ダイエットを成功させるためには、食事で摂取する飲食物が血糖値に与える影響を理解しておくことが大切です。それは、体重の増減をコントロールしているのは、カロリーの総和ではなく、血糖値の変動によって起こるホルモンバランスだからです。
具体的には、糖質(炭水化物)を摂取すると血糖値が上がり、肥満を促す「インスリン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。つまり、糖質の摂り過ぎは太るのです。
その一方で、タンパク質や脂質はインスリンの分泌を促しません。そのため、一般的に認識されているように「カロリーが高い脂肪分を多く含む食品を食べると太る」ということはありません。実際に、私は脂質とタンパク質を制限することなく、かなりの量を摂っていますが太りません。
ただ、各食品やメニューが「実際にどれほど血糖値を変動させるのか?」ということは、予測するしかありません。
そこで今回は、私がさまざまな食品を摂取して実際に血糖値を測定して得られた値、食品やメニュー別で報告します。
血糖値とダイエットの関係性
血糖値とダイエットには深い関係があります。簡単にいうと、血糖値の大きな変動が肥満を招く原因となります。
まずは、血糖値とダイエットの関係性について解説します。
血糖値の上昇はインスリンの分泌を促す
通常、炭水化物(糖質)を摂ると血糖値が高くなります。食品として食べた糖質が腸から血液中に吸収されて血糖に変わるためです。
例えば、ご飯やパン、麺類といった主食を食べると血糖値は大きく上がります。ただ、血糖値が高い状態(高血糖)が続くのは体にとって好ましくありません。高血糖は、動脈を傷つけて動脈硬化(動脈が硬くなる病気)を招く原因となるためです。
そのため、体内では食べ物によって血糖値が上がったときは、血糖値を下げる「インスリン」と呼ばれるホルモンがすい臓から分泌されます。
インスリンが分泌されることで、血糖値が落ち着くのです。
インスリンは肥満ホルモン
ただ、インスリンには血糖値を下げるだけでなく、体に脂肪を蓄積させる作用もあります。
例えば、主食を食べた後に急激に血糖値が高くなったとします。そうすると、当然ながら血糖値の変動を抑えようとインスリンが大量に分泌されます。その結果、血糖値は落ち着くものの、体にはどんどん脂肪が蓄積されることになるのです。
インスリンは、こうした脂肪蓄積作用をもっていることから、「肥満ホルモン」とも呼ばれています。
ダイエットでは血糖値コントロールが必須
ここまで述べたように、糖質摂取は血糖値を上げて、肥満ホルモンであるインスリンの分泌を促します。つまり、「糖質摂取 → 血糖値の上昇 → インスリン分泌 → 肥満」となるのです。
ダイエットというと、血糖値ではなくカロリー量を意識する人がほとんどだと思います。
しかし実際には、こうした血糖値の変動によるホルモンバランスの変化が体重の変動をコントロールしているのです。
こうしたことから、ダイエットで成功するためには血糖コントロールが必須になります。
正常な血糖値の変動
糖尿病を患っていない人であれば、空腹時血糖値(何も食べていない状態)や食後に起こる血糖値の変化は、ある一定の値や変動経過をたどります。そのため、まずは非糖尿病者における食事摂取が、血糖値へ与える影響を理解しておくことが大切です。
空腹時血糖値の正常値
非糖尿病者における空腹時血糖値は、80~100mg/dLが正常とされています(日本では110mg/dL未満)。そして、糖質を摂取した後は、約1時間かけて血糖値が最大値まで上昇して、2~3時間かけて空腹時の値に落ち着いていきます。
糖質摂取後における血糖値の変動イメージは、以下のようになります。
(江部康二:糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド引用)
また、日本糖尿病学会の「75gブドウ糖負荷試験」による定義では、食後血糖値と糖尿病に関して、以下のように示されています。
食事摂取2時間後の血糖値が
・200mg/dLを越えている場合は糖尿病型
・140mg/dL未満であれば正常型
・140~200mg/dLであれば境界型
ただ、以上の定義に当てはまらなくても、食事1時間後の血糖値が180mg/dLを越えている人は、将来糖尿病を発症する可能性が高いことが明らかとなっています。さらに、食事1時間後の血糖値が140mg/dL未満であれば、糖尿病となる確立はもっと低くなります。
