痛み・疼痛

関節痛の原因は脊柱にある:筋肉の緊張、関節のズレと背骨の関係

自律神経がさまざまな病気に関係していることは、多くの人が知っています。自律神経に関する病気のうち、代表的なものは「高血圧」です。ストレスなどで、自律神経のバランスが崩れることで高血圧になることは、一般の人でも知っていることです。
しかし、多くの「ひざ」や肩などの関節の痛みも、自律神経の問題が原因で生じていることを理解している人はいません。
つまり、睡眠不足やストレス、食生活の不摂生などが、関節の痛みの原因となっている可能性があるのです。これが、関節痛を持つ人の訴えにおいて、日によって症状の程度が変化する理由です。
そこで今回は、自律神経と関節痛の関係について解説します。
 関節痛が起こる原因
関節痛は、整形外科を受診する多くの患者さんが抱える悩みです。ひざの痛みを例に挙げると、「歩くと痛い」「階段動作で痛い」「曲げると痛い」など、疼痛が出現する場面やタイミングはさまざまです。
しかし、ほとんどの関節痛は、「関節の噛み合わせが合っていない」ことで生じています。
関節は、噛み合わせ(適合性)が合っていることで、機能を発揮します。関節の主な働きは、「動きを作ること」と「力を伝えること」です。
これらのうち、「動きを作る機能」に関しては、想像しやすいと思います。「手を口に持ってくる」という動作1つにしても、肘の関節がなかった場合、遂行できない動きになります。肘に関節があり、その関節が曲がって初めて達成されます。
一方、体のある場所で作られた力は、必ず何かの運動に変換されるか、体のどこかで吸収される必要があります。そこで重要になるのが、関節がもつ「力を伝える機能」です。
例えば、ボールを投げる動作では、腕を振る動きが必要です。そのためには、筋肉を使って、力を生み出さなければなりません。その力は、「腕の動き」という運動に変えられた後、指先まで伝わり、最終的にボールが移動する力に変換されます。
このとき、肩甲骨周囲で運動のための力が作られた場合、その力は、肩関節、肘関節、手関節、指関節を止まることなく伝わる必要があります。そのため、これらの関節のどこかに適合性の低下が生じていると、力はボールに伝わりません。
このような状態では、適合性に問題がある関節部分で、運動のために生み出された力が暴発してしまいます。これが関節痛につながるのです。
 関節適合性の低下は背骨の問題で起こる
このような、関節の適合性の低下は、ほとんどが背骨の影響で生じます。背骨は、S字状弯曲(わんきょく)構造をしています。そして、背骨が柔軟かつS字状をしていることで、人はバランスを保っています。
人は、二足歩行を獲得したために、高度なバランス能力が必要になりました。このとき、その役割を担ったのが背骨でした。背骨の関節やその周りにある、バランスの崩れを感知する「感覚器」が発達することで、背骨を中心としたバランスシステムが精細化しました。
そのため、背骨だけで調整できるようなわずかなバランスの崩れは、背骨にある感覚器で知覚され、背骨の動きで調整されます
しかし、バランスの崩れが大きかったり動揺が小さかったりしても、背骨の動きが制限されて背骨だけで対応できないようなケースでは、体の他の部位で代償します。そして、背骨の動きを肩代わりするのはが、四肢の筋肉です。
四肢の大きな筋肉を緊張させることで、体の動揺を起こさないように体を固める反応が起こります。これによって、バランスが崩れないようにします。
筋肉は、関節の周りの骨についているため、緊張すると関節をズラし、適合性を低下させます。つまり、「背骨の柔軟性低下→バランス能力障害→四肢の筋肉の過緊張→関節適合性の問題→関節痛」という経過を追って痛みが生じます。
このような理由から、どこの部位の関節痛であっても、原因は背骨にある可能性があるということです。あなたのひざの痛みは、もしかしたら背骨の問題から起こっているのかもしれません。