便秘は、たくさんの人が悩まされている症状です。特に若い女性や、高齢者には便秘で悩む人が多いです。しかし、便秘はあまりにもありふれた状態であるために、その大半は放置しているか、もしくは簡単な対処法で対処しているのが現状です。
また、もし病院に行っても、下剤が処方されるだけのことが多いのではないでしょうか。しかし、便秘は薬では解消できません。
便秘という症状は、原因ではなく、他に問題があって結果的に生じているものです。そのため、表面に出ている便秘という病態を、薬を使用して無理やり解消しようとしても不可能です。便秘を引き起こしている根本的な理由を解決することで、ようやく便秘は改善されます。
そこで今回は、便秘の原因について解説します。
便秘の原因
便秘には、大きく分けて3つのタイプがあります。便が出ないということは共通していますが、問題が起こっている部位や、根本的な原因が異なります。原因が違うということは、対処法も変わりますので、それぞれを理解しておく必要があります。
腸の運動不全タイプ
食べ物を食べると、胃を通った後、腸に入ります。そして、腸では、必要な栄養素が吸収され、残ったカスで便を形成します。
通常では、この便が小腸から大腸へ移動し、最終的には直腸に達することで、便として排泄されます。このような腸内の移動は、腸自身の運動によって行われるものであり、「蠕動(ぜんどう)運動」と呼ばれます。
この蠕動運動が障害されて、便が滞留するのがこのタイプになります。
便の滞留は、さらに腸の動きを悪化させます。さらに、溜まった便が異常発酵し、毒素を発生させることで、腸内環境が悪くなります。腸内環境の変化は、さらに便秘を増悪させます。
また、便の滞留が起こるため、お腹が張ったり、便が硬くなったりするといった症状が出現します。
直腸、肛門タイプ
蠕動運動は正常で、便が直腸まで移動しているのに排泄できないタイプです。通常、直腸に便がたまると、脳に情報が送られることで、排便の指令が出ます。
便が直腸にたまると、直腸の壁を伸張することが刺激になります。しかし、便意を感じても、忙しかったり、恥ずかしかったりという理由で我慢していると、直腸は伸びきった状態になります。そうなると、直腸に便が達しても、刺激として捉えられなくなります。
また、便意を我慢していると、便意と脳の連携がうまくいかなくなります。つまり、脳は、「指示をしても排便しないのであれば、もう指令は出さない」と考えてしまうのです。
また、便を排泄するには、腹筋や肛門周囲の筋肉を収縮させる必要があります。この2つの筋肉によって腸が圧迫されることで、便が押し出されます。腹筋や肛門周囲の筋肉の筋力低下が生じると、直腸からの出すことが困難になります。これらは、出産や加齢で起こります。
ストレスタイプ
腸の運動は、自律神経によってコントロールされています。自律神経とは、腸などの内臓を無意識下で調整する神経です。興奮時に働く「交感神経」と、リラックス時に活動する「副交感神経」の2つがバランスをとることで、自律神経の機能が発揮されます。
自律神経は、体にストレスが加わると、交感神経を活発に活動させることで、ストレスに対応します。仕事や睡眠不足など、さまざまな刺激によって、交感神経が活性化します。
しかし、腸などの消化管の運動は、副交感神経の働きによって促されます。そのため、ストレスによって、交感神経が活発に活動していると、腸の蠕動運動は障害されます。その結果として、便秘や下痢などの症状が出現します。
便秘の解消法
生活習慣を改善し自律神経の活動を整える
運動で腸を刺激する
その他
下剤(薬)が便秘を悪化させる理由
便秘に対して病院で処方された薬や、市販されている薬(OTC)で、一時的に症状を緩和させているような対処をしています。しかし、便秘は、薬で根本的な問題が解消することはありません。むしろ、下剤は便秘を悪化させる可能性があります。
そこで以下に、下剤が便秘に与える影響について解説します。
排便には腸の自発的な運動が必要
排便は、食べた物が消化吸収された後、残ったカスが、腸の動きによって直腸に押し出されることで起こります。
このような腸の運動は、「蠕動(ぜんどう)運動」といい、直腸に便を送り出すための運動です。大腸は、大きく分けて「結腸」と「直腸」の2つの部位に分類されます。また、先ほど挙げた蠕動運動は、結腸で起こる運動です。
蠕動運動は、胃に食べ物や水分が入ることで、反射的に誘発されます。この反射を「胃・結腸反射」といいます。胃・結腸反射は、喫煙や歩行などでも引き起こされることがわかっています。
そして、蠕動運動によって、腸の最終部分である「直腸」に便が到達すると、便によって腸の壁が伸張されます。この腸への刺激が脳に伝わり、便意となります。
このような「直腸壁の伸張 → 便意」という反射を、「直腸反射」と言います。
便意が生じると、腹筋や肛門周囲の筋肉を収縮させて、肛門から排便します。高齢者が便秘になりやすい一番の原因は、このような筋肉が弱くなっていることにあります。
このように、排便は、胃・結腸反射と直腸反射という過程を通して行われます。
下剤が便秘を悪化させる理由
下剤は、市販されているものがたくさんあり、多くの人が使用しています。しかし、下剤では便秘は治りません。
これは、便秘に限った話ではありませんが、ほとんどの薬は、症状を一時的に抑え込むものです。何かしらの現象が出現しているということは、必ずその原因があります。その根本的な問題を解決することなく、体の不調を改善することはできません。
便秘で使われる薬で最も多いのは、大腸の蠕動運動を無理やり引き起こして、便を出すようなものです。そして蠕動運動は、直腸ではなく、結腸で起こります。
先ほど述べたように、健康な便意は、便が直腸に到達し、直腸反射が起こることで生じます。しかし、この薬による便意は、直腸ではなく、結腸が刺激されることによって生まれるものです。そのため、本来の自然の便意とは異なります。
これにより、通常では排便に必要な、「胃・結腸反射 → 直腸反射」というプロセスをたどらずに便が出されます。
このような、自然の過程を無視した排便を行っていると、腸の自発的な運動や、直腸反射が起こらなくなります。また、腹筋や肛門周囲の筋肉が衰えるため、結果的に自然な排便ができなくなり、便秘が悪化します。
さらに、排便が起こらない焦りから、最終的に薬に依存することになります。
今回述べたように、便秘には3つのタイプがあります。そして、それぞれ原因が異なるため、対処法も違います。このような、便秘のタイプを把握することが、便秘解消の第1ステップとなります。
また、下剤は自然な排便のプロセスを障害します。その結果、便秘を悪化させるだけでなく、薬への依存まで起こります。
もちろん、便秘の症状が強い場合は、下剤の使用が有効な場合もあります。しかし、下剤を長年常用することは、間違いなく便秘を悪化させます。このことを理解した上で、下剤と上手く付き合うことが大切です。