副腎疲労症候群(アドレナルファティーグ)は、多くの病院で「不定愁訴」や「原因不明」と診断される不調の原因となる病気です。具体的には、副腎疲労症候群を発症すると、倦怠感や抑うつ感、立ちくらみ、頭痛、慢性痛などの症状が出現します。
ただ、一般的に行われる血液検査や尿検査では、重度に副腎機能異常が生じて発症する「アジソン病」や「クッシング症候群」診断できても、それらよりも軽度である副腎疲労症候群は見つけることができません。そのため、いくら病院で検査を受けても、副腎機能に問題があることは見逃されてしまい、最終的に原因不明とされます。
また、副腎疲労症候群には類似した疾患や関連した疾患などがあります。これらの関連する病気について知っておくことで、より正確に副腎疲労症候群を理解することができるようになります。
そこで今回は、「副腎疲労症候群(アドレナルファティーグ)の類似・関連疾患」について解説します。
副腎機能が低下して起こる疾患
副腎疲労症候群は、「腎臓」の上に付着する「副腎」と呼ばれる器官の働きが悪くなって生じる病気です。
副腎では、「コルチゾール」や「カテコールアミン」「ステロイド」といった、さまざまなホルモンが合成・分泌されます。これらのホルモンには「心拍数や呼吸数を上げる」「炎症やアレルギー反応を抑える」「やる気を高める」「食べた物からエネルギーを作り出す」など、身体にとって重要な役割があります。
そのため、副腎の働きが低下すると、多種多様な症状が出現することになります。そして、副腎で合成されるホルモン量が少なくなって生じる病気は、副腎疲労症候群だけではありません。
以下に記す疾患は、副腎機能の低下が原因で発症する病気の一例です。
・アジソン病
アジソン病とは、「慢性腎機能低下症」ともいわれ、副腎の働きが著しく低下して発症する病気です。
病態は「副腎の機能が低下して、副腎ホルモンの合成・分泌が悪くなった結果、さまざまな不調が生じる」というもので、副腎疲労症候群(アドレナルファティーグ)と同じです。また、倦怠感や立ちくらみ、うつ症状、しみ、月経異常、PMSなど、症状に関してもアドレナルファティーグと同様のものが現れます。
ただ、アジソン病は副腎疲労症候群よりも副腎機能の低下が著しく、血液検査や尿検査において明らかな異常が見つかります。さらに、それに伴って出現する症状も副腎疲労症候群より強いです。
つまり、アジソン病は副腎疲労症候群が進行して重症化してしまった病気だといえます。
・慢性疲労症候群(CFS)、線維性筋痛症
慢性疲労症候群や線維性筋痛症は、副腎疲労症候群と同じように、さまざまな不調が現れているにも関わらず原因不明と診断される病気です。
例えば、慢性疲労症候群は、倦怠感や筋肉痛、記憶力の低下、不眠など、多様な症状が出現します。ただ、血液検査などでは異常が認められることはないため、患者さんの訴えを元に診断されることになります。
また、線維性筋痛症は全身の痛みが主な症状であり、その他にも不眠、うつ病、逆流性食道炎 ドライマウスなど、さまざまな不調が伴います。線維性筋痛症も同じように、血液検査やMRI、CTといった検査では原因を見つけることはできません。
そして、これら2つの疾患には、共通した「ある細菌」が関係している可能性があることが指摘されています。その細菌が副腎の疲労を引き起こして、慢性疲労症候群や線維性筋痛症の発症だけでなく、症状を慢性化させる原因となります。
副腎疲労症候群になると、免疫機能を担う副腎ホルモンの合成が少なくなるため、細菌に感染しやすくなります。さらに、感染した後も治癒が遅くなるため、病気が慢性化してしまいます。
つまり、「副腎疲労症候群になると慢性疲労症候群や線維性筋痛症を発症しやすくなり、慢性疲労症候群・線維性筋痛症を患うと副腎の機能が低下する」「副腎の働きが悪くなると、これらの病気が慢性化する」というように、副腎の疲労と慢性疲労症候群・線維性筋痛症は、相互に関連しているといえます。
副腎疲労性症候群と関連している疾患
アジソン病や慢性疲労症候群、線維性筋痛症は副腎機能の低下が原因となって起こる病気です。そのため、これらが発症する前には、副腎疲労症候群の症状が現れている可能性が高いといえます。
