障害予防法

副腎疲労症候群(アドレナルファティーグ)の原因と予防・治療法

副腎疲労症候群とは、「副腎」と呼ばれる器官の働きが低下して、そのことが原因で体にさまざまな不調が出現している状態を指します。そして、副腎の疲労は一般的な検査では見つからないため、病院を受診しても「原因不明」「不定愁訴」として扱われ、適切な診断と治療を受けることができないケースがほとんどです。
ただ、副腎疲労症候群となる原因の多くは、生活習慣といったような、あなた自身で改善できるものです。つまり、あなたが副腎疲労症候群について学び、対処法を実践することで、副腎疲労症候群による不調は解消することができます。
そこで今回は、「副腎疲労症候群(アドレナルファティーグ)の原因と治療・予防法」について解説します。
 副腎疲労症候群の原因
副腎疲労症候群は、副腎に過剰なストレスが加わり、副腎が疲労してしまうことが原因で起こるものです。副腎では、ストレスに対応するために必要な「アドレナリン」や、炎症、アレルギー反応を抑える作用をもつ「ステロイド」と呼ばれるホルモンが合成・分泌されます。
そのため、副腎が疲労してこれらのホルモンが作られなくなると、さまざまな不調が出現します。
そして、副腎に過剰な負担をかける要因はたくさんあります。そこで以下に、副腎疲労症候群の原因となりえる要素について記します。
 ・身体的ストレス
過剰な運動や労働は、副腎を疲労させる大きな要因になります。
例えば、激しい運動を行うことは、副腎で作られるアドレナリンの分泌を促します。そうはいっても、週に1、2回といったように、たまにハードな運動を実践することは大きな問題とならないことがほとんどです。
ただ、こうした身体的ストレスに心理的ストレスや環境的ストレスが加わると、いくら運動の回数が少なくても副腎疲労症候群を引き起こすきっかけになります。
その他にも、栄養不足や偏った食事も身体的な負担を大きくします。
アドレナリンやステロイドといった副腎ホルモンを合成するためには、ホルモンの原料となる栄養素が必要です。特に、コレステロールは副腎ホルモンを作る上で欠かせない栄養になります。また、ビタミンやミネラルは、副腎が正常に活動するために必要不可欠な栄養素です。
つまり、食事の偏りによってこれらの栄養が不足することは、副腎疲労症候群を引き起こす一要因となります
さらに、リウマチなどの炎症性疾患や、喘息・アトピーといったアレルギー疾患は、副腎ホルモンを大量に消費することになります。そのため、これらの病気を長期間患っていると、副腎疲労を引き起こすことにつながります。
そこで以下に、副腎疲労症候群の原因となりえる身体的ストレスの例を挙げます。
・過剰な労働
・睡眠不足、夜更かし
・栄養不足、食事の偏り
・脱水
・急激な環境の変化(極度の寒さや暑さ)
・リウマチ、アレルギーなどの病気
・シックハウスなどの有害化学物質
・感染症
・手術
 ・心理的ストレス
過労やハードなトレーニングといったような身体的ストレスだけではなく、心理的なストレスも副腎疲労症候群を引き起こす原因になります。
例えば、離婚や家族との死別、失業などは、大きな心理的ストレスになります。人の体には、心理的なストレスが加わると、過剰な運動をしたときのように、心拍数や呼吸数を増やすような反応が起こります。
つまり、精神的なストレスがかかると、人は体を興奮させて戦闘体勢を作ることで、精神的な負荷に抵抗します
そして、こうした興奮状態は副腎から分泌されるアドレナリンによって作られます。
心理的なストレスが加わると、精神的な負荷に反応して副腎からアドレナリンが放出されます。その結果、自律神経が刺激されて心拍数や呼吸数の増加が起こります。
ストレスが一時的なものあれば、副腎によるアドレナリンの分泌増加も長くは続かないため問題となりません。ただ、精神的な負担が長期間続いたり身体的ストレスと重なって起こったりすると、副腎に過剰な負荷がかかってしまい副腎は疲労してしまう可能性があります。
そこで以下に、副腎疲労症候群を引き起こすきっかけとなる心的外傷の例を記します。
・離婚、結婚
・引越し
・失業
・財政困難
・親族や同僚との争いごと
・家族や友人の病気、死
このように、副腎疲労症候群の原因となるものは、大きく身体的ストレスと心理的ストレスの2つに分けられます。ただ、これらは相互に作用して積み重なります。そのため、発症のきっかけとなった問題と、最も大きく影響しているものは違うこともあります。
例えば、夫婦仲の悪さによって精神的ストレスが蓄積されていた人がいたとします。そうした状態で、父親が亡くなった後に副腎疲労症候群が発症したら、表面上は父親の死によるストレスが一番の原因と考えがちです。
しかし実際には、父親の死は誘発因子であって、根本的な問題は夫婦仲にあるかもしれません。そのため、こうしたケースでは根本的な原因である奥さんとの仲を修復しなければ、副腎疲労症候群を解消することはできません。
