予防医学

むくみの原因と予防・解消するストレッチ・運動法

むくみは、多くの人が抱えている体の不調の1つです。特に、高齢者や女性、デスクワークの人などは、足のむくみに悩まされている人が少なくありません。そして、足のむくみに悩む人は、むくみに対して弾性ストッキングを利用したり、夜に自分自身でマッサージを行ったりして対処しています。
ただそうした対処法は、むくみの根本的な原因を解消するための方法ではなく、表面に現れている問題を取り除いているに過ぎません。そのため、結果的に毎日夕方には同じようにむくむことになります。
むくみを予防・解消するためには、むくみの根本的な原因を考えた上で適切な対処を行う必要があります。
そこで今回は、「むくみの原因と予防・解消するストレッチ・運動法」について解説します。
 むくみの原因
むくみを根本的に予防・解消するためには、まずは足がむくむ原因について考える必要があります。
基本的にむくみは、体の水分コントロールが障害されているために起こります。体は飲み物などによって必要な水分を補給します。そして、体に入った水分は、体内で使用された後は、尿や汗、呼気(吐く息)として排泄されます。
このように、健康な体であれば水分は常に循環しています。そして、こうした水分の循環が障害されると、むくみが生じます。
体内の水分は、大きく分けて「血液」「リンパ液」「組織液」「体腔液」の4つに分類されます。血液は、血管内を循環しているものであり、リンパ液は、細胞から出た老廃物をリンパ管内に吸収し、排泄するためのものです。
それに対して組織液とは、血管外にあり細胞と細胞の間を満たすものです。むくみは、この組織液が蓄積することで生じます。
体の細胞は、呼吸で取り入れた酸素や、食べ物から吸収した栄養素を動脈を流れる血液にのせて全身の細胞に送ります。そして、全身の細胞で利用された栄養素などの残りカスや水分は、静脈とリンパ液を介して排泄されたり、再利用されたりします。
つまり、体内の水分は「動脈 → 組織間液 → 細胞 → 組織間液 → 静脈、リンパ → 心臓」という流れで循環しています。
また、他にも尿や汗などからの排出もありますが、むくみで悩んでいる人には、こうした循環の障害が原因となっていることがほとんどです。
そして、循環が障害されて足がむくむ原因には、大きく分けて「内科的な病気」と「リンパの問題」の2つに分類されます。以下にそれぞれについて解説します。
 ・内科的な病気
むくみは、血液の循環が障害されることで起こります。そして、こうした全身の循環に関係している臓器に問題が生じると、むくみが生じることになります。
全身の循環は、心臓や血管、腎臓、肝臓、リンパ管といった臓器がお互いに働くことで調整されています。
例えば、心臓の機能が低下してしまうと、全身から心臓へ戻ってくる静脈からの血液が、心臓に上手く流れることができなくなります。その結果、組織間液に心臓に送り込めなかった分の水分が貯留してむくみが生じます。
また、腎臓の働きが悪くなってしまうと、水分を尿として排泄する量が少なくなるため、その分体内に蓄積される水分量が多くなりむくむ原因となります。
このように、内科的疾患が原因になってむくみが起こることもあります。
そして、こうした内科的疾患によるむくみには、それぞれに特徴があります。例えば、心臓に問題があると、顔にむくみが出たり、夕方に下半身のむくみが強くなったりします。また、腎臓病では、まぶたや手などにもむくみが生じ、肝臓病であれば「腹水」といってお腹に水がたまります。
特に、片側だけでなく両足にむくみがある場合には、何らかの内科的な疾患が関係していることが多いです。
そのため、こうした特徴がある場合には、内科的な疾患が原因のむくみを疑い、病院を受診した上で、医師に診てもらうようにすることが大切です。
 ・リンパ、自律神経の問題
むくみには、内科的な疾患が原因で起こる以外にも、リンパの流れが障害されることで生じるむくみがあります。
既に述べたように、組織液が貯留すると、体にはむくみが生じます。健康であれば、組織液はリンパによって排泄されます。このように、リンパには体に不要となった水分を排泄する働きがあります。