その他にも、以下の疾患は、副腎疲労症候群と関連している疾患として知られています。
・アルコール依存症、低血糖症
アルコール依存症は、低血糖症が原因で発症することがほとんどです。低血糖症とは、血液中の糖分量が少なくなっている状態をいいます。こうした低血糖状態が、アルコールへの依存を強くします。
ご飯やパンといった主食、お菓子などは、糖質(炭水化物)が大量に含まれている食品です。そして、これらの食べ物はほとんどの人が日常的に食べています。
こうした糖質が豊富な食品を食べると、血糖値が急激に上昇します。さらに、急に上がった血糖値は、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンの作用によって下げられます。ただ、ほとんどのケースでは、インスリンが過剰に分泌されてしまい、血糖値が正常範囲より低くなってしまいます。
つまり、炭水化物が豊富な食品を食べると、糖質を摂取したにも関わらず、低血糖の状態になってしまいます。こうした一時的に生じる低血糖は「機能性低血糖」と呼ばれます。日常的に糖質を摂取している人の多くは、機能性低血糖を繰り返しています。
機能性低血糖状態になると、身体は血糖値を上げようとして副腎ホルモン(アドレナリン)を分泌します。そのため、機能性低血糖を繰り返している人は、副腎に大きな負担がかかり、副腎疲労症候群を発症することになります。
そして、副腎の働きが悪くなるとアドレナリンが分泌されなくなるため、低血糖の状態が維持されます。
その結果、食べ物によって血糖値を高めようとして糖分を欲します。さらに、低血糖になると糖分と同じようにアルコールを飲みたくなることが実験によって明らかになっています。
ただ、アルコールには血糖値を下げる働きがあります。そのため、「糖分量が多い食事 → 機能性低血糖 → 糖分量が多い食品を欲する → 機能性低血糖……」、もしくは「糖分量が多い食事 → 機能性低血糖 → アルコールを欲する → 低血糖 → 糖分量が多い食事を欲する → 機能性低血糖……」という悪循環に陥ってしまいます。
こうした悪循環を繰り返すことで、最終的にアルコール依存となってしまいます。
このように、副腎の働きと低血糖症、アルコール依存症には相互に関連があることを理解しておくようにしてください。
・アレルギー疾患
副腎疲労症候群は、アトピー性皮膚炎(アトピー)や喘息、花粉症といったアレルギー疾患とも関係しています。
多くの病院では、アレルギー疾患に対して「ステロイド薬(プレドニンなど)」が処方されます。ステロイド薬とは、アレルギー反応を抑える強い作用を持つものです。そのため、プレドニンなどのステロイド薬を使用すると、アレルギー症状は一時的に軽減されます。
そして、こうしたステロイド薬は「副腎皮質ホルモン」で作られています。
基本的には、身体にアレルギー反応が起こると、副腎から副腎皮質ホルモンが合成・分泌されてアレルギーが抑えられます。つまり、健康な状態であれば、体の自然な働きによってアレルギー症状が出現することはありません。また、アレルギー反応が出ても一時的なもので、すぐに落ち着きます。
その一方で副腎疲労症候群を患っていると、副腎でホルモンが作られなくなるため、アトピーや喘息といったアレルギー症状が現れます。
さらに、アレルギー反応が続くと、大量の副腎皮質ホルモンが必要になるため、副腎に大きな負担がかかります。その結果、副腎疲労症候群を発症することになります。
このように、副腎疲労症候群とアレルギー疾患には相互の関係性があるということを知っておいてください。
その他にも、以下の疾患や症状は、副腎疲労症候群と関連があるものの例です。
・虚血性心疾患
・関節リウマチ
・慢性、再発性呼吸器感染症
・うつ
・カンジダ
・ニキビ
・頭痛
・腰痛
今回述べたように、副腎疲労症候群は、さまざまな疾患と相互に関係しています。その中でも、以上に説明した病気は副腎疲労症候群との関連が強く、問題となりやすいものです。
こうした副腎疲労症候群と他疾患との関係性を知ることで、副腎疲労症候群をより深く理解することができるようになります。