糖尿病

糖質制限食で血糖値が上がるメカニズム:中華レストラン効果

糖質の摂取が、血糖値を上昇させることは誰もが知っています。そのため、糖尿病患者は、食事の中にどれくらい糖質が含まれているかを考える必要があります。糖質を制限した食事では、ほとんど血糖値が上がることはありません。
糖尿病患者にとっては、血糖値の変動が一番の問題です。血糖値の上昇は、血管を硬くし「動脈硬化」を引き起こします。
糖尿病の合併症に脳卒中や心筋梗塞、腎臓病、神経症などが挙げられますが、これらは、全て動脈硬化によるものです。また、整形外科の視点で見ると、糖尿病患者は、関節の動きが制限されていたり、傷の治りが悪くなったりしていますが、これも血管の問題によるものです。
このようなことを防ぐために、食事での糖質の摂取量を制限します。しかし、糖質量を制限しても血糖値が上昇する場合があります。
今回は、糖質を制限した食事で、血糖値が上がるケースについて解説します。
 中華レストラン効果
通常、糖質を摂取しない限り、食事によって血糖値が上昇することはありません。しかし実際には、大量のタンパク質や低炭水化物食物、例えば、モヤシやチンゲン菜、キノコ、タケノコなどでも、血糖値が上がることがあります。
これは、中華料理店で出される料理にタンパク質と低炭水化物食物が大量に含まれたメニューが多いことから「中華レストレン効果」と呼ばれます。
食べ物を食べると、その食べ物は胃を通過した後に腸に達します。すると、腸は食べ物によって膨張することで刺激されます。このとき、血液中に「インスリン」の分泌を促すホルモンが放出されます。インスリンとは膵臓(すいぞう)で作られるホルモンであり、血糖値を下げる役割があります。
そのため食事を行うと腸が刺激され、インスリンの分泌が促されます。それにより、インスリンの働きで血糖値が低下するという反応が起こります。
また、インスリンは少量でも血糖値を大きく下げます。そのため膵臓は、インスリンの効果を調整するためにインスリンとは逆に血糖値を上昇させる作用のある、「グルカゴン」というホルモンも同時に分泌します。
つまり、インスリンとグルカゴンがバランスを取り合うことで、血糖値を一定に保つということです。
通常では、このように2つのホルモンがバランスを取ることで血糖値のコントロールが行われます。しかし糖尿病患者では、インスリンの働きが低下しています。そのような場合でも、腸が刺激されるとグルカゴンの分泌が起こる可能性があります。
そうなると、血糖値が高くなっているところにインスリンが作用しない状態でグルカゴンが働きかけるため、血糖値が一気に上昇します。
このような理由で、タンパク質と低炭水化物の食事でも血糖値が上昇する可能性があります。
またこの反応は、腸が十分に刺激されることで起こります。つまり、お腹一杯食べれば食べるほど、グルカゴンが生成される可能性が高くなります。そのため、血糖値を上げないためには、糖質の摂取量を抑えると同時に食事量自体を腹8分目にすることが大切です。
 満腹感を起こさせるホルモン「アミリン」
しかし、ここでもう1つの問題があります。膵臓からは、インスリンとグルカゴンの他に、「アミリン」というホルモンも作られます。アミリンはグルカゴンの分泌を抑制し、脳に満腹感を起こさせる作用があります。また胃の活動を抑えることで、過食を防げます。
糖尿病患者は、膵臓の細胞が障害されている場合がほとんどです。そのような場合、アミリンの産生も抑制されています。
そのため、糖尿病患者は食後も空腹感が持続し、再び食事を摂ってしまいます。このことが腸の膨張を加速させ、さらに中華レストラン効果を促進させます。つまり、どんな固形物でも、血糖値を上昇させる可能性があるということです。
今回述べたように、基本的に血糖値を上昇させる食べ物は糖質のみです。しかし、大量に食べて腸を過剰に刺激することも血糖値を上げる原因になります。そのため、血糖値を一定に保つためには、糖質量の制限と腹8分目の食事の両方が必要です。