体には、自然治癒力というものが備わっています。これは特別なものではなく、誰にでもあるものです。例えば、骨折しても、一定期間固定すれば治癒するのは、自然治癒力が働いているためです。
その自然治癒力に深く関係するシステムが、「ホメオスタシス機構」です。人の体はホメオスタシス機構が働くことによって、体内で崩れたバランスが調整されます。
例えば、ダイエットにおいてもホメオスタシス機能は大きく関係しています。特にダイエット中に問題となりやすい停滞期は、ホメオスタシス機構が作用するために生じる現象です。
こうしたことからも、体の健康について理解するためには、ホメオスタシス機構について学ぶことが大切です。
そこで今回は、ホメオスタシス機構について解説します。
ホメオスタシス機構とは
ホメオスタシス機構とは、「生体恒常性(せいたいこうじょうせい)」とも言われ、生物において、体の内部環境を一定の状態に保ち続けようとする身体の仕組みのことを言います。
例えば、食事で糖質を摂取したとき、食べた直後に急激に血糖値は上昇します。しかし、その高血糖状態が続いては、体にとってはかなりの負担になります。そのため、体のさまざまな機能を使って血糖値を下げるような反応が起こります。
これは、コレステロール値や血圧など、身体すべての生理機能でも同じようなことが起こります。
つまり、人の体は、傷を治すだけでなく、「正常から外れたものを元に戻す」という機能を持っているのです。この役割を担うのが、ホメオスタシス機構です。このように、体の機能全てにおいて、生理的反応を調整する力を「自然治癒力」ということができます。
痛みなどでも同様です。ひざが痛いときに、痛みがある足をかばうようにして歩くのは、損傷した組織へのストレスを避け、治癒を促すためです。
ホメオスタシス機構に必要な身体機能
ホメオスタシス機構が正常に働くには、必ず「情報伝達」が上手くいっていることが条件です。
このことについて、血糖値を例に挙げて解説します。血糖値を調整するためには、まず、体が血糖値の「現在の状況を把握する」必要があります。そして、それに対して「どう対処するのか」を判断し、すい臓や筋肉などの血糖値をコントロールする組織に指令を伝えます。
この「現在の状況を把握する」、「組織に指令を伝える」ということを行うためには、情報伝達が不可欠になります。
もちろん、「どう対処するのか」を判断する部分に障害があっても、ホメオスタシス機構は上手く機能しません。しかし、情報伝達機能に異常があると、たとえ対処の仕方そのものが正常であっても、ホメオスタシス機構の働きが正しく行われなくなります。
そのため、まずは、情報伝達機能が正常であることが必須になります。
情報伝達機能を担っているシステムは「循環系」「神経系」「筋膜系」の3つです。これらが相互に作用することで、身体各部位の情報を全身に伝えます。
例えば、血糖値は、ホルモン(循環系)と神経系(自律神経)によって調整されます。血糖値の変化は、脳やすい臓で感知されます。脳からは自律神経とホルモンを介して、肝臓などの末梢組織に働きかけ血糖値を調整します。
また、すい臓からは、ホルモンを分泌し、同じく肝臓などの組織に作用し、血糖値を変化させます。
さらに、姿勢の崩れなどは、全身をボディースーツのように包む「筋膜」によって感知され、その情報が全身に伝わります。体は、その情報を元に、姿勢のバランスをとるような反応をします。
このように、自然治癒力を機能させるホメオスタシス機構は、3つの情報伝達系によって成り立ちます。そのため、この3つのシステムが正常であることは、障害予防においては必須の条件となります。