障害予防法

障害予防に自己管理が大切な理由:生活習慣・自律神経の影響

体が健康であることは、多くの人が望むことです。体の健康が損なわれていると、人生の中でさまざまな障害が出てくることがあります。
そして、健康が損なわれている状態は人によって異なります。私は整形外科に勤めていますので、関節痛や脚の痺れ、肩凝りなどの整形外科疾患に関する症状を聞くことが多いです。他にも不眠や体の怠さ、生理痛など、健康に関する体の不調には、さまざまなものがあります。
しかし、健康に関する症状の根本原因は自律神経に問題があることがほとんどです。そして、自律神経の不調の多くは生活習慣によって引き起こされます。
そのため、体の健康を維持するためには、自分自身で生活習慣を整えることが必須だといえます。
そこで今回は、「健康と自律神経、生活習慣の関係性」について述べます。
 自律神経の体への影響
自律神経とは、内臓や血管などの器官を、無意識下でコントロールする神経です。自律神経があることで、人間の体は生命を維持できています。
例えば、寝ているときも心臓や呼吸が止まることなく動いています。これは、自律神経の働きによるものです。運動時に、筋肉などに必要な酸素を送り出すために、心臓の活動を強くするのも自律神経の作用によるものです。
このように、自律神経は体のさまざまな器官に影響を与えます。そして、自律神経が影響する主な体の部位には、以下のようなものがあります。
 ・背骨
自律神経の司令塔は、背骨の両脇にある関節近くにあります。そのため、自律神経のバランスが崩れると、この関節の運動を制限するだけでなく、背骨の周囲にある筋肉を緊張させ、硬くします。その結果、背骨の動きは悪くなり、柔軟性が低くなります。
また、背骨は体の中心にあるため、背骨の運動が制限されると、腕や脚の動きに影響します。具体的には、背骨の可動範囲が小さい分、目的となる動作を達成するために手足といった四肢が大きく動く必要が出てきます。そのため、四肢の関節や筋肉にかかる負担が大きくなります。
その結果として、四肢の関節痛が起こります。
 ・心臓
心臓の働きも自律神経によって調整されています。運動時に心拍数を上げるのも、リラックス時に心拍数を下げるのも自律神経の働きによるものです。
そのため、自律神経の働きが障害されると、ちょっとした運動で過剰に心拍数が上昇したり、逆に運動時に心拍数が上がらなかったりします。また、安静時であっても心拍数が高くなってしまいます。
例えば、高血圧は典型的な自律神経の問題です。自律神経のバランスが崩れると、運動もしていないのに心臓の活動が強くなります。その結果、血圧が高くなります。
 ・血管
血管は、状況に応じて収縮したり拡張したりすることで、筋肉などの組織に必要な量の血液を届けるように働いています。こうした血管の収縮や拡張の運動は、自律神経によって調整されています。
そのため、自律神経のバランスが崩れると、血管が過剰に収縮してしまい、筋肉などの組織に必要な量の血液が送られなくなります。それにより、血流が不足した器官は働きが低下してしまいます。
これは、筋肉でも内臓でも体の全ての組織について同様のことがいえます。また、このような臓器などの不調だけでなく、血流不足は体の冷えを招きます。
 ・内臓
胃や腸といったような内臓の働きも、自律神経によって調整されます。自律神経のバランスが崩れると、胃腸による消化活動は悪くなります。また、消化機能の低下だけでなく、胃潰瘍などの問題も起こります。
さらに、便は大腸から排出されます。そのため、自律神経の不調によって大腸の運動が障害されると、便秘になります。
これらは一例ですが、このように自律神経は体の健康に関して主な役割を担っていると言えます。
 自律神経と生活習慣
自律神経は、体の中に備わっている「体内時計」と呼ばれるものによって支配されています。そのため、体内時計の障害は、自律神経の不調を招きます。
体内時計とは、脳内や筋肉、内臓といった各器官に存在するもので、外部環境とは関係なくリズムを刻む機能です。例えば、通常では、時計の時間や太陽の昇り加減で、現在の時間を認識し、行動します。明るいと目が覚め、暗くなると眠るといったようなリズムです。
しかし生物の体の中には、時計や太陽の光がなくても「約24時間」という時間を認識しているものがあります。それが体内時計です。
そのため、生物は真っ暗な時計がない部屋で生活しても、「朝の時間に起きて夜の時間に眠る」という行動を行います。これは、体内時計が約24時間のリズムを刻み、脳や筋肉、内臓といった組織の活動を調整しているために起こるものです。
この体内時計による、各組織の活動を調整している神経が自律神経になります。そのため、体内時計が乱れると、自律神経も不調になります。
そして、体内時計に障害が起こるのは、太陽などの地球環境のリズムとズレた生活を行ったときです。つまり、生活リズムが外部環境から大きく外れた生活をしていると、体内時計が乱れ、自律神経の不調が起こると言えます。
その中でも、特に睡眠と食事のリズムは体内時計に大きく影響を与えます。
このように、睡眠や食生活といった生活習慣の乱れは、自律神経に悪影響を及ぼし、最終的にさまざまな健康問題を引き起こす原因となります。
今回述べたように、自律神経は背骨や心臓、血管など、体の健康に関するさまざまな機能の調整を担っています。そして、自律神経の不調が生じるのは、生活習慣の問題によることがほとんどです。
このような理由から、体の健康を維持するためには、自己管理、特に睡眠と食事のリズムを整えることが欠かせないと言えます。