このように、副腎疲労症候群について考える際には、以上に挙げた要因を総合的に考慮することが大切です。
 副腎疲労症候群の予防・治療法
副腎疲労症候群を引き起こす原因は、大きく分けて身体的ストレスと心理的ストレスの2つに分類されます。そして、副腎疲労症候群に対する予防・治療は、主にこれらの要因を取り除くことになります。
つまり、副腎疲労症候群を予防・解消するためには、「根本的な原因を見つけて、それを止める」ということが先決だといえます。
まだ症状が軽かったり問題が深くなかったりする人は、原因となっている行動や習慣を変えるだけで、十分に副腎疲労症候群を克服することができます。ただ、長年副腎疲労症候群に悩まされていたり、原因が深刻であったりする人の場合、それだけでは改善できないこともあります。
そこで以下に、副腎の疲労を予防し、改善をサポートする方法について記します。
 ・食事療法
副腎疲労症候群を解消するために、食事は非常に重要な要素になります。一言で食事といっても、副腎の疲労を防いだり回復させたりするためには、さまざまな視点から食事について考えなければいけません。
例えば、既に述べたように、不足する栄養素を補うことは副腎の働きを促すことになるため、疲労した副腎の回復には欠かせません。また、副腎の働きをサポートする栄養素や副腎に負担をかけないような食事のタイミングなどは、副腎の疲労を防ぐために大切な要素として挙げられます。
そこで以下に、特に重要かつ多くの人の副腎疲労を引き起こしている原因となっている「副腎に過剰なストレスをかけている栄養素」について記します。
副腎疲労症候群を患っている人の中でも、問題となりやすい栄養素・成分として「糖質」と「カフェイン」が挙げられます。
糖質は、一般的に炭水化物と呼ばれるものであり、栄養素の中でも唯一「血糖値(血液中の糖分量を示す数値)」を上昇させるものです。米や小麦粉、砂糖などに多く含まれており、こうした糖質が多く含まれている食品を食べると血糖値が急激に上がります。
血糖値が高い状態は、血管を硬くして「動脈硬化」を引き起こすことになるため、体にとって好ましい状態ではありません。そのため、急激に血糖値が上昇したときには、体は、「すい臓」から血糖値を下げる働きを持つ「インスリン」というホルモンを大量に分泌して、血糖値を正常範囲に戻します。
ただこのとき、一気に高くなった血糖値を下げるためにインスリンが必要以上に放出されてしまいす。その結果、逆に血糖値が低くなりすぎて「低血糖」の状態になります。
このように、糖質を摂りすぎると「糖質摂取 → 急激な血糖値上昇 → インスリンの大量分泌 → 急激な血糖値低下 → 低血糖状態」というように、結果的に血糖値が下がりすぎてしまいます。そして、こうして起こった低血糖状態を、「機能性低血糖」といいます。
既に述べたように、人の体にとって高血糖の状態は、動脈硬化を引き起こすことにつながるため危険です。しかし、それよりも危険なのが低血糖状態です
高血糖はすぐに死に至るような問題ではありませんが、低血糖は緊急に改善しないと、命を落とす危険性があります。そうしたことを避けるために、人の体では血糖値が下がり過ぎると、副腎からアドレナリンが放出されて血糖値を上げるような反応が起こります。
つまり、「糖質摂取 → 急激な血糖値上昇 → インスリンの大量分泌 → 急激な血糖値低下 → 低血糖状態 → 副腎によるアドレナリン分泌 → 血糖値上昇」というような反応が起こり、低血糖状態を改善させます。
このように、糖質を過剰に摂取すると血糖値が大きく変動します。そして、それを修正する過程で副腎に負担がかかります。
こうした血糖値の変動が、1日2~3回であれば副腎にかかるストレスは大きくありません。しかし、このような血糖値の大きな変化が何度も繰り返されていると、副腎にかかる負担はどんどん蓄積されます。その結果、副腎疲労症候群を引き起こすことにつながります。
そして、副腎疲労症候群を患っている人の多くは、甘いものや小麦粉を多く含むパンを好んで大量に食べます。以上のことから、副腎疲労症候群を改善するためには、まずは糖質の過剰摂取を止めることが重要だといえます。
さらに、副腎に対して直接的に負荷を加える成分があります。それがカフェインです。
コーヒーやコーラ、エナジードリンクなどに多く含まれているカフェインは、副腎に作用して体を興奮させる働きがあります。カフェインを摂取すると、副腎が刺激されて心拍数や血糖値を上げて体の緊張を高めるアドレナリンやコルチゾールといったホルモンが分泌されます。
例えば、朝に倦怠感が残っているときや昼過ぎの眠気がある際に、コーヒーを飲むと元気になる人は多いです。これは、カフェインによって副腎が無理やり刺激された結果起こる反応です。
