背骨の重要性

骨盤を柔らかくする運動で痛みを解消する:骨盤のストレッチ

背骨は、自律神経と深い関係があります。さらに、背骨は体の中心に存在するため、背骨はさまざまな体の症状に関係しています。特に、四肢に現れる関節痛のほとんどは、背骨の硬さが原因です。それくらい背骨の柔軟性は大切です。
また、背骨は骨盤の上に乗っています。そして骨盤には、背骨を支える役目だけでなく、背骨の柔らかさや動きを監視するという役割もあります。
このような関係性から、背骨が硬くなると骨盤の動きも制限されます。逆に、骨盤の可動性が悪くなると、背骨にも悪影響を与えます。そのため、背骨を柔らかくするときは、一緒に骨盤の運動も行うと効果的です。
そこで今回は、骨盤の基本的な解剖と骨盤を柔軟にする運動を解説します。
 骨盤の解剖
骨盤は、背骨の一番下に位置する「仙骨(せんこつ)」と、いわゆる骨盤と呼ばれる左右の「腸骨(ちょうこつ)」の3つの骨から形成されます。骨盤は、左右両側の腸骨に仙骨が挟まれるような形をしています。この腸骨と仙骨の間で作られる関節を、「仙腸(せんちょう)関節」といいます。
仙腸関節は、一般的に可動性がない関節といわれています。しかし実際には、仙腸関節にはわずかな動きがあり、とても大切な役割をしています。
例えば、股関節を曲げるとき(ひざを胸に引き付ける運動)、股関節単独の動きでは、90°程度しか動かないことがわかっています。ただ実際には、股関節は膝(ひざ)が胸につくほど動きます。このときは、約120°程度の可動範囲があります。
こうした90°以上の動きは、股関節以外の関節で作っています。そして、その運動に関わるのが、仙腸関節と腰の骨(腰椎)になります。
そのため、仙腸関節や腰椎の可動性が低下していると、股関節の動作は制限されます。実際の臨床においても、股関節痛や股関節の可動域制限の多くに、仙腸関節や腰椎の問題が関与しています。
股関節は、腸骨の外側で、腸骨と大腿骨によって形成される関節です。専門用語で「球関節」と呼ばれ、人体の中でも動きの大きな関節です。
このように骨盤には、左右の仙腸関節、股関節の計4つの関節が存在します。そして、骨盤の上には腰椎(腰の骨)があります。そのため、この股関節、仙腸関節、腰椎は、お互いに協調し合って動きます。
 骨盤の柔軟性を向上させる運動
既に述べたように、骨盤は、股関節と腰の関節と協調して動きます。そのため、骨盤の柔軟性を向上させる運動は、股関節や腰の動きを伴って行います。
以下に、日常的に行える骨盤の運動について記します。
 ・骨盤の運動1

 ① 仰向けで両足を伸ばした状態になります。
 ② 両手で片ひざを抱え、同側の胸に引き付けます。
 ③ 息を吐きながら引き付け、吸いながら少し足を戻します。
 ④ ①~③を片方10回ずつ、左右両方行います。
 ・骨盤の運動2
 ① 壁に向かって、足を肩幅に広げて立ちます。
 ② ひじを伸ばした状態で、両手を壁につけます。
 ③ 片足を浮かし、少し後ろに引きます。
 ④ 浮かした方の足を左右に大きく振ります。
 *このとき、上半身と骨盤は、極力動かないようにして下さい。
 ⑤ ①~④を片方10回ずつ、左右両方行います。
 ・骨盤の運動3

 ① 椅子に座って、約90°足を広げます。
 ② 骨盤と腰を伸ばし姿勢を良くします。
 ③ 息を吐きながら、股関節から曲げるように体を前に倒し、体を両足の間に入れます。
 ④ ゆっくり息を吸いながら、少し体を起こします。
 ⑤ ゆっくり息を吐きながら、体を前に倒します。
 ⑥ ④、⑤を3~5回繰り返します。
今回述べたように、骨盤は、股関節と腰の関節と協調して動きます。また、骨盤は背骨の土台になります。そのため、背骨の運動を行う前に、骨盤の柔軟性を高めておくと、より背骨に対する運動効果が増します。
このことからも、ストレッチなどの体の柔軟性を促す運動は、「骨盤 → 背骨 → 四肢」という順番で行うことが大切になります。
怪我の予防や、痛みの改善のためにストレッチなどを行う場合には、まずは、骨盤や背骨といった「体の中心」を柔らかくすることを優先して行うことが重要です。そうすることで、効率的に体の柔軟性を高めることができます。