ダイエット 糖質制限

糖質が体に与える影響:インスリン過剰分泌、糖化

ダイエットを行う上で、食事制限は必要不可欠です。一般的に食事制限で有名なものとして、「糖質制限」があります。これは、「糖質の摂取量を制限することで、体に蓄積する脂肪を抑える」という方法です。
糖質制限は、私も実践している食事法であり、ダイエット効果を実感しています。
そして、糖質は体の脂肪だけではなく、さまざまな体の機能に悪影響を与えます。そのため、糖質制限を実践することは、ダイエットだけでなく、健康を維持することにつながります。
そこで今回は、「糖質が体に与える影響:インスリン過剰分泌、糖化」について解説します。

インスリンの過剰分泌

糖質が体へ与える影響として、「インスリン」の分泌はよく知られているものです。インスリンは膵臓から分泌されるホルモンであり、血液中の糖を細胞に取り込むことで血糖値(血液中の糖分量)を下げるサポートします。
血液中の糖が細胞内に取り込まれることで、細胞は糖からエネルギーを作り出して活動します。また、高血糖(血液中の糖分が多い)状態は体にとって好ましくない状況であるため、インスリンの働きは体にとって重要なものといえます。
例えば、高血糖であると、動脈が硬くなる「動脈硬化」を発症しやすくなります。また血糖値が高い状態は、老化の原因ともいわれる細胞の「酸化」を促進します
そのため、血糖値を下げるインスリンの働きは、健康を維持する上で非常に重要になります。その一方で、インスリンには体に対して好ましくない作用もあります。その1つが、「脂肪蓄積」です。
インスリンには、体に脂肪をため込む作用があります。ダイエットで糖質制限が推奨されるのは、インスリンによる脂肪の蓄積を抑えるのが目的です。糖質を摂取すると、インスリンの分泌が促されるため脂肪がつきやすくなります。
それに対して、インスリンと拮抗した作用を持つホルモンに「グルカゴン」というホルモンがあります。グルカゴンは、タンパク質を摂取することで分泌されるホルモンであり、インスリンとは対称的に、脂肪の分解を促進する働きを持っています。
これが、ダイエット中に糖質の摂取を抑え、タンパク質を積極的に摂るように言われる理由です。
また、インスリンの過剰な分泌は以下のようなことにも関係していると言われています。
 ・動脈硬化
 ・腫瘍の形成、増殖速度の上昇
 ・副腎疲労
この中でも、副腎疲労は多くの体の不調を引き起こします。

副腎疲労症候群

糖質を過剰に摂取すると、血糖値が急激に上昇するため、インスリンが正常より多く分泌されることになります。また、急上昇した血糖値は、大量のインスリンの作用によって一気に下がります。さらに、血糖値が下がり過ぎた後は、体は正常な血糖値の状態を維持するために、血糖値を高くするような反応を起こします。
つまり、糖質を摂り過ぎると血糖値がジェットコースターが上下するように、大きく変動します。そして、インスリンによって急降下した血糖値を正常範囲まで戻す時に働く臓器が副腎です。
副腎は、腎臓の上に付着する器官です。副腎から分泌される「アドレナリン」には血糖値を上昇させる働きがあります。また他にも、アドレナリンは、血圧を上げてやる気を起こしたり、全身に血液を送り出すために心臓の働きを強くしたりする作用も持っています。
また、血糖値の上昇に伴うインスリンの分泌量が多くなれば、その分だけ拮抗する作用を持つアドレナリンの放出量も増えます。
ただ、アドレナリンの分泌量が多くなるということは、アドレナリンを合成している副腎にかかる負担も大きくなります。そのような状態が長期間続くと、副腎が疲労して働きが悪くなります。
そして、このようなに副腎が疲労して機能が低下している状態を「副腎疲労症候群」といいます。
副腎疲労症候群の症状には、以下のようなものがあります。
 ・体のだるさ
 ・気持ちの落ち込み
 ・立ちくらみ
 ・月経前症候群
 ・疲労
 ・花粉症、アレルギー
 ・怒りやすさ
このように、副腎疲労症候群は、さまざまな症状を引き起こします。医者の中には、「原因がわからない体の不調の多くが副腎疲労症候群にある」と言っている人もいます。しかし、この病気は一般的ではなく、ほとんどの病院では発見されることはありません。
こうしたことから、病院に行っても原因がわからず、上記のような症状が認められる場合は、副腎疲労症候群を疑ってみる必要があります。
そして、副腎疲労症候群の多くは、糖質の過剰摂取によるインスリンの大量分泌か、強い精神的なストレスによって起こります。そのため、副腎疲労症候群が疑われる場合には、食生活(糖質の過剰摂取)とストレスコントロールを見直してみましょう。
食生活とストレスコントロールの2つを改善するだけで、原因不明とされている症状が軽減するかもしれません。

