食事・食生活の不摂生と体の痛み・疼痛の関係:生活習慣と痛み
食事の内容が、体の健康に影響することはあなたが知っている通りです。肥満や糖尿病、コレステロール値の異常などは、その代表と言える病気です。食べ過ぎや糖質の摂りすぎは、肥満と糖尿病につながることは容易にイメージできると思います。
また、朝ごはんを食べなかったり、夜遅くに食事をしたりすることも、体に良くないことはよく知られています。これは、体のリズムを崩すという理由で、健康に良くありません。
このように、健康に深く関係する食事ですが、実は、体の痛みにも関係しています。食べ過ぎや飲み過ぎ、食事のリズムの崩れは、背骨の不調として現れます。そして、背骨の問題は、四肢の痛みにつながります。
そこで今回は、食事が体の痛みに及ぼす影響について述べます。
食事と痛みの関係性
食事と肩やひざなど手足の関節痛には、深い関係性があります。そのことを理解していると、効率的に関節痛を予防・解消することができるようになります。
以下に、食事と手足の痛みの関係性について記します。
内臓の状態は背骨に現れる
食べ物は、口から入った後、胃や腸で消化吸収されます。そして、体のエネルギー源となったり、便や尿として排泄されたりします。そのため、食生活の不摂生は、内臓の不調として現れます。
具体的には、消化不良によってお腹の張りや、げっぷなどの症状は、内臓の不調によるものです。他にも、便秘や下痢といったものも、内臓が上手く働いていないサインです。
このような、サインは、内臓がこれ以上壊れないようにするための警告信号です。症状を無視して、同じような生活を続けると、結果的に「胃潰瘍」や「大腸癌」などの病気が発症します。そのため、そのような兆候を見逃さないようにすることは大切です。
また、このような症状は、背骨にも現れます。体を動かすためには、筋肉が神経によってコントロールされている必要があります。これは内臓でも同じです。
そして、その神経は、全て背骨の中にある「脊髄」から出ています。脊髄から出た神経が、各部位の筋肉に指令を出すことで、体が動かしたり、内臓が働いたりします。そのため、神経が損傷されると、力が入りにくいなどの症状が現れます。
これは、逆も同じであり、皮膚などからの感覚も神経を通して、脊髄に伝えられます。内臓も同様で、内臓の情報も、神経によって背骨の中に送られます。
そのため、内臓の不調は、背骨に影響を及ぼします。
例えば、胃で消化不良などが起こると、胃を支配している神経が存在する背骨の場所に、何かしらの反応を起こさせます。具体的には、背骨の周りの筋肉を固くしたり、背骨の感覚を過敏にしたりします。
背骨の周りにある筋肉は、収縮すると、背骨を真っ直ぐ立てるように働きます。つまり、内臓の不調は、背骨を垂直に立てるような反応を起こすということです。
背骨は弯曲している
背骨が真っ直ぐになるというと、背筋が伸びて姿勢が良くなるような印象を受けるかと思います。しかし、背骨は、適度に弯曲していることで、背骨の機能を最大限に発揮することができるのです。
背骨は横から見ると、S字状に弯曲しています。具体的には、首と腰の部分が前方に凸、胸の部分が後ろに凸の形をしています。前者を「前弯(ぜんわん)」、後者を「後弯(こうわん)」といいます。
このように、背骨はS字状に弯曲することで、さまざまな機能を果たしています。
その代表的な機能が、衝撃吸収です。背骨はS字状に弯曲し、バネのように働くことで、体にかかる力を吸収します。
そのため、もし背骨のS字状弯曲がなくなり、その働きが悪くなると、体にかかる衝撃は肩や股関節、ひざなどの四肢の関節に強くかかります。その結果として、関節痛が出現します。
つまり、食生活が乱れ、内臓に問題が生じると、四肢の痛みにつながる可能性があるということです。内臓を不調と四肢の痛みは以下のように、背骨によって関係しているということです。
「内臓の不調 → 背骨のS字状弯曲の消失 → 四肢の関節痛」
揚げ物(油)の食べ過ぎが慢性痛を引き起こす理由
慢性痛とは、簡単に言うと、痛みが長く続いている状態のことを指します。通常、体が傷ついた場合、一定期間が経過することで、損傷した組織は自然と治癒します。これは「自然治癒力」と呼ばれるものです。
