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ダイエット中に人工甘味料を避けるべき理由:カロリーゼロの真実

ダイエット中に「カロリーゼロ」と表示されているダイエット飲料を好んで飲んでいる人は多いです。一般的には「カロリーの過剰摂取が肥満の原因となるため、カロリーゼロ飲料は太らない飲み物である」と考えられているのです。
しかし実際には、カロリーゼロ飲料は肥満の原因になります。そもそもカロリーによって体重の増減はコントロールされていないため、カロリーが低い飲み物を飲んでも痩せることはありません。
また、カロリーゼロ飲料には人工甘味料が含まれています。人工甘味料は血糖値(血液中の糖分量)を急上昇させたり、腸内環境を悪化させたりすることで肥満を招くのです。さらに、人工甘味料には脂肪蓄積を引き起こすインスリンと呼ばれるホルモンの分泌を促したり、食欲を増強させたりする作用があります。
こうしたことから、ダイエット中には人工甘味料を含んでいるカロリーゼロ飲料は避けるべきだといえます。
そこで今回は、「ダイエット中に人工甘味料を避けるべき理由:カロリーゼロの真実」について解説します。

人工甘味料がダイエットに与える影響

人工甘味料は「カロリーゼロ」や「ノンカロリー」といわれるように、カロリーがない添加物です。そのため、ソフトドリンクに使用されて、ダイエット飲料として販売されています。
例えば、人工甘味料には「サッカリン」「アスパルテーム」「アセスルファカリウム」「スクラロース」「ネオテーム」の5つがあります。これらの人工甘味料は、カロリーもない上に血液中の糖分量を示す値である血糖値も上昇させにくいため、米国心臓病協会や米国糖尿病協会も肯定している添加物です。
確かに、人工甘味料は「カロリーがないだけでなく血糖値も上昇させにくい」というのが通説となっています。ただ、人工甘味料にもさまざまな問題が存在するのです。

人工甘味料が血糖値に与える影響

血糖値は、肥満を招く大きな原因となります。血糖値の上昇は、脂肪蓄積を促進させる「インスリン」というホルモンの分泌を促すためです。
例えば、ご飯やパン、ケーキなどの炭水化物(糖質)が多い食品を摂取すると、血糖値が上昇します。その結果、体内でインスリンが大量に作られるため、どんどん太ることになるのです。
基本的に、人工甘味料は「血糖値の上昇を促さない」とされていました。また、人工甘味料は「インスリンの分泌を促進するものの、肥満を促すほどではない」という認識が一般的でした。
しかし実際には、人工甘味料にも血糖値を高めて、インスリンの分泌を促進する可能性があることが明らかになったのです
イスラエルで行われたマウスを使った研究によって、サッカリンとスクラロース、アスパルテームを11週間摂取すると、血糖値の異常(耐糖能障害)が認められたことが報告されいます。耐糖能異常とは、食べ物を食べた後、急激に血糖値が上がるような状態をいいます。
また同じ研究者によって、人工甘味料を日常的に摂取しているヒトには、腹部肥満や、空腹時血糖とHbA1c(血糖状態を示す値)の上昇が起こることが発見されているのです。
このように、血糖値を変動させない甘みとして認識されている人工甘味料ですが、実際には血糖値を上昇させる可能性があります。
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人工甘味料が腸内細菌に与える影響

さらに、人工甘味料は血糖値だけでなく「腸内細菌」にも悪影響を及ぼすことが明らかになっています。腸内細菌とは、人間の腸内に生息している細菌のことです。
腸内には数種類の腸内細菌が生息しています。その中でも、「フィルミクテス門(フィルミクテス菌)」と「バクテロイデス門(バクテロイデス菌)」の2つの腸内細菌グループによって、腸内細菌全体の90パーセントが占められています。
そのため、フィルミクテス菌とバクテロイデス菌のバランスは、腸内環境に大きな影響を与えます。そして、人工甘味料がフィルミクテス菌とバクテロイデス菌のバランスに関係していることが明らかになっているのです
イスラエルで行われた研究では、サッカリンを摂取したマウスでは、40種類以上の腸内細菌が変質していたことが報告されています。つまり、人工甘味料を与えられたマウスの腸内細菌のバランスが崩れたのです
このように、人工甘味料の摂取は腸内細菌のバランスを崩すことにつながります。

