「ダイエットのために糖質制限をしたいけど、糖質制限って筋肉が落ちるんじゃないの?」という不安を感じていませんか?
糖質制限ダイエットをすると、食事から摂る糖分が少なくなるため、その分だけ筋肉を分解してエネルギーを作ると考えられています。
確かに、エネルギーが足りなくなったときには、筋肉が分解されてエネルギーが作られます。しかし、糖質制限ダイエットをしたからといって、必ずしもエネルギーが不足してしまうわけではないのです。
糖質制限ダイエット中に体内で起こる変化を理解していれば、糖質制限をしても筋肉が落ちないことを理解できます。
そこで今回は、「糖質制限ダイエットをしても筋肉が落ちない理由」について解説します。
糖質制限ダイエットをしても筋肉が落ちない理由のまとめ
・糖質制限ダイエット中には脂肪がエネルギーとして使われやすくなる
・糖質制限ダイエット中には成長ホルモンによって筋肉が守られる
・「脂質代謝が悪い」「成長ホルモンの分泌が少ない」「体脂肪率が低い(4%以下)」という状態で糖質制限やファスティングを実施すると筋肉が痩せる可能性が高い
糖質制限ダイエット中における代謝の変化
糖質制限ダイエット中に筋肉が落ちない理由を知るためには、糖質制限ダイエット中に体内で起こっている変化を知る必要があります。
「糖を摂っているときと、摂っていないときの代謝の違い」を知ることで「なぜ筋肉が落ちないのか?」ということが理解できるようになります。
そこで、糖質制限ダイエット中における代謝の変化について解説します。
糖質制限をしていないときの代謝
ご飯やパンといった主食を食べるといった通常の食事をしていると、寝ているとき以外は糖代謝によって主にエネルギーが作られることになります。
少し難しいですが、以下のような経路でエネルギーが作られます。
糖質制限ダイエット開始時の代謝
ここから糖質制限ダイエットを実施すると、食事からの糖分摂取がなくなります。そうなると、初めは肝臓に蓄積されていた「グリコーゲン」を分解することでブドウ糖を作り出して血糖値を維持します。
ただ、グリコーゲンは数時間で枯渇してしまうため、長くても数日でブドウ糖の供給が途絶えてしまいます。
糖質制限ダイエットを長期間続けたときの代謝
ここで、糖新生によってブドウ糖が作られるようになるのです。
糖新生によって、脳と赤血球には十分なブドウ糖が供給されます。しかし、このときに筋肉といった他の組織もブドウ糖からエネルギーを作り出そうとすると大変です。
糖質制限ダイエットでは筋肉が減る?
既に述べたように、糖新生は主に脳と赤血球に必要なブドウ糖を供給するための仕組みになります。いってしまえば、糖質制限ダイエット時には筋肉など他の組織が使えるほど余分な糖分を作り出す余裕はないのです。
もし仮に糖質制限ダイエット時に、筋肉もブドウ糖からエネルギーを産出しようとした場合、糖新生によってさらにブドウ糖を産生しなければいけなくなります。
糖質制限ダイエット中は脂肪からエネルギーが作られる
糖新生のメインは、タンパク質の分解による「グルコース-アラニン回路」と呼ばれるものです。
通常、グルコース-アラニン回路のために起こる筋肉の分解程度で筋肉量が減ることはありません。筋肉が分解されると、同じ量だけ体内で筋肉が合成されるためです。
ただ、糖質制限ダイエットなどで必要以上に糖新生によるブドウ糖が求められた場合、筋肉の分解量が合成量を超えてしまいます。つまり、糖質制限時に筋肉などの組織までブドウ糖を利用しないといけない状況になると、糖新生のために筋肉が痩せてしまうのです。
そうしたことを避けるために、糖質制限時には筋肉などの組織においてはブドウ糖ではなく脂肪酸からエネルギーを作り出すようになります。
こうして脂質代謝によって脂肪酸やケトン体からエネルギーが供給されるようになると、赤血球や脳以外の組織(筋肉など)におけるブドウ糖の需要量が減少します。その結果、糖新生によるブドウ糖供給が最小限で済むようになるのです。
成長ホルモンが筋肉を守る
また糖質制限ダイエット時は、筋肉の分解を抑える「成長ホルモン」の分泌が促されます。
成長ホルモンには、筋肉の分解を防ぐ働きがあります。そのため、糖質制限ダイエット中に成長ホルモンが分泌されると、筋肉が痩せることは防がれるのです。
糖質制限時ダイエット時には、以上のようにエネルギー供給システムが変化しています。こうしたメカニズムのおかげで、糖質制限で食事からブドウ糖の摂取が制限された状況でも、筋肉が痩せることなくエネルギーが供給され続けているのです。
糖質制限時に筋肉が痩せる原因
ただ、脂肪からエネルギーが作れなかったり、成長ホルモンの分泌が上手くいかなかったりすると、筋肉の分解によって糖新生を起こす必要が出てきます。つまり、グルコースアラニン回路を過剰に働かせなければいけないということです。
例えば、以下のようにTCA回路(脂質代謝)が滞っている場合には、筋肉などがブドウ糖からエネルギーを作り出そうとします。
糖新生によるエネルギー産生が必要以上に求められるため、筋肉が過剰に分解されるのです。
また当然ながら、エネルギー代謝が滞っていなくても、エネルギーとして使える脂肪酸が少なければ筋肉の分解は促されます。具体的には、体脂肪率が4パーセントを下回ると、筋肉が分解されてエネルギーが産生されるようになります。
以下に、糖質制限中に筋肉が過剰に分解されて痩せるパターンをまとめます。
・脂肪からのエネルギーが上手く作れていない
・成長ホルモンの分泌が悪い
・脂肪酸の供給が不足している(体脂肪率が4パーセント以下)
糖質制限ダイエットによって筋肉量が減ってしまっている場合は、以上の要因を考えるようにしましょう。
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今回述べたように、糖質制限ダイエットをしても、エネルギー不足にならなければ筋肉は分解されません。そのため、糖質制限ダイエット中にはエネルギー不足にならないようにすることが大切です。
ぜひ正しい知識をもって糖質制限ダイエットに取り組むようにしましょう。