自律神経

自律神経が原因で発症する精神疾患:自律神経と病気の関係性

日本において、精神疾患に悩まされている人は多くいます。そして、多くの場合は、病院で処方された薬に依存することになります。
しかし、薬を飲むだけでは精神疾患を改善することはできません。精神疾患の多くは、自律神経のバランスが崩れることが原因で発症します。そのため、精神疾患を予防・解消するためには、自律神経を整えなければいけません。
そこで今回は、精神疾患の中でも、うつ病と不眠症を例に挙げて、自律神経と精神疾患の関係性について解説します。

自律神経とは

自律神経とは、内臓や血管などを無意識下で支配する神経です。自律神経は、大きく交感神経と副交感神経の2つに分類されます。交感神経は、興奮時に活発に働き、副交感神経は、リラックス時に活動します。
そして、交感神経と副交感神経が、お互いにバランスをとることで、自律神経は機能を発揮します。
例えば、精神的なストレスは交感神経を活性化します。交感神経は心拍数を高め、血圧を上げる作用があります。そのため、精神的なストレスが加わると、心拍数と血圧は上昇します。高血圧は、典型的な交感神経系の過緊張が原因で発症する病気です。
また、交感神経と副交感神経のどちらも、過剰に緊張すると血流障害を引き起こします
交感神経は血管を収縮させることで、その場所以降の血流量を減らします。逆に副交感神経は、血管を拡張することで、血液の流れを遅くします。その結果、血流の流れが悪くなります。
交感神経による血流障害は「虚血(きょけつ)」といい、副交感神経によるものは「うっ血」といいます。どちらが起こっても、血の流れは悪くなり、細胞へ栄養が届きにくくなります。

うつ病

うつ病は、自殺の原因となるような恐い病気です。よく「心の風邪」となどと例えられますが、そんなに簡単な言葉では済ませることができない疾患です。そして、ストレスが多い現代社会では、5人に1人が、1度は経験するものだと言われています。
それではまず、「うつ病とはどういった病気なのか?」について確認していきます。

うつ病とは

西洋医学において、うつ病の原因は「脳内における神経伝達物質の分泌量の減少」とされています。
神経伝達物質とは、脳内で情報交換を行うために欠かせない物質です。物事を考えたり体を動かしたりできるのは、神経伝達物質によって脳内で情報がやり取りできているためです。そのため、神経伝達物質が少なくなると、脳の働きが悪くなります。
うつ病は、こうした神経伝達物質が減って、脳の活動が低くなって発症するとされています。
しかし、「なぜ神経伝達物質が少なくなるのか?」ということは明らかになっていません。
このように、うつ病は原因がわかっていないため、治療法が確立されておらず、薬物療法で一時的に症状を落ち着かせるものばかりです。実際に、うつ病の主な治療法は「薬を使って神経伝達物質の働きを良くする」というものです。
ただ、うつ病の多くは、自律神経の不調によって起こります。精神的なストレスは、自律神経のバランスを崩し、気持ちを落ち込ませます。そのため、うつ病の治療には、自律神経の影響を考慮したものを行う必要があります。

うつ病と自律神経の関係性

うつ病にかかる人には、真面目、仕事熱心、完全主義、几帳面、正義感が強い、といった特徴があります。このような性格に、転勤や離婚、引っ越しなどの環境の変化が加わることで、うつ病は発症します。
交感神経の活動を過剰にする要因は、主に2つあります。
1つは、価値観です。価値観とは「物事を判断する基準」であり、その人の性格を作り出しているものでもあります。この価値観によって、その人が「交感神経が優位になりやすいのか」「副交感神経が緊張しやすいのか」が決まります。
例えば、時間に対する価値観について考えます。私は、時間を無駄にすることが嫌いです。実際に、いつも1分の時間でも有効に活用しようとしています。
そうなると、当然、常に精神的に緊張している状態になってしまいます。そして「少しでも時間があればできることを見つけ、何かと並行して他のことを行う」という生活を送っています。そのため、周囲から見れば私は「忙しい人」であると思います。
時間を大切にすることは大事ですが、このような性格では、交感神経の緊張が高くなります。逆に、時間を気にせずマイペースで物事を行う人は副交感神経優位になります。
交感神経と副交感神経の活動は、どちらも欠かすことができないものです。ただ、どちらの活動もバランスが大切であるため、過剰になりすぎると問題が発生します。
そして、交感神経の緊張を高める要因の2つ目は、外部環境です。既に述べたように、環境の変化は、どのような人にとってもストレスとなります。そのような精神的ストレスが加わると、交感神経が活性化されます。
うつ病は、交感神経と副交感神経のうち、どちらの活動に問題が起こっても発症します。
例えば、交感神経の異常で起こるうつ病は、交感神経の働きが低下することによって生じます。通常では、体は何かストレスが加わると、ストレスに抵抗するために、交感神経を働かせて全身を興奮させます。
しかし、あまりにストレスが続きすぎると、交感神経は疲弊します。そうなると、ストレスがあっても、それに対応できなくなり、無気力状態となります。これがうつ病になる過程です。
つまり、こうしたケースにおけるうつ病の根本的な原因は、その人の価値観と外部環境による交感神経の過剰な緊張です。
また、逆に副交感神経の緊張が高くなっても同じような状態になります。例えば、「夜遅く寝て朝遅く起きる」「日中もだらだらしている」などの生活をしていると、副交感神経の働きが過剰になります。
そうなると、同じようにストレスが加わったときに交感神経が対応しなくなり、うつ病を発症することになります。
交感神経の疲弊が原因で起こる人は、真面目で几帳面、人に任せることができない性格を持っています。一方、副交感神経が優位なタイプの人は、依存心が強い、自立心が薄いなどの特徴があります。
このように、交感神経の働きが低下し、副交感神経の活動が過剰に亢進してしまう(自律神経のバランスが崩れる)と、うつ病が発症するのです。

