、背中にある自律神経節が刺激されて自律神経のバランスが整うために起こる現象です。
また、肩甲骨の間を温めると手先がポカポカしてきます。これも、自律神経の働きによって手の血管が広がって血流が良くなるために起こるものです。
このような理由から、お風呂でダイエット効果を高めるためには、半身浴ではなく全身浴で首までお湯につかるべきだといえます。
お風呂に入る時間帯はいつでも良い
ダイエットをしている人の中には、お風呂に入る時間帯が気になっている人が少なくありません。特に「食前」と「食後」のどちらでお風呂に入るべきかを悩んでいる人は多いです。
結論から述べると、食前であっても食後であってもダイエットに与える影響は小さいです。ただ理論としては、食前と食後では、お風呂がダイエットに及ぼす影響は全く違います。
・食前の入浴は食欲を抑える?
例えば、食前に入浴することには、食欲を抑える作用があるといわれています。これは「入浴することで全身に血液が回り胃に血液が集中しないため、胃酸の分泌が抑えられる」と説明されています。
確かに、胃酸を分泌させると同時に食欲を促すホルモンも存在します。そして、胃酸が増えると食欲も高くなる場合があるのは事実です。つまり、お風呂によって胃酸の分泌が少なくなれば、食欲が抑えられる可能性はあります。
こうした理論は、一見すると正論のように感じるかもしれません。しかし、入浴はやり方次第によっては体をリラックスさせます。体がリラックスするということは、副交感神経が活発に働くということです。そして、副交感神経は胃液の分泌を促します。
そのため、お風呂に入ってリラックスすることは、逆に食欲を促進することにつながるのです。
ただ、お風呂の温度が42℃以上であれば、副交感神経ではなく交感神経が活性化されるため胃の活動は抑えられます。つまり、食前に熱いお風呂に入れば、食欲は抑えられるのです。
このように、一言で食前に入浴するといっても、お風呂への入り方次第で体に対する作用は異なります。
・食後に入浴すると胃腸に血流が集まりにくい?
食後に入浴を勧めている人は少ないです。それは「入浴によって全身に血液が巡ると、胃腸に血流が集中しないため消化が悪くなる」という理由によって説明されています。
ただ既に述べたように、入浴が胃腸へ与える影響はお湯の温度によって全く異なります。そのため、この理論も正しいとはいえないのが実際です。
個人的には、食前でも食後であってもダイエット効果に与える影響はほとんど変わらないと考えています。
お風呂には20分程度入る
数分という短時間の入浴では、お風呂によるリラックス効果を得ることはできません。ただ、入浴によってリラックス効果が発揮される時間帯は人によって異なります。
例えば、私であれば10分程度入浴すれば、十分に体がリラックスすることが実感できます。その一方で、30分お風呂に入ってもリラックスできない人がいるのも事実です。
そのため、入浴時間は「体がポカポカしてきた」「気分がスッキリしてきた」「気持ちよくなってきた」というような、その人自身の感覚をもとに決めることが大切だと考えています。
しかし、基本的には20分程度お湯につかっていれば体はリラックスします。
このように、リラックス効果を得られる入浴時間は人によって異なるのが現状です。ただ、あまりに短時間ではリラックス効果は発揮されないため、だいたい10~20分は湯の中につかるようにしましょう。
入浴前後に水分を補給する
また、ほとんどの人は入浴中に発汗します。そして、汗をかいて水分補給をしないと脱水状態になります。脱水状態になると、ダイエットどころか体の健康に対して害が及びます。
そうしたことを避けるためにも、入浴前後にはわずかな量でもいいので必ず水分補給をするようにしましょう。
今回述べたように、お風呂は入り方を工夫することでダイエット効果を高めることにつながります。
以上に挙げたポイントを実践することで、お風呂によって痩せやすい体質を作ることができるようになるはずです。ぜひダイエットの効果を高めるためにも、お風呂の入り方を工夫するようにしましょう。