障害予防法

障害を予防する睡眠法:寝る環境(照明、騒音、湿度、温度)

関節痛や倦怠感、偏頭痛など、体の不調を予防・解消するためには、自律神経を整えることが大切になります。自律神経は、内臓や血管の運動、ホルモンの分泌など、体のさまざまな機能を調整しています。
そのため、自律神経のバランスが崩れると、全身にあらゆる症状が出現する可能性があります。ひざ関節の痛みや、腰痛といった無関係のような整形外科的疾患も自律神経の乱れが原因であることも少なくありません。
また、自律神経の働きが悪くなると、ホルモン調整にも問題が生じるためダイエットにも悪影響を及ぼします。
このように、体の健康に大きく関わる自律神経ですが、自律神経を乱すきっかとなるものに「睡眠」があります。睡眠は自律神経と深い関係にあり、睡眠が障害されると自律神経のバランスは崩れますし、自律神経に問題が生じると睡眠が上手くいかないというように、相互に関係しています。
そのため、体の健康を維持するためには、良質な睡眠が欠かせません。良い睡眠と取ることで、自律神経が適切に働くため、体の不調が起こりにくくなります。
そこで今回は、良質な睡眠を取るために欠かせない「睡眠環境」について解説します。
 明るさ
良質な睡眠を取るための環境として、部屋の明るさと騒音の2つはとても重要です。あまりに明るく、周囲の音がうるさい部屋では、ほとんどの人がぐっすり眠ることはできません。
人の体は、日中に明るい光を浴びて、夜は光を避けることで1日のリズムを作ります。光の照射リズムに合わせて、睡眠を誘発したり、深い睡眠を導いたりするようなホルモンが分泌されます。そのため、1日を通して照明環境を調整することは、良質の睡眠を取るために欠かせません。
具体的には、以下のような明るさが好ましいです。

日中

夕方

就寝前

1,000ルクス以上

200ルクス前後

0.3ルクス

特に、夕方以降に500ルクス以上の光を浴びると、睡眠を誘発する「メラトニン」と呼ばれるホルモンの分泌が低下します。そのため、仕事が終わって家に帰った後は、薄暗い部屋で過ごすことが、良質な睡眠につながります。
ペンダント蛍光灯20Wの直下50センチメートル、または白熱電球100Wの直下60センチメートルの場所が500ルクス程度の明るさだといわれています。
以下に、いくつか明るさの目安となる例を記します。

晴天昼太陽光

100,000ルクス

コンビニ

1,000~1500ルクス

パチンコ店内

1,000ルクス

街灯下

50~100ルクス

ライター30センチメートル

15ルクス

ロウソク20センチメートル

10~15ルクス

月明かり

0.5~1ルクス

このように、就寝前に適切な明るさである3ルクスとは。かなり暗い状態です。この表からも、寝るときの環境としては、真っ暗でカーテンを開けて入る月明かりくらいが適切だといえます。
以上のように、日中と夕方以降、就寝時に分けて光環境を変えることで、良質な睡眠を取ることができるようになります。
ちなみに、起床時は明るい太陽の光を浴びることで体内時計が調整されるため、体のリズムを整えることにつながります。そのため、朝はカーテンを開けるか外に出て、しっかり太陽の光を受けるようにしましょう。
 騒音
騒音も、睡眠を障害する大きな要因の1つです。騒音は、入眠しにくくするだけでなく、深い眠りを妨げます。そのため、寝室の騒音環境はとても重要になります。
具体的には、40デシベルを超えると入眠しにくくなり、寝た後も深い眠りに入りづらくなります。そのため、夜中も途中で目が覚めやすくなり、朝の目覚めも悪くなります。つまり、良質な睡眠を取ることができなくなります。
40デシベルとは、図書館内の静けさに相当するものです。これは、かなり静かな環境でないと良質な睡眠を取ることができないことがわかります。ちなみに、壁にある電気のスイッチを入れる音でも48デシベルあります。
以下に、よく経験する騒音の大きさを記します。

子供の駆け足

50~65デシベル

車のアイドリング

65~75デシベル

ドアの開閉音

70~80デシベル

犬の鳴き声

90~100デシベル

エアコン

40~60デシベル

話し声

50~60デシベル

テレビ

55~70デシベル

洗濯機

65~70デシベル

このように、普段気にしていないような音でも、実際には良質な睡眠を妨げている可能性があります。表にある例は、基本的に40デシベルを超えているものです。
そのため睡眠中には、できるだけこれらの生活騒音を避けることが大切だといえます。そうすることで、良質の睡眠を取ることにつながります。
 湿度と温度
寝る環境の中で、最も問題になりやすいのが温度と湿度です。「夏の蒸し暑い時期になかなか寝付けずに苦労した」ということは、多くの人が経験されていることだと思います。
睡眠中に最適な温度は、服を着ている状態で26℃前後だとされています。そして、湿度は相対湿度が50~60パーセント程度が最も眠りにとって良い湿度であるといわれています。
また大切なことは、室温というより体温です。そのため、寝具の種類によっても最適な室温は変化します。
具体的には、毛布を利用した場合は室温が13~25℃、さらに羽毛布団を追加した場合は3~17℃の室温までは、睡眠への影響が小さいです。しかし、冬などで毛布などの寝具を使ったときに良い睡眠感を得られるのは、室温が16~19℃であるといわれています。
以上のことから、就寝時の室内は、温度が16~26℃、湿度が50~60パーセントを目指すようにすることで、良質な睡眠を取ることができるようになります
ちなみに、体温や体感温度は人によって異なります。そのため、夫婦や子供と同じ布団を使って寝ることは、最適な睡眠を妨げる原因になります。また、ペットなどと一緒に寝ることも同様です。睡眠が十分取れていないと感じている人は、そのようなことが関係している可能性があることも知っておいてください。
今回述べたように、睡眠は自律神経に大きく関係しています。そして、良質な睡眠を取るためには、適切な睡眠環境で眠ることが大切です。まずは、以上に述べた「明るさ」「騒音」「温度・湿度」の3つに注意するようにしてください。
そうすることで、良質な睡眠を取ることができるようになり、自律神経のバランスも整います。その結果、体の不調を予防・解消することにつながります。