不眠症

不眠症は、日本人の多くが悩まされている病気です。一般的に不眠症では、検査結果に異常が出るようなことはないため、検査の数値で診断されることはありません。
そして、不眠によって現れる体の不調は、疲労感や肩こり、頭痛といったような、健康な人でも日頃から感じるようなものがほとんどです。そのため、重症になるまで病院に行かずに放置している人が多くいます。
しかし、不眠症はさまざまな病気の発症につながります。それは、体の不調の多くは自律神経の乱れが原因であり、不眠症が自律神経のバランスを崩す大きな要因であるためです。
つまり、不眠症の原因について学び、予防と解消することは、体の健康にとって大切だと言えます。
そこで以下に、不眠症の原因について解説します。

不眠症とは

日本で、成人を対象として行われた「睡眠障害に関する疫学調査」では、成人全体において「不眠を訴える人が21パーセント」「日中の眠気に悩んでいる人が15パーセント」もいることが明らかになりました。
つまり、日本人の3人に1人以上が、何かしら睡眠に問題を抱えていることが予測されます。
そのような睡眠に関する問題は、以下のように分類されています。

不眠症

・適応障害性不眠症

・精神生理性不眠症

・逆説性不眠症

・気分障害、感情障害

・不安障害、パニック障害

・外傷後ストレス障害

・不適切な睡眠衛生

・薬剤もしくは物質による不眠症

・内科的疾患による不眠症

睡眠関連呼吸障害

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群

・中枢性睡眠時無呼吸症候群

中枢性過眠症

・ナルコプレシー

・行動起因性の睡眠不足症候群

概日リズム睡眠障害

・睡眠相後退症候群

・睡眠相前進症候群

睡眠時随伴症

・反復弧発性睡眠麻痺

・悪夢障害

・脳内爆発音症候群

・時差型

・交替勤務型

睡眠関連運動障害

・むずむず脚症候群

・周期性四肢運動障害

・睡眠関連下肢こむら返り

このように、一言で睡眠障害といっても、さまざまなものがあります。不眠症は、睡眠障害の1つです。
また不眠症の中でも、内科的疾患や精神面などに問題があって睡眠が障害されている場合は、専門家による医学的な治療が必要です。しかし、不眠症で悩んでいる人は、内科的疾患などの明確な原因が無い人がほとんどです。
そして、多くの場合は不眠症の発症には自律神経が関係しています。

不眠症と自律神経の関係性

不眠症には、大きく分けて「寝つきが悪いタイプ」「眠りが浅く、途中で何度も起きるタイプ」「朝早くに目覚めるタイプ」の3つのタイプがあります。
これらの不眠の原因は、主に以下の2つに絞られます。
・運動不足や夜更かしなどの生活習慣の乱れ
・精神的なストレス
そして、これら2つに共通していることは、どちらも「自律神経と深く関係している」ということです。両方の問題ともに、自律神経のバランスを崩すことで不眠を招きます。このことを理解するために、まずは、睡眠と自律神経の関係性について解説します。
通常、人は「朝起きて夜寝る」という行動をとります。これは「体内時計」というものが体に備わっているためです。
体内時計は、明るさや気温の変化といった外部環境に関係なく、体に一定のリズムを作っています。朝に目が覚めて、夜に眠くなるのも、体内時計のリズムに合わせて起こっている現象です。
そして、体内時計と自律神経は、お互いに関係しています。そのため、体内時計に問題が生じると自律神経のバランスは乱れますし、自律神経が不調になっても体内時計のリズムは悪くなります
体内時計は、「日中の興奮時などに交感神経が活動し、夜間のリラックス時には副交感神経が働く」というリズムを刻んでいます。
つまり、朝から夕方にかけては交感神経が働き、夕方から夜にかけては副交感神経が活発になります。そのため、日中は頭も体も活動できる状態にあります。一方で、夜になると頭も体もリラックスするため、眠気が生じます。
このような自律神経のリズムも、体内時計によって作られています。
もし、夜更かしなどをして体内時計のリズムとズレた生活を送っていると、体内時計の働きが障害されて、夜に眠気が生じなくなります。その結果、不眠を招きます。
また、精神的なストレスを受けると、交感神経系が過剰に興奮します。そうなると、副交感神経の働きが弱くなるため、夜にリラックスできなくなり不眠を招きます。
つまり、「生活習慣の乱れは体内時計のリズムを崩し、精神的なストレスは自律神経のバランスを乱すことで、不眠を引き起こす」といえます。そして、一度不眠になると、体内時計と自律神経が相互に作用することで、どんどん悪化する場合がほとんどです。
今回述べたように、精神疾患多くは、自律神経の不調に原因があります。そして、自律神経の問題は、生活習慣の乱れと精神的なストレスによって引き起こされます。
このことからも、抑うつ感や不眠を感じた場合は、まずは生活を見直すことが大切だと言えます。自分自身の生活習慣や環境を見直し、修正することで自律神経が整います。自律神経の不調が無くなると、精神疾患も自然と解消されることでしょう。