腸内細菌を移植すると耐糖能異常が起こる

ここまで述べたように、人工甘味料はマウスの耐糖能異常(血糖値の急激な上昇)を引き起こすだけでなく、腸内細菌のバランスを崩す(腸内環境の悪化を招く)ことが明らかになっています。それでは、人工甘味料による耐糖能異常と腸内環境の悪化は、どちらが先に起こるのでしょうか。
先ほど紹介したイスラエルで行われた研究では、さらに人工甘味料によって腸内環境が悪化したマウスの腸内細菌を他のマウスに移す実験を行いました。
その結果、人工甘味料を摂取したマウスの腸内細菌を移された他のマウスに耐糖能異常が起こったのです。つまり、人工甘味料を摂ることで起こる腸内環境の悪化が、血糖を急激に上げる原因であることが示唆されました。
このように、人工甘味料は耐糖能異常と腸内環境の悪化を招きます。

そして、腸内環境が悪化したマウスの腸内細菌を他のマウスに移植すると、人工甘味料を摂っていないマウスの血糖コントロールに異常が生じたのです。

こうした研究結果から、人工甘味料の摂取は腸内環境の悪化を招き、その結果として耐糖能異常を引き起こすと考えられます。

既に述べたように、血糖値の上昇はインスリンの分泌を促すため、肥満を招きます。そのため、人工甘味料の摂取は最終的に肥満の原因になるといえます。

血糖値に影響しない糖質

基本的に糖質は血糖値を上昇させてインスリンの分泌を促すため、ダイエット中には避けるべきです。ただ、糖質の中でも血糖値への影響が小さいものは存在します。
例えば、人工甘味料は砂糖や小麦粉などと比べると、血糖値の上昇は少ないです。ただ既に述べたように、人工甘味料が血糖値を上昇させるという報告もあるため「全く血糖値に影響しない」とは考えない方が無難だといえます
また、全ての人工甘味料はインスリン分泌を促す可能性があるのです。いくら血糖値を上げなくても、インスリンの分泌が多くなると太りやすくなります。
しかし、糖質の中でも「糖アルコール」の一種である「エリスリトール」は血糖値に影響しないことが明らかになっています。エリスリトールは、90パーセントが腸内へ吸収されますが、その後はそのまま尿として排出されるのです。そのため、エリスリトールを摂取しても血糖値は全く上がらないのです。
このように、血糖値にほとんど影響しない糖質も存在します。
ちなみに、糖アルコールにはエリスリトール以外にも「キシリトール」や「ソルビトール」「マルチトール」「ラクチトール」などが存在しますが、これらは血糖値を上昇させる可能性があります。特に、マルチトールは砂糖の半分ほど血糖値を上げる作用があるため注意が必要です。

カロリーゼロ飲料に対する注意点

世の中には、ダイエット飲料として「カロリーゼロ」を売りにしている商品が多く存在します。こうした飲み物は、カロリーが含まれていないため「飲んでも太らない」と考えられているのです。
具体的には、100ml(g)当たり5キロカロリー以下であれば、カロリーゼロと表示できます。ただ、カロリーゼロ食品のほとんどは、人工甘味料によって甘みが付けられているのです。
既に述べたように人工甘味料は腸内細菌の悪化と耐糖能異常を招き、最終的に肥満につながります。また、人工甘味料は血糖値を上げないものの、インスリンの分泌を促す可能性があるのです。さらに、人工甘味料には食欲を増進させる作用があることが明らかになっています。
そもそも、肥満はカロリーの収支によって決まるのではありません。体重の増減はカロリーではなく、ホルモンバランスによってコントロールされています。
つまり、カロリーゼロ飲料で摂取するカロリー量を減らしても、人工甘味料の影響によって太ることはあっても痩せることはないのです
こうしたことから、ダイエット中には人工甘味料が使用されているカロリーゼロ食品や飲料は避けるべきだといえます。

今回述べたように、人工甘味料を使っているダイエット飲料は「耐糖能異常を引き起こす」「腸内環境を悪化させる」「インスリンの分泌を促す」「食欲を増進させる」という4つの理由から、ダイエット中には避けるべきだといえます。
一般的には、「カロリーゼロ」と表示されていると「太りにくく健康的な飲み物である」と思いがちです。しかし実際には、カロリーゼロには人工甘味料という問題がセットになっていることを忘れてはいけません。