こうしたリンパの働きが悪くなると、組織液は循環されなくなってしまうため、貯留してむくむ原因になります
また基本的には、体内の水分量が多くなると、体は尿や汗などを使って体内の水分を排泄しようとします。そのため、健康な体であれば、こうした自動的な水分調節が行われるため、体に水分がたまることはありません。
そして、こうした体内の水分量を主に監視・調整しているのは「自律神経」になります。
自律神経とは、無意識下で血管や心臓、腎臓といった内臓の活動をコントロールしている神経です。このような自律神経の働きによって、体内の水分量は調整されています。
そのため、自律神経の働きが障害されると、体内の水分調節が上手くいかず、むくむことになります。
 むくみを予防・解消するストレッチ・運動と注意点
むくみの原因には、主に内科的疾患とリンパ、自律神経の問題が挙げられます。この中でも、内科的な疾患がある場合には、病院で治療を受けなければいけません。一方で、リンパや自律神経の働きが悪くなってむくんでいるケースでは、あなた自身で対処することができます。
例えば、リンパには、リンパ自身でリンパ液を循環させる力がありません。そのため、リンパ液の流れは周りの筋肉が収縮することで円滑に行われるようになります。そして、特に下半身のリンパ液は、重力の影響を受けて貯留しやすくなっています。
つまり、下半身の筋肉が衰えていたり、座りっぱなしで筋肉を働かせないでいたりすると、リンパの流れが滞るため、下肢がむくむことになります。
また、足先から心臓などにリンパ液が排泄される際には、途中で股関節部などを通過します。そのため、股関節の筋肉が緊張していると、筋肉によってリンパが圧迫されてしまい、循環が悪くなってしまうことがあります
そのため、下半身のリンパ液の流れを良くするためには、下半身の筋肉、特にふくらはぎの筋を収縮させることが大切です。また同時に、股関節の柔軟性を出しておくことも重要になります。
そこで、以下に股関節の柔軟性を促すストレッチ法と、ふくらはぎの筋肉を収縮させる運動法を記します。
 ・股関節のストレッチ
1、両足を伸ばした状態で仰向けに寝ます
2、片膝を両手で抱えて、同側の胸に引き付けます
3、反対の足はしっかりとひざを伸ばすようにして、足全体を床に押し付けます
4、この状態を30秒程度保持して、反対も行います
 ・ふくらはぎの運動法
1、壁を正面にして両足で立ちます
2、両手を壁につけて、背中を真っ直ぐ伸ばします
3、背すじを伸ばしたままつま先立ちをします
4、3の運動を20回繰り返します。
デスクワークや外出機会が少ない人は、こうした運動をできるだけ頻繁に行うようにしてください。また、立って行うことが難しい場合には、椅子に座った状態で行っても問題ありません。
このように、股関節のストレッチとふくらはぎの運動を行うことで、リンパの循環を促すことができ、下半身のむくみを解消することができます。また、可能であれば、股関節のストレッチを先に行い、リンパ液が流れやすい状態にした上で、ふくらはぎの運動を行うと、より効果的といえます。
さらに、日常生活において以下のようなことに注意すると、自律神経が整い、むくみを予防・解消することにつながります。
・ストレスコントロールを行う(呼吸法、有酸素運動など)
・規則正しい生活を行う(睡眠、食事など)
・エアコンの効きすぎた部屋に長時間いない
・定期的な運動を行う
今回述べたように、体のむくみは、水分の循環が悪くなることで起こります。そして、循環が障害される原因としては、主に内科的疾患と、それ以外のリンパ液・自律神経の問題が挙げられます。
内科的疾患が原因で起こるむくみの場合は、病院を受診して適切な治療を受ける必要があります。一方で、病気ではなく、リンパや自律神経が問題である場合には、あなた自身がストレッチや運動を行った上で、いくつかの点に注意して生活することで、むくみは予防・解消することができます。
そのため、こうした知識をしっかりと頭に入れて生活することで、むくみの発生を予防することができるようになります。