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肩こりの原因と解消法:ストレス、睡眠不足、背骨、斜角筋との関係

肩こりは、日本人の多くが訴える症状です。そもそも海外では、肩こりという概念がありません。そのような肩こりですが、大半の人は、マッサージなどに通うことで、一時的な症状の緩和を図ります。
しかし、肩こりには原因があり、その問題はマッサージでは改善しません。
肩こりの多くは、あなた自身の生活習慣の崩れから起こります。そのため、肩こりの改善には、肩こりのメカニズムを知り、その原因を理解することが必須になります。
そこで今回は、肩こりが起こる原因と解消法について解説します。

肩こりの原因

肩こりを解消するためには、肩こりが発生するメカニズムを理解することが大切です。特に、肩こりの直接的な原因となる筋肉や、その筋肉を緊張させる要因について知っておく必要があります。
以下に、肩こりの原因について記します。

肩こりを引き起こす筋肉

肩こりの原因となる筋肉は「斜角筋」と呼ばれる筋肉です。斜角筋は、首の骨から肋骨についています。耳辺りから首の横側を通り、鎖骨周辺に向けて走行しているイメージです。
肩こりは、手の痺れや腕の重だるさなど、さまざまな症状が伴うことが多いです。その理由がこの斜角筋で説明できます。
斜角筋の周りには、上肢に関係する神経と血管が通っています。そのため、斜角筋の緊張が高まると、斜角筋自体の症状による肩こりの他に、上記のような手の痺れや冷え、浮腫み(むくみ)、腕の重だるさなどが伴います。
また、斜角筋の緊張が高まると、その周りの首の筋肉も一緒に硬くなります。首に関係する筋肉の多くは、頭部に付着しています。また、頭周りを支配する神経とも関係しています。そのような理由から、肩こりは頭痛を引き起こします。
肩こりに関連した頭痛のことを、「緊張性頭痛」といいます。この頭痛の一番の特徴は、肩こりを伴っていることであり、他にも以下のような特性があります。
・精神的に緊張すると痛みが強くなる
・力を入れる動作を繰り返すと痛みが強くなる
・寝不足やストレスがあると痛みが強くなる
・運動をすると楽になる
・リラックスすると楽になる

肩こりの原因

肩こりは、主に斜角筋による症状です。そして、次に考えなくてはいけないことは、斜角筋の緊張が高まる理由です。
斜角筋の働きは、首を横に曲げるというものです。また、肋骨に付着しているという特徴から、斜角筋には肋骨を引き上げる作用があります。これが、斜角筋の緊張を高める原因につながっているのです。
呼吸を行うとき、胸の中に空気を入れるために、肋骨を膨らませます。肋骨は、前後左右、上下へ3次元的に広がります。通常の生活では、肋骨は前後左右の動きが主になります。
しかし、過度な運動を行なったり、精神的ストレスが強なったりすることで呼吸が浅くなると、肋骨の上下運動も必要になります。そのときに、肋骨を上方に引き上げるのが斜角筋になります。
つまり、斜角筋は呼吸に関係する筋肉でもあり、呼吸が浅くなるような状態になった場合に緊張するのです。
また、通常の生活において、呼吸は鼻を使って行います。鼻での呼吸は余分な力が必要なく、斜角筋などの首回りの筋肉の緊張が起こりません。しかし、呼吸を口で行うと、斜角筋を中心とした首回りの筋肉を過剰に使います。
長時間走ったり、全力で走ったりした後の呼吸をイメージしてもらうと、わかりやすいかと思います。運動後は、口を使って、少しでも息を沢山吸おうとします。このときは、斜角筋などの筋肉を使っている状態です。
また、斜角筋は体全体のバランスに関わります。斜角筋を緊張させることで、首が固められ、バランスが保たれます。
人は、進化に伴い二足歩行を獲得しました。そのため、四足歩行だった頃に比べて、高度なバランス能力が必要になりました。
そこで、発達したのが背骨です。背骨にある「姿勢の崩れを感知するセンサー」が高度になることで、バランス能力を向上させました。つまり、二足歩行におけるバランスは、背骨の機能に依存しているのです。
その背骨の機能とは、「背骨のS字状構造」と「背骨の柔軟性」です。この2つに問題が生じると、バランスが低下します。
つまり、背骨のS字状構造、もしくは柔軟性低下が生じると、その代償として斜角筋を緊張させることで、バランスをとるようになるのです。
以上のことから、斜角筋の過緊張を引き起こす要因は以下のものが挙げられます。
・ストレス、睡眠不足、乱れた食生活
・過剰な運動
・背骨の柔軟性低下
・背骨のS字状構造の減少
このように、肩こりは斜角筋が原因で起こります。そして、斜角筋の緊張はストレスや睡眠不足、背骨の硬さから生じます。そのため、肩こりの解消には、ストレスコントロールや背骨のストレッチを行うことが効果的です。

