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甲状腺ホルモンに関する基礎知識:T3、T4とFT3、FT4の違い

甲状腺ホルモンって、複雑でイメージしにくいですよね?
甲状腺ホルモンには「トリヨードサイロニン(以下T3)・サイロキシン(以下T4)・遊離トリヨードサイロニン(以下FT3)・遊離サイロキシン(FT4)」など、さまざまな種類があります。血液検査を依頼する時や甲状腺ホルモンに問題が起こった時に正しく対処をするためには、違いを理解しておくことがとても重要です。
そこで今回は、甲状腺ホルモンの種類と、それぞれの特徴について詳しく解説します。

甲状腺ホルモン(T3、T4)の基礎知識に関するまとめ

・甲状腺ホルモンはT3とT4に分けられる
・T3は活性型でT4は不活性型であり、甲状腺ホルモンとしての作用を発揮するのは主にT3
・血液中でタンパク質と結合していない甲状腺ホルモンをFT3、FT4という
・血液中に存在する大半の甲状腺ホルモンはタンパク質と結合しているが、実際に甲状腺ホルモンの作用を発揮するのはFT3とFT4

甲状腺ホルモン(TH:Thyroid hormone)とは?

甲状腺ホルモンとは、その名の通り甲状腺で作られるホルモンです。主に「T4(サイロキシン)」「T3(トリヨードサイロニン)」の2つに分類されます。
甲状腺から分泌されるのはT4が圧倒的に多く、T4はT3の約3倍の量が甲状腺から分泌されます。
ただ、細胞内で甲状腺ホルモンとしての役割を果たすのは主にT3です。そのため、甲状腺からT4が作られた後は、さまざまなメカニズムによってT3に変換されて、最終的に甲状腺ホルモンとして働くようになります。

甲状腺ホルモンであるT3、T4とは?

すでに述べたように、甲状腺ホルモンはT3とT4に分けられます。
ただ、T4はT3と比較すると甲状腺ホルモンとしての働きが非常に弱いです。そのため、甲状腺ホルモンとして作用を発揮するのは主にT3であるといえます。
甲状腺ホルモンであるT4とT3は甲状腺で作られますが、その大半はT4です。しかし、T4の状態では甲状腺ホルモンとしての働きが弱いために、さまざまな組織(末梢組織)でT3へ変換されます。そしてT3となって、初めて甲状腺ホルモンとしての役割を果たすのです。

t3 t4

*正確には甲状腺から血中に出たときは、T4、T3ではなく後に述べるFT4とFT3の形となっています。
このように、一言で甲状腺ホルモンといっても作用が弱いT4と作用が強いT3の2つがあります。

甲状腺ホルモンの調整ホルモン:TRH、TSH

甲状腺で作られる甲状腺ホルモンの分泌は、脳で作られるホルモンによって調整されています。
具体的には、脳の「視床下部」から分泌される「TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)」と、「下垂体(前葉)」から分泌される「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」によってコントロールされています。
例えば、視床下部からTRHが分泌されると、TRHが下垂体を刺激してTSHが放出されます。そして、TSHが甲状腺を刺激して甲状腺ホルモン(T4、T3)が分泌されるのです。
既に述べたように、甲状腺から分泌されるホルモンの大半はT4になります。そのため、最終的にはT4がさまざまな場所(末梢組織)でT3に変換されて、甲状腺ホルモンとしての役割を果たすのです。

t3 t4

このように、甲状腺ホルモンの調整には脳で作られるホルモンが関与しています。

T3、T4とFT3、FT4の違い

甲状腺ホルモンについて勉強すると、T3とT4ではなく「FT3(遊離トリヨードサイロニン)」「FT4(遊離サイロキシン)」という言葉が出てきます。
甲状腺ホルモンについて理解するためには、「T3、T4」と「FT3、FT4」の違いについて理解しておくことが重要です。
以下に、T3とT4、FT3とFT4の違いについて解説します。

甲状腺ホルモンはタンパク質と結合する

甲状腺で作られたT3とT4は、甲状腺から血液中に放出されます。
そして、血液中に入ったT3とT4の大半は、すぐに血液中に存在する「TBG(サイロキシン結合タンパク)」「TRR(トランスサイレチン)」「アルブミン」といったタンパク質と結合します。血液という海の中を、甲状腺ホルモンがタンパク質という船に乗って移動しているイメージです。
ただ、中にはタンパク質と結合せずに血液中に存在している甲状腺ホルモンもあります。
つまり、甲状腺ホルモンといっても、血液中ではタンパク質に結合しているものと、そうでないものがあるのです。
タンパク質に結合している甲状腺ホルモンがT4、T3になります。そして、タンパク質とくっついていない甲状腺ホルモンが「FT3」「FT4」です。FTの「F」は「Free:遊離」であり、FTは「タンパク質から離れている甲状腺ホルモン」という意味になります。
このように、「血液中でタンパク質と結合しているかどうか?」ということが、T3、T4とFT3、FT4の違いになります。

t3 t4

甲状腺ホルモンとして働くのはFT3とFT4

甲状腺ホルモンとしての作用を発揮するためには、血液中から細胞内に入らなければいけません。T4とT3が細胞内に入って、初めて甲状腺ホルモンとして働くのです。
そして、血液から細胞内に入るのはタンパク質と結合していないFT3とFT4になります。血液中に存在する甲状腺ホルモンの大半はタンパク質と結合していますが、実際に甲状腺ホルモンとして働くのは、わずかなFT3とFT4なのです。
甲状腺ホルモンを血液検査で調べるときには、基本的にはFT3とFT4が測られます。T3とT4だと、結合しているタンパク質(TBGやTRR、アルブミン)の量に数値が左右されるためです。また先に述べたように、実際に甲状腺ホルモンとして作用するのはT3とT4ではなく、FT3とFT4です。
ただ、病院によってはT3とT4を測っているところと、FT3とFT4を測っているところがあります。
そのため、甲状腺ホルモンを測るときには、T3、T4とFT3、FT4のどちらを測っているかを確認しなければいけないのです。
ちなみに、それぞれの正常値を以下に記します。


甲状腺ホルモン 基準値
FT4(遊離サイロキシン) 0.8~1.6ng/dl
T4(サイロキシン) 4.87~11.70μg/dl
FT3(遊離トリヨードサイロニン) 2.2~4.3pg/ml
T3(トリヨードサイロニン) 0.58~1.59ng/ml

rT3とは?

甲状腺ホルモンには、T3やT4、FT3、FT4とは別に、「rT3(reverse T3)」と呼ばれるものも存在します。rT3とは、簡単にいうと「不活性型の甲状腺ホルモン」です。
既に述べたように、甲状腺ホルモンは活性型のT3となって初めて作用を発揮します。
rT3は不活性型であるため、甲状腺ホルモンとしての作用を発揮せずに排泄されます。
甲状腺ホルモンには、rT3もあるということを知っておいてください。
今回述べたように、一言で甲状腺ホルモンといってもさまざまな種類や特徴があります。甲状腺ホルモンについて考える際には、こうした基本的な知識を持っておくことが重要です。