つまり、カフェインを大量に摂取することは、副腎を酷使することにつながります。
こうしたことから、カフェインを大量に含むコーヒーやコーラ、エナジードリンク、チョコレートなどは、副腎疲労症候群を解消するために避けるべき食品だといえます。
以上のように、副腎疲労症候群を改善するためには、まずは糖質とカフェインの摂取を最小限にすることが大切です。
 ・整体
副腎の疲労を回復させるために、「整体」を行うことは有効な手段になります。一言で整体といっても、その方法はいくつかあります。
例えば、整体師の施術によって副腎に働きかけることもできますし、あなた自身がストレッチなどを行うことで、副腎に良い刺激を与えることもできます。特に、背骨は副腎に対して大きな影響を与える部位になるため、背骨に対する指圧や背骨を動かすような体操は効果的です。
副腎に限ったことではありませんが、内臓は背骨から出ている神経によってコントロールされています。そのため、内臓と背骨は相互に関連しており、内臓に不調が生じると背骨に影響が及びます。こうした反応を、専門用語で「内臓体性反射」といいます。
具体的には、内臓に問題が生じると、各内臓に対応した背骨の部位にある筋肉が固くなって、背骨の動きが悪くなります。
またそれと同じように、背骨を刺激することは内臓に影響を与えることになります。これは専門用語で、「体性内臓反射」といいます。例えば、副腎に関係している背骨の部位に指圧を加えると、副腎に対して何らかの作用を及ぼすことになります。
こうした体性内臓反射を使うことで、副腎の回復をサポートすることができます。
背骨の中でも副腎と関連している部位は、腰骨の上に位置するところになります。具体的には、「みぞおち」の高さにある背骨辺りを刺激することで、副腎に刺激を与えることができます。そのため、その周囲の筋肉を指圧、マッサージしたり、ストレッチしたりすることは、副腎の回復を助けることにつながります。
このように整体は、副腎疲労症候群を改善するための効果的な手段の1つだといえます。
 ・運動
運動も、副腎疲労症候群の問題を解消するために効果的なものになります。ただ、注意しなければいけないことは、過剰な運動やハードな運動は副腎を疲労させることになるため避けなければいけません。
副腎を回復させるために有効な運動は、有酸素運動やストレッチといった軽いものです。
有酸素運動には、さまざまな効果があります。例えば、副腎疲労症候群を引き起こす大きな原因の1つに心理的ストレスがあります。有酸素運動には、ストレスを解消して精神的ストレスを和らげる作用があります。
また、有酸素運動を行うことは体力の向上にもつながります。そして、体力がつくと、身体にかかるストレスを受けにくくなります
例えば、スタミナがある人は少しきつさを感じる位の運動をしても、体に対して大きな負担にはなりません。その一方で、普段体を動かしておらず体力が低いような人は、散歩程度の運動であっても息が上がり、体に過剰な負荷となってしまいます。
そのため、有酸素運動を習慣化して体力が高まると、日常生活で身体的なストレスを受ける機会が少なくなります。
さらに、体力が高い人は、心理的なストレスに対しても強くなることが明らかになっています。心理的なストレスを受けやすい人は、わずかなストレスによって心拍数が上がりやすい(乱れやすい)傾向にあります。これは、身体的ストレスでも心理的なストレスでも同様です。
その一方で、心理的なストレスを受けにくい人は、心理的なストレスや身体的なストレスがかかっても脈拍が乱れません。つまり、心拍数が変動しにくくなれば、結果的に心理的ストレスに大きく影響されなくなります。
こうしたことから、有酸素運動によって体力が向上すると、副腎疲労症候群の原因となる身体的ストレスと心理的ストレスの両方の影響を受けにくくなるといえます。
また、ストレッチなどの柔軟体操は体をリラックスさせて心理的なストレスの緩和に役立ちます。そして既に述べたように、背骨のストレッチは副腎の回復を促すことにつながります。
このように運動も、副腎の回復をサポートする有効な手段の1つになります。
以上に挙げた治療法は、あなた自身が行える副腎疲労症候群に対する治療法の一例です。その他にも、実際には以下のような治療法があります。
・サプリメントの摂取(ビタミンC、マグネシウム)
・呼吸法
・リフレーミング
・ホルモン療法
今回述べたように、副腎疲労症候群(アドレナルファティーグ)の原因には、大きく分けると、身体的ストレスと心理的ストレスの2つがあります。そして、副腎の疲労を予防、解消するためには、これら2つの要因を取り除くことが大切です。
特に食事療法や整体、運動は、あなた自身が行える予防・治療法です。そのため、副腎疲労症候群を予防・解消したいと考えている人は、ぜひ実践するようにしましょう。