こうしたことから、現在非糖尿病者かつ将来糖尿病発症の可能性がない人の血糖値は、以下のような特徴があるあります。
・空腹時血糖値が80~100mg/dL
・食事摂取1時間後までに血糖値が上昇する
・食事摂取1時間後の値は180mg/dL未満(140mg/dL未満であれば、なお糖尿病発症の危険性は低い)
・食事摂取後2~3時間で空腹時血糖に戻る
ちなみに、栄養素で血糖値を変動させるのは糖質のみです。後から実測値でも記しますが、タンパク質や脂質は血糖値を上昇させません。
そして、大体ではありますが、体重64キログラムの人が糖質1gを摂取したとき、2型糖尿病を患っている場合は約3mg/dL、1型糖尿病であればは約5mg/dLの血糖値上昇が起こるとされています。
グルコーススパイク(血糖値スパイク)
健康な人における血糖値変動には、以上のような特徴があります。
以上に記したグラフを見てわかるように、健康な人でも食事で糖質を摂取すると、血糖値が一気に上昇するのです。そして、こうした血糖値の急激な変動は「グルコース(血糖値)スパイク」と呼ばれます。
タンパク質や脂質を中心とした食事であれば、こうしたグルコーススパイクは起こりません。後から実際の数値で記しますが、糖質を含まない食事であれば、グルコーススパイクは全く生じないのです。
そして、こうしたグルコースパイクは、肥満はもちろんのこと、体に対してさまざまな悪影響を与えることが明らかになっています。
血糖値の変動が身体に及ぼす影響
糖質が含まれている食事を摂取すると、ジェットコースターのように血糖値が急上昇・急下降します。
一般的には、「持続的な高血糖状態の方が良くない」という認識を持っている人がほとんどです。例えば、「持続的に180mg/dLの血糖値が維持される」と「通常は100mg/dLであるけれども、2時間ごとに血糖値が180mg/dLに上がる」という状態では、後者の方が体への負担は小さいように感じる人が多いはずです。
しかし実際には、体にとって負担が大きいのは「持続的な高血糖(血糖値が高い)状態より、血糖変動が繰り返されることである」ということが明らかになっています。
具体的には、持続的な高血糖状態よりも血糖値の変動を繰り返した方が、体内で生じる「酸化ストレス」が強くなるのです。酸化ストレスとは、細胞を老化させるような刺激であり、血糖値によって酸化ストレスが高まると血管が損傷されて、「動脈硬化(血管が硬くなる状態)」を招くことになります。
動脈硬化が起こると、細胞へ血液が届きにくくなるため、細胞が活動するために必要な栄養が不足します。その結果、エネルギー不足や冷えなどが生じる可能性があります。
また動脈硬化が進行すると、心臓病(心筋梗塞)や脳梗塞など、命に関わるような病気を発症することにつながることになるのです。
その他にも、動脈硬化によって起こる不調には、以下のような症状が挙げられます。
・神経障害(痺れ、神経痛など)
・網膜症(目が見えなくなる)
・腎臓病(人工透析の原因となる)
さらに、血糖値の変動は動脈硬化だけでなく、体重の増減をコントロールしているホルモンや自律神経のバランスも崩すことになります。つまり、ダイエットにも悪影響を与えることになるのです。
このように、血糖値の変動は、体にとってさまざまな悪影響を及ぼします。
ちなみに、血糖値が180mg/dLを超えると、酸化ストレスによって血管が損傷するとされています。また、食後2時間血糖値が140mg/dL以上で血管損傷のリスクが高まり、動脈硬化を発症する可能性があると考えられています。
食品が血糖コントロールへ与える影響
今まで述べたように、血糖値の変動は、ダイエット実践者にとっても避けたい現象です。そこで、実際に私自身が摂取した食事と、その食事摂取1時間後における血糖値の変化について以下に記します。
当然ながら、血糖値の変動要因は食事だけではありません。ただ、「どのような飲食物がどれほど血糖値に影響するのか?」ということの参考になるはずです。
管理者の血糖値の変動、食生活
私の空腹時血糖値は、以下に記すように82g/dLです。空腹時血糖値は、80~100(110)mgであれば正常ですので、私の空腹時血糖値は正常範囲だといえます。
