肩関節は、整形外科を受診する患者さんがよく症状を訴える場所です。とくに60代以上に多いのは、「肩関節周囲炎」や「腱板損傷(けんばんそんしょう)」などの疾患です。また、スポーツ選手も肩を痛めやすい傾向にあります。
このように、肩関節は、幅広い年代で痛みを訴えられる場所です。しかし、どの年齢層であっても、肩の痛みの原因の多くは「肩甲骨」にあることがほとんどです。
そこで今回は、肩関節の痛みと肩甲骨の関係性について解説します。
肩関節とは
肩関節は、上腕骨の上端にある丸形の「上腕骨頭」と、肩甲骨の最外側に位置する「関節窩」によって構成されます。この関節の形状は「球関節」といわれ、大きな可動性を持っていることが特徴です。
しかし、その特徴ゆえに、負担がかかりやすい場所でもあります。それを補うように、多くの靭帯や筋肉によって補強されています。
そのような関節の安定性を保つための構造の一つに、「ローテーターカフ」と呼ばれる、4つの筋肉があります。この筋肉は、肩甲骨から上腕骨に付着し、上下左右の4方向から肩関節を包み込み、関節を安定させます。
関節は、構成される2つの骨の「噛み合わせ(適合性)」が合うことで、機能を発揮します。もし適合性に問題がでると、関節周りの筋力低下や、動きの制限、痛みが生じます。
このような現象は、関節を守るための反応です。もし関節の適合性が悪い状態で、強い力が加わったり、痛みが出るくらいの大きな動きが要求されたりすると、関節は壊れます。これが、痛みを我慢して運動をしてはいけない理由です。
肩関節における肩甲骨の役割
先ほど述べたように、関節は適合性が維持されることで機能が発揮されます。そのため、関節の噛み合わせが悪くなることを避けます。このとき、ローテーターカフが中心となって適合性を保とうとします。
ローテーターカフは、一般的には上腕骨を動かす筋肉として知られています。しかし、実は、上腕骨より肩甲骨を動かす作用の方が重要になります。
つまり、上腕骨が肩甲骨の関節窩に対してわずかにズレたとき、ローテーターカフは上腕骨の付着部を支点に、肩甲骨に作用し関節窩の傾きを変えることで、上腕骨のズレを修正します。結果的には、関節の適合性を維持する役割を果たすということです。
また、肩甲骨が上腕骨の動きに合わせるには、肩甲骨が自由に可動する必要があります。もしローテーターカフが働いても、肩甲骨の可動性が制限されていると、関節窩の傾きは調整できず、関節の適合性も合わせることができません。
そのため、肩甲骨の可動性が低下すると、関節の機能が低下し、先ほど述べたような筋力低下や可動域制限、痛みなどの症状が出現するということです。
以上のように、関節が機能を発揮するためには、関節の適合性が維持されていることが条件となります。そして、肩関節においては、肩甲骨が柔軟に動くことで、上腕骨との噛み合わせを調整します。そのため、肩甲骨の可動性は肩関節にとって大切ということです。