傷ついた組織は、「炎症」と呼ばれる過程を経て治ります。炎症という言葉は、悪いイメージがありますが、体が治癒するためには必要なものです。
しかし、炎症が正常以上に長引くのは問題です。また、慢性痛の1つの原因として、炎症が過剰に起こり続けることが挙げられます。そのような状態は「慢性炎症」と呼ばれ、われわれ理学療法士も対応に難渋するような状態です。
実は、その慢性炎症に、食事に含まれる油が関係しているのです。あなたの慢性的な痛みに、普段摂取している油が関わっている可能性があります。
そこで以下に、慢性炎症と油の関係について解説します。
油の種類
油にはさまざまな分類があり、その種類によって役割が異なります。油は、まず「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに大きく分けられます。
飽和脂肪酸とは、動物の油に多く含まれるもので、常温で固体であるという特徴があります。飽和脂肪酸は、細胞を包んでいる膜やホルモンの材料となったり、体を動かすためのエネルギー源となったりします。
一方、不飽和脂肪酸とは、植物の油に豊富に含まれており、常温で液体という性質があります。不飽和脂肪酸は、さらに、「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられます。
また、多価不飽和脂肪酸は、構造の違いによって「オメガ3脂肪酸」と「オメガ6脂肪酸」に分類されます。
この多価不飽和脂肪酸が、体の炎症と深く関係しています。
具体的には、オメガ3脂肪酸には炎症を抑える役割があります。一方、オメガ6脂肪酸には炎症を促進する働きがあります。
先ほど述べたように、炎症は必要なものですが、無駄に長引くことは問題です。そのため、オメガ6脂肪酸による炎症促進も大切ですし、オメガ3脂肪酸による炎症の鎮静化も体にとっては大事なものです。
つまり、この2つのバランスが大切なのであり、オメガ6脂肪酸が過剰になると、炎症が長引き、「慢性炎症」の状態になってしまうということです。
揚げ物は炎症を慢性化させる
オメガ6脂肪酸は、日本人の多くが日常的に摂取しています。例えば、サラダ油として知られている油のほとんどに、オメガ6脂肪酸が豊富に含まれています。そのため、現代人でオメガ6脂肪酸が不足している人は、ほとんどいません。
また、脂肪酸は高温にさらされると「酸化」します。酸化とは、成分に酸素が付着する反応であり、酸化した食べ物は、体にさまざまな悪影響を与えます。
例えば、老化は、酸化によって起こる代表的な現象です。また、動脈硬化も、酸化によって生じます。酸化したものは、正常な細胞を傷つける性質をもっています。細胞は傷がつくと、炎症反応を起こして、自身を治癒しようとします。
つまり、酸化は体の炎症を誘発するということです。
サラダ油には、もともと炎症を促す働きを持つオメガ6脂肪酸が含まれています。そのサラダ油をたくさん使って作る揚げ物は、オメガ6脂肪酸の炎症促進効果に加えて、酸化によっても、炎症を過剰に起こします。
このような理由で、揚げ物の食べ過ぎは、慢性炎症につながります。
その他にも、油には、空気に触れると、時間が経過することでより酸化が強まるという性質があります。そのため、コンビニやスーパーに売っている惣菜や、前日に作っておいた揚げ物や炒め物などは、痛みを長引かせる原因になります。
また、細胞の炎症は、ほとんどの病気に関係しています。そのため、酸化した油は、痛みだけでなく、多くの体の不調に関係しています。
今回述べたように、食生活の不摂生は、四肢の関節の痛みにつながります。特に、揚げ物に含まれている身体にとって悪い油は、痛みを慢性化させる原因になるのです。
一般的には、食事は疼痛と関係ないような認識があると思います。しかし、このように食生活と背骨、四肢は深く関係しています。
このように、あなたの長引く痛みの原因は、食生活にあるかもしれません。
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