ちなみに、私は基本的には糖質を制限した食事を意識しています。完全に糖質を抜いているわけではありませんが、ご飯やパン、麺類といった主食は摂っていませんし、小麦粉や砂糖、米類などを使用したお菓子も食べません。
ただ、味噌汁に含まれているような根菜類や、料理に使われるような小麦粉、砂糖、みりんなどはあまり気にせずに摂取しているような状況です。もちろん、いくら料理に小麦粉や砂糖、みりんが必要といっても、極力は使わないようにしています。
例えば、私のある1日の朝食以下のようなメニューです。
朝食 | ゆで卵2つ、味噌汁 |
---|---|
昼食 | 目玉焼き2つ、味噌汁、サラダ |
夕食 | 鳥モモ肉のから揚げ、味噌汁、切り干し大根、豆腐サラダ |
以上に述べたように、厳密には糖質制限をしていませんが、糖質の摂取量は非常に少ない生活をしています。こうした私の体を使って、食品や飲み物が血糖値に与える影響を調べていきます。
*空腹時血糖は数回測ってもほとんど変動がなかったため、数値に変化がない場合には同じ写真を用いています。
卵が血糖値コントロールへ及ぼす影響
私の朝食や昼食は、卵を中心にタンパク質や脂質を摂取しています。卵には、糖質がほとんど含まれていないため血糖値は上がらないと予測されますが、実際に測定してみないとわかりません。
そこで以下に、ゆで卵2つ摂取1時間後における血糖値を記します。
・空腹時血糖 |
・ゆで卵2つ摂取1時間後 |
*この日は、やや空腹時血糖が高めでした。
このように、卵は血糖値にほとんど影響しないことが明らかになりました。
アーモンドが血糖値コントロールへ及ぼす影響
私は、アーモンドが好きで、少しお腹が空いたときなどにアーモンドを食べています。アーモンドには、栄養成分表示を見る限りでは、100g辺りに炭水化物が18.1g、一糖類が4.4g含まれています。
そこで以下に、アーモンド15粒2つ摂取1時間後における血糖値を記します。
*このときは、昼食後で少し血糖値が上昇した状態でアーモンドを摂取しました。
・アーモンド摂取前血糖値 |
・素焼きアーモンド15粒 |
昼食後に時間が経っていたとはいえ、少し空腹時より血糖値が高い状態であったため、正確な数値とはいえません。しかし、この結果からは、アーモンドはほとんど血糖値に影響しないと考えられます。
チーズが血糖値コントロールへ及ぼす影響
チーズも、私が料理や間食として利用している食品の一つです。卵と同じように、チーズも糖質が少ない食品であるため血糖値は上げないことが予測されます。
そこで以下に、チーズ摂取1時間後における血糖値について記します。
・空腹時血糖 |
・ナチュラルチーズ(約30g)摂取1時間後 |
|
味噌汁が血糖値コントロールへ及ぼす影響
私は、だいたい毎食といっていいほど味噌汁を飲みます。そこで、味噌汁が血糖値に与える影響について調べました。
・空腹時血糖 |
・味噌汁(+目玉焼き2つ)摂取1時間後 |
・空腹時血糖 |
・味噌汁(+キュウリの酢の物、切り干し大根)摂取1時間後 |
このときに摂取した味噌汁には、サツマイモとダイコンといった糖質量が高い野菜が含まれています。また、2つ目の「キュウリの酢の物」と「切り干し大根」にも、わずかですが砂糖が含まれています。
ただ、これらの食品を摂取した場合でも、私の血糖値は食後1時間で110を超えることはありません。
サツマイモが血糖値コントロールへ及ぼす影響
サツマイモが入った味噌汁を飲むと、大きくはありませんが血糖値が上昇します。それでは、サツマイモを単独で摂取した場合にはどうでしょうか。
以下に、サツマイモ摂取による血糖値の変動を記します。
*このときは、昼食後で少し血糖値が上昇した状態でサツマイモを摂取しました。
・サツマイモ摂取前血糖値 |
・サツマイモ2つ摂取1時間後 |
このように、やはりサツマイモは血糖値を上げる作用があることが明らかになりました。
パンが血糖値コントロールへ及ぼす影響
私は基本的にパンを食べません。ただ、パンが血糖値に与える影響は非常に大きいことがわかっているため、実験しました。ちなみに、食べたパンは、ガーリックトースト、カマンベールチーズパン、レーズンパンの3つです。
3つのパンを摂取した1時間後の血糖値は以下のような値になります。
・空腹時血糖 |
・パン3つ(ガーリックトースト、カマンベールチーズパン、レーズンパン)摂取1時間後 |
