視覚・聴覚・嗅覚という感覚器を備えている頭部は、危険やモノを瞬間的に察知できなければいけません。その頭部を支えているのが「首」です。首の働きによって頭部が安定し、平衡感覚を保ったり、外的な刺激(音・モノ・匂い)に素早く頭部を向かわせたりすることを可能にしています。
首の働きを理解することで、姿勢の維持にどのように活かされているかがわかるようになります。
首の役割
首は、頭部と胸部をつなぐ架け橋となっています。そこには脳と内臓をつなぐ神経、脳に酸素・栄養を送る頚動脈、空気を送り込む気管など、重要な組織が密集しています。このため首の痛みを放っておくと、重大な疾病につながることもあります。
「首が飛ぶ」「首がまわらない」「首にする」などの慣用句からも、首は重要な部位として認識されていたことを伺えます。
首は頭部を支え、動かす
首の重さは大人で5kgほどあり、それだけの重さを常に支えています。また、身体からの振動や衝撃が、頭に直接伝わらないようにするバネの役割もあります。
例えば、自転車のサドルを思い浮かべて下さい。サドルの下にはバネがついており、このバネのおかげで少しの段差なら身体への衝撃は少なくなります。このバネがないと、つねにデコボコ道を走っているような不快な感覚を受けます。
首の骨と多数の筋肉によって頭部を支えながら、頭部の動き(上を向く・横を向く)を可能にしているのもこの首の役割です。
首の骨は「頚椎」といい、1番から7番までの7つの骨で構成されています。頚椎は脊柱の中でも最も可動性のある部分であり、垂直・水平方向にほぼ180°の可動域があります。頸椎は動きやすい分、偏った使い方を繰り返しているとズレを生じやすい部位でもあります。
首には頭部や背中、肩とつながる大小さまざまな筋肉で結びついています。その中でも特に疲れがたまりやすい「後頭下筋」について見ていきましょう。
デスクワークは首の筋肉を緊張させる
後頭骨から頚椎にかけて後頭下筋群という筋肉があります(後頭下筋群:大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋の4つの総称)。後頭下筋群には、主に頭が前に倒れないように後ろに引き戻す役割があります。
また、この筋肉は目を動かしたときに、その動きに頭がついてこないように固定する働きがあります。目だけで画面を追うようなパソコン作業は、後頭下筋群を常に働かせることになり筋肉の過緊張を招きます。
後頭下筋群が緊張しすぎている状態だと、目線を動かすたびに頭部がわずかに動いてしまい、吐き気やめまいの原因となることがあります。
目の動きだけでなく、デスクワークの姿勢そのものも後頭下筋群の緊張を招く要因です。パソコンの画面や机を見る姿勢は、自然とあごを突き出すような姿勢になりがちです。この姿勢は、まっすぐに首の上に頭が乗っているときと比べて、頚椎のバネの役割が働きにくく、頭の重みが首の筋肉に直接かかります。
デスクワークでは後頭下筋群をフル稼働させているといってもいいでしょう。
後頭下筋群付近には頭の後ろ・耳・目に関連する神経が通っているため、後頭下筋群の緊張によりこれらの神経が圧迫されます。その結果、目が疲れやすくなったり、頭痛が起きたりといった身体の不調に繋がります。
さらに首で頭の重さを支えられなくなると、その働きは肩や背中が担うことになります。その結果、肩こりや背中側の疲労感が出やすくなっていくのです。
肩こりがなかなか改善しないと感じている場合は、普段の姿勢を確認してみてください。頭の位置が首から肩にかけての負担になっていることを認識して、座りしせい・立ち姿勢を意識的に変えていきましょう。