糖化(タンパク質の非酵素的糖化)

糖質は、体の細胞を動かすエネルギー源になります。その一方で、糖質は過剰に摂取すると、インスリンの過剰分泌による副腎疲労症候群のように、体に対して悪影響を与える栄養素でもあります。
また、糖質が体に与える悪影響の1つとして「糖化(グリケーション)」が挙げられます。
糖化とは、血液中の糖分量が多くなって、「ヘモグロビン」や体を構成しているタンパク質に糖分が付着するという反応です。具体的には、血管を構成しているタンパク質などに糖分が付きます。
そして、タンパク質が糖化したものは「AGEs(終末糖化産物)」と呼ばれるものになります。このAGEsは、糖尿病の人にとって大きな問題となる、三大合併症の原因となったり、老化の進行に関係したりすることがわかっています
病院で行われる血液検査で検出される「HbA1c」や「グリコアルブミン」はAGEsです。
AGEsは、既に述べたように、血管内壁のコラーゲンなどの、さまざまなタンパク質で形成されます。そして、AGEsが生じると、血管は傷つけられて正常に働かなくなります。動脈硬化は、血管が糖化されて起こる問題の代表的なものです。
糖尿病の合併症の多くは、動脈硬化を初めとした血管の障害によって起こります。例えば、大きな血管に問題が生じると、脳梗塞や心筋梗塞を発症し、小さな血管が影響を受けると、腎臓病や網膜症、神経症といった合併症につながります。
こうした理由から、AGEsは糖尿病の合併症に関係しているといえます。
また、体の細胞は血液を介して栄養やエネルギー源を受けます。そのため、糖化によって動脈硬化が起こり血管の働きが障害されてしまうと、全身の細胞に栄養やエネルギーが供給されなくなり、細胞の活動に影響が及びます。
そうなると「体がだるい」「力が入らない」「集中できない」などの、さまざまな不調が現れます。
このように、糖化による影響は、脳梗塞などの死に直結するような問題から、ちょっとした体の不調にまで関係しています。