肩こりにマッサージが有効ではない理由

すでに述べたように、肩こりの原因は斜角筋の過緊張にあり、斜角筋の過緊張は、ストレスなどにあります。症状を引き起こしているのは、筋肉の硬さです。そして、筋肉が硬くなっているのには理由があります。
つまり、筋肉の硬さは表面上に出ているものであり、その背景には、さまざまな要因があるのです。
マッサージの役割は、筋肉の緊張を和らげることにあります。そのため、症状を引き起こしている斜角筋を柔らかく効果があります。そのため、強張りや、コリ感を軽減させることはできます。
しかし、先ほども述べたように、斜角筋が緊張するには原因があります。それは、過剰な運動や口呼吸、ストレスなどによる「浅く早い呼吸」や、背骨の硬さによる影響が考えられます。
そのため、一時的にマッサージで緊張が緩んでも、斜角筋の過収縮を起こしている原因を解消しないと、根本的な改善にはならないのです。もし、マッサージの後に症状が緩和しても、また生活していると肩こりが出てくることになります。

マッサージが有効な場合

多くの場合、肩こりにマッサージは有効ではありません。しかし、マッサージを全て否定しているわけではありません。先ほどの内容を理解した上で、一時的な症状緩和を目的に、マッサージを受けるのであれば、別に問題ありません。
また、マッサージにはリラックス効果があります。斜角筋が硬くなる原因には、ストレスが深く関係しています。そのため、マッサージのリラックス作用によって、ストレス軽減が図れると、肩こりは解消します。
さらに、マッサージの仕方によっては、背骨の柔軟性を促すことができます。もしマッサージによって、背骨が柔らかくなれば、結果的に斜角筋の過緊張は改善され、症状は軽減します。
このように、マッサージを否定しているのではなく、慰安目的のマッサージでは、肩こりの根本的な原因は改善できないということを言いたいだけです。病院や整体、接骨院に通う場合は、慰安目的であるのか、治療目的であるのかを、あなた自身がしっかり理解しておかなければなりません。
そうはいっても、肩こりのほとんどは生活習慣の不摂生から生じています。そのため、肩こりの解消には、生活習慣の見直しと修正は必須になります。

肩こり解消法

先ほど述べたように、肩こりの解消には、呼吸と背骨の機能の改善が必須です。そして、呼吸が浅くなる原因の多くは、精神的ストレスにあります。そのため、肩こり解消の1つのポイントとして、ストレスコントロールが挙げられます。
また、過剰な運動も呼吸を乱します。過剰な運動とは、「その人にとって過剰」という意味です。そのため、10代で運動習慣がある人と、80代で運動習慣がない人とでは、全く異なります。
つまり、その人の「体力」によるということです。体力がある人は、10キロ走っても過剰な運動にはなりませんが、体力が極端に低下している人は、日常生活レベルでも呼吸が乱れます。このことからも、体力向上に向けた有酸素運動は、肩こりに効果的です。

腹式呼吸

深く、ゆっくりした呼吸は、体の緊張をほぐし、ストレスを緩和します。とくに、腹式呼吸はストレスケアに効果的です。
1.口からゆっくり息を吐く
できれば8秒くらいかけて、ゆっくり吐きます。また、吐くときにお腹の中の空気を出すようなイメージでお腹を引っ込めていきます。このときの注意点は、力を抜くことです。体は、息を吐くときにリラックスするため、肩の力が抜けていくような気持ちで息を吐くと効果的です。
そのため、無理に長く吐こうとして、体を緊張させないようにしてください。あなた自身がきつくない範囲で行うことが大切です。
2.鼻から息を吸う
ある程度息を吐き切った後は、鼻から息を吸います。息を吸うときは、吐くときの半分位の時間で吸い切ります。また、お腹に空気を入れるようなイメージでお腹を膨らまします。このときも、無理に吸い過ぎないようにしてください。無理のない範囲で行うことが大切です。
3.1と2を1~5分繰り返します。

有酸素運動

ウォーキングやエアロバイク、水中ウォーキングなどから、あなたに合ったものを選んでください。一番負荷が低く、効果的なのは水中ウォーキングです。水中ウォーキングにはリラックス効果もあるため、ストレスコントロールにも有効です。
ポイントは、疲労感がないこと、毎日でも続けることができるような運動にすることです。時間は、できるだけ20分は行ったほうが良いですが、そこまで厳密にする必要はありません。また、体に痛みが出る運動は厳禁です。
楽しく、きつくなく、痛みがない運動を継続して行うことが大切です。

背骨の運動

背骨には、前後、左右、捩じりの3つの方向の運動があります。どのような運動でも、背骨をストレッチするような運動であれば効果があります。今回は、朝から簡単にできる「ねじりの運動」を紹介します。
1.仰向けで両ひざを立てて、両手を広げる
2.ひざを片側にゆっくり倒す
このとき、息を吐きながら倒すことがポイントです。先ほど述べたように、体は息を吐くときにリラックスします。そのため、全てのストレッチに共通することですが、体を伸ばすときに、息を吐くと、より効果的に体はストレッチされます。
また、倒した方と反対側の肩が、床から浮かないようにすることも大切です。
3.息を吸いながらゆっくり①の姿勢に戻る
4.1~3を左右で10回ずつ繰り返す
以上に挙げた運動を日常的に実施することで、肩こりは予防・解消することができます。
今回述べたように、肩こりは、ストレスや睡眠不足、食生活の乱れ、過剰な運動といったような生活習慣が原因で生じる斜角筋の緊張によって起こります。こうした肩こり発生のメカニズムを理解しておくと、マッサージでは肩こりが治らない理由がわかります。
肩こりを解消するためには、生活習慣の改善に加えて、腹式呼吸や有酸素運動、背骨のストレッチなどを実施することが大切です。そうすることで、より効率的に肩こりを解消することができます。