障害予防法

生体リズムに沿った睡眠で障害を予防する:自律神経とホルモン

体の健康を維持するために、睡眠はとても大切です。そして、関節痛や下肢の痺れといったような障害にも、睡眠習慣は大きく関係しています。
睡眠は自律神経を整えるため、自律神経と深い関係を持つ内臓や背骨に大きな影響を与えます。そのため、睡眠習慣が崩れると、便秘や腰痛などのさまざまな体の不調が現れやすくなります。
つまり、体の健康状態を維持して障害を予防するためには、正しい睡眠習慣を身に付けることが大切だといえます。
そこで今回は、生体リズムから考える正しい睡眠習慣について述べます。
 生体リズムとは
人間の体には、生体リズムと呼ばれるものが備わっています。生体リズムとは、周囲の環境とは関係なく刻まれる体内でのリズムをいいます。
例えば、あなたは外が明るければ朝であり、暗ければ夜であると判断すると思います。そして、そのような外部の環境に合わせて食事や睡眠の時間を調整するようになります。これは、外部環境によって作られるリズムです。
一方で生体リズムとは、体内で作られるリズムです。このように、時計もない真っ暗な部屋で生活していても一定のリズムを刻む「体内時計」が人の体には存在します。
生体リズムは、睡眠にも大きく関係しています。人は、生体リズムによって外部の環境に関係なくある一定のリズムで就寝と起床を繰り返すことになります。このような生体リズムに沿った睡眠を行うことが、体の健康には最も適しているといえます。
そのため、生体リズムを知ることが、正しい睡眠習慣を理解することにつながります
 生体リズムに沿った睡眠
生体リズムは、内臓や心臓の活動など、体のさまざまな働きと関係しています。その中でも、睡眠が大きく影響するものは自律神経とホルモン分泌のリズムです。
ホルモンとは、内臓の活動や傷の修復、筋肉の発達など、体のさまざまな機能を調整しているものです。ホルモンが適切に働くことで、内臓による消化・吸収はスムーズに行われますし、損傷した組織の修復も起こります。
そして、ホルモンの分泌は自律神経によって調整されています。また逆に、ホルモンも自律神経の働きに影響を与えます。つまり、自律神経とホルモンは相互に関係しています。
睡眠は、自律神経とホルモンの両方における生体リズムに関わっています。そのような生体リズムを整えるような睡眠のポイントは、以下の3点になります。
 
 ・朝起きて夜寝る
自律神経には、体を活発にする交感神経と、逆にリラックスさせる副交感神経があります。この2つが相互に作用することで、自律神経のバランスは適切に働きます。
そして自律神経は、生体リズムとして1日の中で、交感神経と副交感神経の活動が一定のリズムを刻みます。具体的には、「朝から夕方にかけては交感神経が優位に働き、夜から朝にかけては副交感神経が活発に作用する」というものです。
例えば、自律神経は心臓の活動を調整しています。そのため、心臓は交感神経の働きによって日中は活発になりやすい状態となっており、夜間は副交感神経の作用によって緩やかに動くようになっています。
そのため、そのような自律神経の活動に合わせて、「朝起きて夜寝る」という睡眠活動を習慣化することは、自律神経のリズムを整えるためには欠かせないといえます。
 ・起床時間を一定にする
多くの人は、起床と就寝のリズムは就寝時間によって決まると考えています。しかし実際には、睡眠と覚醒のリズムは起床時間によって作られます。
一般的に、人の体は夜に眠くなるというリズムがあります。これは、「メラトニン」と呼ばれるホルモンの働きによるものです。メラトニンの分泌が多くなると、人は眠気が強くなります。
そしてメラトニンは、起床後14~16時間後に多く分泌されるという生体リズムを持っています。つまり、眠気が生じる時間は起床時間によって決まります。
そのため、就寝時間が遅くなっても、いつもと同じ時間に起床することで、夜にメラトニンが分泌されます。そうすることで、前日の夜に崩れた生体リズムを調整することができます。
 ・23時までに就寝する
睡眠中には、体にとって重要なホルモンがたくさん分泌されます。そして、そのようなホルモンは午後22~午前2時に盛んに分泌されるという生体リズムがあります
睡眠中に分泌される代表的なホルモンとして、「成長ホルモン」があります。成長ホルモンは、筋肉の形成や修復、疲労回復に関わる大事なホルモンです。成長ホルモンが不足すると、疲れやすくなったり、免疫が低下したりします。
またそれだけではなく、体の代謝も悪くなるため、太りやすくもなります。
そして、そのようなホルモンは深く眠っているときに多く作られます。一般的に、眠り始めて深い眠りに入るまでは約90~120分かかります。つまり、遅くても24時までには睡眠に入らないと、ホルモン分泌が盛んな2時までに深い眠りに到達することができません。
そのため、できるだけ23時までには就寝することで22~2時の間に深い眠りに入り、ホルモンの分泌を促すことが大切だといえます。
今回述べたように、睡眠は自律神経やホルモン分泌と深く関係しています。そのような自律神経やホルモンといった健康に欠かせない体の機能を最大限に発揮するためには、「朝起きて夜寝る」「起床時間を一定にする」「23時までには就寝する」の3点を意識することが大切です。