糖化を避ける食事方法

糖化を起こす原因は、主に2つあります。それは「高血糖状態」と、果物に多く含まれる「果糖」を摂取することです。そのため、体内で生じる糖化反応を抑えるためには、血糖値を上げないことと、果糖の摂取を控えることが大切です。
・高血糖を避ける
高血糖状態を避ける最も有効な方法は、糖質の摂取量を制限することです。また、糖質を含む食品でも、血糖値が上昇しにくいものを選んで食べることで、血糖値の変動を抑えることができます
血糖値の上昇は、糖質の吸収スピードに影響を受けます。つまり、食べた後、すぐに消化されて血液中に入るような食品は、血糖値を上げやすいものと言えます。その代表的な例としては、ブドウ糖や砂糖といったような糖類が挙げられます。
これらの糖類は、分子のサイズが小さく、単純な構造をしているため、消化の負担が少ないです。そのため、すぐに血液中に吸収されます。
一方で、豆類や玄米、全粒粉食品、ライ麦などの食品は、血糖値を急激に上げにくい食品とされています。これらの違いは、糖質が裸の形で存在しているか、皮を被っているかにあります
血糖値を上げにくい食品は、未精製食品に多いです。未精製食品は、玄米のように、白米という糖質成分を「ヌカ」という皮で覆っています。そのため、体内において皮の分解が必要な分だけ、消化するのにも時間がかかります。
さらに、ヌカには、白米には含まれていない重要な栄養素が豊富に入っています。そのことも、未精製の食品が、糖質が血液中へ移動するスピードを緩やかにしている要因です。
このように、糖質は他の栄養素と一緒に摂取することで、吸収スピードが遅くなります。ヌカの他にも、脂肪分やタンパク質が多い食品を一緒に摂ることも、血糖値の上昇は緩やかにします。
ダイエットを行う際に、野菜などを、食事の最初に摂取するように言われているのも、同じ理由です。野菜に豊富に含まれる食物繊維は、その他の糖質の吸収を抑える効果があります。
つまり、食事の最初に食物繊維を摂取することで、その後に食べる糖質の吸収を妨げます。その結果、血糖値の急な上昇を避けることができるという考えです。
以上のことから、高血糖状態を避ける方法は以下の2つです。
 ・糖質を避ける
 ・血糖値を上げにくい(未精製の)食品を選んで食べる
 ・糖質は、糖質の吸収を妨げる食品と一緒に食べる
・果糖を避ける
果物に含まれる果糖は「血糖値の上昇にはあまり影響しない」とされています。しかし果糖には「中性脂肪に変わりやすい性質」や「糖化を起こしやすい特徴」があります。そのため、果糖の取り過ぎには注意が必要です。
ただ、普段の生活で果糖を摂取する場合は果物として摂取します。そして、生のままでは、果物は水分量が多く、全体量に対する果糖の割合はそう多くはありません。
例えば、リンゴ1/3個であれば、糖質は果糖も含めて10グラム程度です。生で果物を摂取する場合は、他の成分も含まれている分、相対的に果糖の割合が少なくなります。そのため、ある程度の量であれば、果糖の害を過剰に心配する必要はありません。
一方、ドライフルーツの場合は注意が必要です。ドライフルーツは、乾燥させているため、水分量が少なくなって全体量に対する果糖の割合が高くなっています。そのため、ドライフルーツの状態であれば、少量であっても、かなりの果糖量を摂取することになります。
さらに、清涼飲料水などにも果糖が多く含まれています。そして飲み物の場合は、食べ物と比べるとどうしても摂取量が多くなります。
また、「果糖はブドウ糖と比べて満腹感を感じさせにくい」という特徴もあります
通常、血液中のブドウ糖量が多くなると、「インスリン」と「レプチン」と呼ばれる満腹中枢を刺激するホルモンの分泌が促進されます。また同時に、空腹感を刺激する「グレリン」の放出が抑制されます。そのため、血中のブドウ糖濃度が高くなると、満腹感を感じます。
しかし果糖は、血糖値を高めないため、こうした満腹中枢や空腹中枢に作用するホルモンに影響を与えません。そのため、いくら摂取しても満腹感が得られないのです。
つまり、果糖を含む清涼飲料水は、二重の意味で、果糖を過剰に摂取してしまいやすい食品だと言えます。
以上のことから、糖化を防ぐため工夫をまとめます。
 ・血糖値の上昇を引き起こしにくい食品を選ぶ
 ・ドライフルーツ、清涼飲料水を避ける
今回述べたように、糖質は、肥満以外にも体に対してさまざまな悪影響を与えます。その中でも、特にインスリンの過剰分泌と糖化は押さえておくべき糖質の害です。
こうした糖質の悪影響を知ることで、糖質制限の必要性を強く感じることができるようになります。