背骨は、前後に凹凸の形をし、S字状の形をしています。他にも、体はそれぞれの部位で特徴的な形をしています。例えば、背骨の関節は二つの平面で構成されていますが、肩関節は、球形の凸状と、お椀状の凹状で関節を作ります。
このような構造の違いは、そのまま機能に影響します。つまり、体のある構造には意味があるということです。
その中でも今回は、背骨の形状の意味について解説します。
背骨の前後方向へのS字弯曲の意味
背骨は、S字状の形をしています。また、そのS字は、前後に凹凸になっています。背骨がS字状の構造をしているのは、そのS字弯曲(わんきょく)がバネのような役割をし、体にかかる衝撃を吸収してくれるという意味があるからです。
この機能によって、背骨は、ひざ関節や股関節、肩関節などの末梢の関節にかかる負担を減らしています。そのため、背骨のS字弯曲が小さくなると、四肢の関節を痛めやすくなります。
そして、その弯曲が前後方向になっているのにも意味があります。
歩行を考えると、人間は、横より前に進むことで移動します。そのため、歩くためには前方方向への推進力が必要になります。その前後方向の力を作るのが「脊柱の前後方向への凹凸構造」です。
具体的に前への推進力は、階段昇降動作などに関係します。そのため、脊柱の前後方向の弯曲が小さくなると、階段動作時に、ひざ関節などに痛みが出る可能性があります。
胸郭、骨盤部が横方向に広がっている意味
一方、肋骨を中心とした「胸郭」と骨盤は前後ではなく、左右に広い形をしています。
先ほど述べたように、背は前方への推進力に関係しており、胸郭と骨盤は左右のバランス能力に関わっています。
歩行動作は、前後左右にバランスを崩すことを繰り返すことで、達成されます。この前後左右への動揺は、お互いに関係しており、前後への推進力が小さいときは、左右への動きが大きくなり、前後への動作が大きいときは、左右の動揺は小さくなります。
このようにして、背骨は推進力、胸郭と骨盤はバランス能力という関係をもって、動作を行い、姿勢を保っています。
そのため、背骨の弯曲が小さいと、胸郭と骨盤によるバランス機能はより高く求められるようになります。
以上のように、体の形にはそれぞれ意味があります。また、背骨と胸郭、骨盤のように、ある部位は、他の構造と相互に関係している場合がほとんどです。その関係性を知ることで、体にかかる負担を減らすことができ、疼痛発生予防につなげることができます。