写真を見てわかるように、パン摂取1時間後には、血糖値が150mg/dLを超えるまで上昇しました。その後、摂取2時間後には100mg/dL前後まで落ち着いたのですが、明らかにグルコーススパイクが起こっています。
このように、実際にパンは血糖値を急上昇させることが明らかだといえます。
低糖質ケーキが血糖値コントロールへ及ぼす影響
私の家庭では、妻が子どものために低糖質のお菓子を作っています。ここでは、普段より少し糖質を多めに使用しているケーキが血糖値に与える影響を調べました。
ちなみに、ケーキの生地はおからと卵を使用しており、小麦粉は一切使っていません。そして、生地とクリームに混ぜた糖質の合計は、ケーキ1切れ当たり約10gです。こうした低糖質ケーキを摂取した1時間後の血糖値は以下のようになります。
・空腹時血糖 |
・低糖質ケーキ(1切れの糖質約10g)摂取1時間後 |
低糖質なだけあって、パンなどと比較すると血糖値の変動は小さいです。ただ、さすがに砂糖は使用しているため、血糖値が120mg/dLは超えています。
鳥皮のから揚げが血糖値コントロールへ及ぼす影響
お酒が好きな私は、鳥皮のから揚げをよく食べます。具体的な作り方は、鳥皮とニンニク、塩、大豆粉を混ぜてノンフライで揚げるだけです。ちなみにノンフライで揚げるのは、「手間をかけたくない」という理由だけです。
それでは、以下に鳥皮のから揚げが血糖値に与える影響について記します。
・空腹時血糖 |
・鳥皮のから揚げ(満腹まで)摂取1時間後 |
このように、鳥皮のから揚げはほとんど血糖値に影響を及ぼさないことがわかります。
飲み物が血糖値のコントロールへ与える影響
当然ながら、食べ物だけでなく飲み物も血糖値に影響を与えます。そして、一言で飲み物といっても、清涼飲料水やコーヒー、アルコールなどさまざまです。また、コーヒーなどは、ブラックで糖質を含まないものであっても、自律神経に影響を与えて血糖値を変動させるといわれています。
そこで以下に、飲み物が血糖値へ与える影響を調べた結果を記します。
*普段の食事などによって調べたため、()ないに記すように、食品を一緒に摂取しています。ただ、基本的には糖質が含まれておらず、血糖値の変動を起こさないとわかっている食品のみを摂取しているため、血糖値への影響はほとんどないと考えます。
コーヒーが血糖値コントロールへ及ぼす影響
コーヒーは、自律神経に影響を与えることがわかっています。具体的には、コーヒーに含まれているカフェインが、自律神経の中でも「交感神経」を刺激することで、血糖値を上昇させるのです。
そこで以下に、ブラックコーヒー摂取1時間後における血糖値を記します。
・空腹時血糖 |
・ブラックコーヒー摂取1時間後 |
このように、カフェインには交感神経を刺激して血糖値を上昇させる可能性があるといわれていますが、ブラックコーヒー1杯程度では血糖値に影響しないことが明らかになりました。
赤ワイン(+アヒージョ、チーズ)が血糖値コントロールへ及ぼす影響
私は、アルコールを好んで飲みます。ただ、日本酒やビールなど、明らかに糖質を多く含むアルコールはほとんど飲まず、基本的には焼酎やワインだけを飲んでいます。
アルコールが血糖値に与える影響の中でも、ワインは意見が分かれています。確かに、ワインは醸造酒であるため、焼酎などの蒸留酒と比較すると糖質が含まれています。また、ワインに含まれている「果糖」の影響も忘れてはいけません。
そうはいっても、ワインはビールほど明らかに血糖値を変動させることはありませんし、「糖質制限中でも飲んで良いアルコール」と提唱している人も多いです。
そこで以下に、赤ワイン摂取1時間後の血糖値を記します。
・空腹時血糖 |
・赤ワイン(+アヒージョ、ナチュラルチーズ)摂取1時間後 |
写真のように、赤ワインは血糖値をほとんど上昇させませんでした。このときは、ワインをボトル1本(約720ml)と、糖質をほとんど含まないアヒージョとナチュラルチーズをつまみとして食べました。
このように、赤ワインは血糖値に影響を与えないことがわかります。
今回述べたように、ダイエット目的に限らず、体の健康を維持するためには、食べ物や飲み物が血糖値に与える影響を知っておくことは大切です。もちろん、血糖値の変動は、体の状態や状況などによって異なります。
ただ、一般的な非糖尿病者(管理者)の体において、食品や飲食物別が引き起こす血糖値の変動の様子は、何かしらの参考になるはずです。